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自慢が成立しずらい時代

いまは自慢が成立しづらい時代です。世代を問わずに尊敬される権威がほとんど無くなってしまった気がします。みんな登ってる山が違うんですよね。だから見ている山頂が違うんです。

どの辺までが全国区で自慢できる権威なんでしょうね。

ノーベル賞はまだまだ権威がある気がします。私の中では、世の中の賞と呼ばれるものの最高峰という感覚があります。とてつもない業績をあげないと貰えないイメージがあります。人類の未来を変えてしまうほどの。

とは言え、ノーベル賞も昔ほどの権威は無くなってしまった気もします。ちょっと前だったら、日本人がノーベル賞を貰うと号外が出て、連日ニュースやワイドショーで大騒ぎしていた気がします。ニュースやワイドショーで繰り返しやるから、その人の業績にも詳しくなったりしたものです。

芥川賞もとてつもない賞というイメージがありました。芥川賞を貰ったら一生安泰なんじゃないかとすら思っていたこともありました。でも、実は1年に2回も発表されますし、最近では誰が受賞したかも知りません。

少し前は芥川賞を貰った人は、M1グランプリで優勝した人と同じ様にメディアに引っ張りだこだった気がします。知識人の仲間入りをして、その人が世の中に対してどういうコメントをするのかも注目されていた気がします。

いまは、誰のコメントを聞きたいのかハッキリしない時代ですかね。

私が高校生や大学生の頃は、筑紫哲也さん、坂本龍一さん、ビートたけしさん、大橋巨泉さん、日比野克彦さん、椎名誠さん辺りが何を言うのか興味がありましたね。あと、朝まで生テレビの大島渚監督とか。

いまは、世の中の現象に対していろいろな人がXやYouTubeで発信していて、それらを総合して聞いている感じがします。絶対にこの人のコメントを聞きたいという人がいなくなってしまったと言いますか。私が歳を取ったからという理由もあるかも知れませんが。

賞ではありませんが、紅白歌合戦に出るとかNHKの朝ドラに出るとか大河ドラマに出るとか、いまはそっちの方が自慢できそうですね。とは言え、その価値もデフレが起きていて絶大なチカラは無いんですよね。特に若者に対してはほとんどまったく自慢できません。

私たちの世代は有名になって自慢したいとか、有名な人と仕事をして自慢したいというモチベーションが割とあった気がします。特に私がいる広告などのクライアントワーク業界や映像のエンタメ業界にいる人はそれが強いと思います。そうやって頑張ってきたのに、そこで手に入れた「結果」が使えない時代になってしまいました。

例えば、「今度、◯◯さんていう超有名なカメラマンの人と仕事するんだよ。」と言ってもかなりの確率で話が通じません。特に年下の人に話しても絶対に通じません。仕方がないから「◯◯さんていう大御所のカメラマンのアシスタントやってた人でさ。」と言っても、その大御所の◯◯さんを知らないんです。じゃあ具体例を出そうと「あの資生堂のCM撮ってた人だよ。」と言っても、「テレビ見てなかったんで知りません。」と言われます。仕方がないから「ギャラ800万円なんだよ。」と言うと、やっと驚いてくれるんです。

ここまで来ると自慢でも何でもなく単なる報告です。◯◯さんという有名カメラマンと仕事ができるところまで上り詰めた事を「すごいですね!」と言って欲しいのに「すごいですね!」が引き出せないんです。悔しい時代ですね。

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