土地単で生じたややこしい継続効果
『月の大魔術師』と『ドライアドの歌』
問題:『月の大魔術師』に『ドライアドの歌』がエンチャントされた。基本でない土地は山になるか。
結論:基本でない土地は山にならない。
理由:
オブジェクトの特性の値は、そのオブジェクトそのものの値から始まって決定され、その後、種類別の順番で適用できる継続的効果をすべて適用する(総合ルール613.1(以下「総合ルール」略))。
効果が複数の種類別に分類できる場合、そのそれぞれの部分がそれぞれの種類別として処理される(613.6 )。各種類別、各種類細別の中では、効果の適用順は通常、タイムスタンプのルールを用いて決定される。より早いタイムスタンプを持つ効果が先に適用される(613.7)。
ただし、種類別、種類細別の中での効果の適用順は、依存関係によって変更される場合がある。依存関係がある場合、タイムスタンプ順のルールは依存のルールによって上書きされる(613.8)。
『ドライアドの歌』の効果(以下「効果A」)がエンチャントされたパーマネントはあらゆるカード・タイプ、サブタイプ、色を失い無色の森・土地になる。名前や伝説などの特殊タイプは失われないし、基本の特殊タイプは追加されない。それは基本土地タイプによって得られる「(T):(G)を加える。」という能力だけを持ち、全てのルール文章からなる能力を失う(305.7)。この能力は、種類別の第4種(タイプ変更効果)に分類される(613.1d)。
『月の大魔術師』の効果(以下「効果B」)も、種類別の第4種(タイプ変更効果)に分類される(613.1d)。
効果Bは、(a)効果Aと同じ種類別(種類細別は存在しない)であり、(b)効果Aを適用することにより、効果が発生するかどうかが変わり(∵効果Aの適用により「全てのルール文章からなる能力を失う」(305.7))、さらに、(c)どちらの効果も特性定義能力によるものでない。よって、効果Bは、効果Aに依存している(613.8a)。
この逆は成り立たないので、「依存性のループ」(613.8b )は生じない。
よって、効果Aに依存している効果Bは、その依存先の効果Aが適用されてから適用されることになる(613.8b )。したがって、効果Aの適用により、『月の大魔術師』は「全てのルール文章からなる能力を失」(305.7)い、効果Bは発生しない。
以上により、基本でない土地は山にならない。
類題
問題:『月の大魔術師』が戦場にあるとき、『激しい叱責』が戦場に出た。基本でない土地は山になるか。
結論:基本でない土地は山になる。
理由:
オブジェクトの特性の値は、そのオブジェクトそのものの値から始まって決定され、その後、種類別の順番で適用できる継続的効果をすべて適用する(613.1)。
『月の大魔術師』の効果(以下「効果B」)は、種類別の第4種(タイプ変更効果)に分類される(613.1d)。
激しい叱責の効果「すべてのクリーチャーはすべての能力を失う」(以下「効果C」)は、種類別の第6種(能力を持つことを禁止する効果)に分類される(613.1f)。
効果Bと効果Cは複数の種類別に分類できるため、そのそれぞれの部分がそれぞれの種類別として処理される(613.6 )。
よって、種類別の順番に従い、効果Bが適用された後に、効果Cが適用されることになり、効果Bによって、基本でない土地は山になる。
参考
カードテキスト
Magus of the Moon / 月の大魔術師 (2)(赤)
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
基本でない土地は山(Mountain)である。
2/2
Song of the Dryads / ドライアドの歌 (2)(緑)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(パーマネント)
エンチャントされているパーマネントは無色の森(Forest)土地である。
Dress Down / 激しい叱責 (1)(青)
エンチャント
瞬速
激しい叱責が戦場に出たとき、カード1枚を引く。
すべてのクリーチャーはすべての能力を失う。
終了ステップの開始時に、激しい叱責を生け贄に捧げる。
総合ルール抜粋
305.7 何らかの効果により土地タイプがいずれかの基本土地タイプに定められた場合、その土地は以降古い土地タイプを持たない。ルール・テキスト、元の土地タイプ、その土地に影響しているコピー可能な効果によって得られていた能力を全て失い、その基本土地タイプが持つマナ能力を得ることになる。ただし、これは他の効果によりその土地が得た能力を取り除くわけではない。土地タイプの設定は、その土地が持つカード・タイプ(「クリーチャー」など)や特殊タイプ(「基本」や「伝説の」「氷雪」など)を変更しない。土地が現在の土地タイプに加えて新たな土地タイプを得た場合、それはこれまでの土地タイプとルール・テキストを持ち、それに加えて新しい土地タイプとマナ能力を得る。
6 呪文、能力、効果
613 継続的効果の相互作用
613.1 オブジェクトの特性の値は、そのオブジェクトそのものの値から始まって決定される。カードであればそのカードに記載されている特性の値、トークンや(呪文やカードの)コピーであればそれを生成した効果によって定められた特性の値を初期値とする。その後、以下の種類別の順番で適用できる継続的効果をすべて適用する。
613.1a 第1種: コピー可能な値を変更するルールや効果が適用される。
613.1b 第2種: コントロール変更効果が適用される。
613.1c 第3種: 文章変更効果が適用される。rule 612〔文章変更効果〕参照。
613.1d 第4種: タイプ変更効果が適用される。ここにはカード・タイプ、サブタイプ、特殊タイプ変更効果が含まれる。
613.1e 第5種: 色変更効果が適用される。
613.1f 第6種: 能力追加効果、キーワード・カウンター、能力除去効果、能力を持つことを禁止する効果が適用される。
613.1g 第7種: パワー・タフネス変更効果が適用される。
613.2 第1種においては、以下の種類細別の順番で効果が適用される。各種類細別においては、効果はタイムスタンプ順に適用される(rule 613.7 参照)。種類別の中では、依存性によって適用順が変わることがある(rule 613.8 参照)。
613.2a 第1a種: コピー可能な効果が適用される。これには、コピー 効果(rule 707〔オブジェクトのコピー〕参照)と、オブジェクトをパーマネントに合同させたことによって決定されるオブジェクトの特性への変更(rule 725〔パーマネントの合同〕)が含まれる。また、「戦場に出るに際し/As ... enters the battlefield」や「表向きになるに際し/As ... is turned face up」の能力は、それがパワーやタフネスを定めているなら、他の特性も定義していたとしても、コピー可能な効果を生成する。
613.2b 第1b種: 裏向きの呪文やパーマネントの特性が、rule 708.2で定義されるように変更される。
613.2c 第1種のルールや効果がすべて適用された後で、そのオブジェクトの特性はコピー可能な値となる(rule 707.2 参照)。
613.3 第2種から第6種においては、まず特性定義能力が最初に適用され(rule 604.3 参照)、その後他の効果がタイムスタンプ順に適用される(rule 613.7 参照)。種類別の中では、依存性によって適用順が変わることがある(rule 613.8 参照。)。
613.4 第7種においては、以下の種類細別の順番で効果が適用される。各種類細別においては、効果がタイムスタンプ順に適用される(rule 613.7 参照)。種類細別の中では、依存性によって適用順が変わることがある。(rule 613.8 参照。)
613.4a 第7a種: パワーやタフネスを定義する特性定義能力からの効果が適用される。rule 604.3 参照。
613.4b 第7b種: パワーやタフネスを特定の値にする効果が適用される。クリーチャーの基本のパワーや基本のタフネスを扱う効果は、この種類細別で適用される。
613.4c 第7c種: パワーやタフネスを(特定の値にするのではなく)修整する効果やカウンターが適用される。
613.4d 第7d種: クリーチャーのパワーとタフネスを「入れ替える/switch」効果が適用される。この種の効果はそのオブジェクトのパワーを参照してそのオブジェクトのタフネスとし、そのオブジェクトのタフネスを参照してそのオブジェクトのパワーとする。
613.5 上記の種類別による継続的効果の適用は常にそして自動的に行われており、結果としてオブジェクトの特性が変更されるのは即時である。
613.6 効果が複数の種類別に分類できる場合、そのそれぞれの部分がそれぞれの種類別として処理される。いずれかの種類別において効果が適用されはじめた場合、その効果を生み出している能力が途中で失われたとしても、その能力からの効果はそれぞれの種類別でそれらのオブジェクトに適用される。
613.7 各種類別、各種類細別の中では、効果の適用順は通常、タイムスタンプのルールを用いて決定される。より早いタイムスタンプを持つ効果が先に適用される。
613.7a 常在型能力によって作られた継続的効果は、それを作ったオブジェクトと、その能力を作った効果の、遅い方と同じタイムスタンプを持つ。その能力を生成した効果のほうが遅いタイムスタンプを持っており、その能力を持つオブジェクトが新しいタイムスタンプを得た場合、そのオブジェクトの常在型能力によって発生した各継続的効果も同様に新しいタイムスタンプを得る。ただし、それらのタイムスタンプの相対的順序は変わらない。
613.7b 呪文や能力の解決によって作られた継続的効果は、作られた時点でタイムスタンプを得る。
613.7c カウンターは、それがオブジェクトやプレイヤーの上に置かれた時点でタイムスタンプを得る。そのオブジェクトやプレイヤーの上にすでに同種のカウンターが置かれていた場合、その種のカウンターはそれぞれその新しいカウンターと同一の新しいタイムスタンプを得る。
613.7d オブジェクトは、それが領域に入った時点でタイムスタンプを得る。
613.7e オーラや装備品、城砦は、オブジェクトやプレイヤーにつくごとに新しいタイムスタンプを得る。
613.7f パーマネントは、オモテ向き になったり裏向き になったりするごとに新しいタイムスタンプを得る。
613.7g 変身する両面パーマネントは、変身またはトランスフォームするごとに新しいタイムスタンプを得る。
613.7h オモテ向きの次元・カード、現象・カード、計略・カードは、オモテ向き になった時点でタイムスタンプを得る。
613.7i オモテ向きのヴァンガード・カードは、ゲームの開始時にタイムスタンプを得る。
613.7j 策略・カードは、ゲームの開始時にタイムスタンプを得る。裏向きなら、オモテ向き になった時点で新しいタイムスタンプを得る。
613.7k ステッカーはオブジェクトに貼られるたびに新しいタイムスタンプを得る。ステッカーが貼られているオブジェクトが新しいタイムスタンプを得たなら、そのステッカーはその直後に新しいタイムスタンプを得る。ステッカーが貼られているオブジェクトが戦場にある合同パーマネントの一部になったなら、そのステッカーはそのときに新しいタイムスタンプを得る。オブジェクトが領域に入ったり合同パーマネントの一部になったりするに際して複数のステッカーが貼られていたなら、それらのステッカーの相対タイムスタンプ順は変わらない。
613.7m たとえば同時に領域に入る、同時にオブジェクトにつく、などで複数のオブジェクトが同時にタイムスタンプを得る場合、それらの相対的タイムスタンプはAPNAP順に従って決定される(rule 101.4 参照)。アクティブ・プレイヤーがコントロールしている(コントローラーがない場合はオーナーである)オブジェクトが、そのプレイヤーの選択した順番で早い相対的タイムスタンプを得て、その後ターン順で他のプレイヤーが続く。
613.8 種類別、種類細別の中での効果の適用順は、依存関係によって変更される場合がある。依存関係がある場合、タイムスタンプ順のルールは依存のルールによって上書きされる。
613.8a ある効果が、(a)別の効果と同じ種類別(存在するなら種類細別も)であり、(b)別の効果を適用することにより、その文章が変わったり、効果が発生するかどうかが変わったり、何に適用するかが変わったり、適用するもののどれかに何をするかが変わったりし、さらに(c)どちらの効果も特性定義能力によるものでない、またはどちらの効果も特性定義能力によるものである場合、その効果は他方に「依存している」と言う。そうでない場合、その効果は先の効果と独立である。
613.8b 1つまたは複数の効果に依存している効果は、その依存先の効果全てが適用されてからすぐに適用する。このルールによって複数の依存している効果が同時に適用されるようになった場合には、その適用順はお互いのタイムスタンプ順に従う。依存している効果同士によって依存性のループが作られた場合には、このルールを無視し、依存性のループを作っている効果をタイムスタンプ順に適用する。
613.8c 効果の1つが適用された後、残りの効果の順番は再評価される。まだ適用されていない効果が、他のまだ適用されていない効果に対して独立になったりあるいは依存したりすることによって順番が変わることがある。
613.9 継続的効果は別の継続的効果を無効化することがある。また、1つの効果の結果が、他の効果が適用されるかどうかや、その効果が何をするかを決定することもある。
613.10 継続的効果の中には、たとえばプレイヤーにプロテクション(赤)を得させるなど、オブジェクトでなくプレイヤーに影響を及ぼすものが存在する。それらの効果は全て、オブジェクトの特性が決定された後で、タイムスタンプ順に適用される。タイムスタンプ順と依存のルール(rule 613.7、rule 613.8)参照。
613.11 継続的効果の中には、プレイヤーの手札の上限を変更する、クリーチャーは可能ならばこのターン攻撃する、など、オブジェクトでなくゲームのルールに影響を及ぼすものが存在する。それらの効果は全て、他の全ての継続的効果の適用後に適用される。呪文や能力のコストに影響を及ぼす継続的効果は、rule 601.2fに定められた順番で適用される。それ以外のこの種の効果はタイムスタンプ順に適用される。タイムスタンプ順と依存のルール(rule 613.7、rule 613.8)参照。