甜花ブライダルの時間的構造
先日行われたシャニ6th大阪。Day1のDJパートでは大崎甜花&甘奈、小糸雛菜の「拝啓タイムカプセル」が披露された。
その中で「なぜ拝啓タイムカプセルに大崎姉妹が選抜されたのか」という“意味“について、甜花ブライダルカード、【Eve】大崎甜花を参考にしながら考えていきたい。
【Eve】大崎甜花について
【Eve】大崎甜花は他のPカードと比べてやや異なったコミュ構成をしている。一般的なPカードは3〜5つほどのプロデュースイベントがそれぞれ起承転結を担いながら、合体して一つの物語を作っている。しかし、今回の【Eve】大崎甜花はそのような構成にはなっておらず、それぞれのプロデュースイベント(コミュ)がそれぞれ独立した一つの物語になっている。まずは、それぞれのコミュの内容のあらすじをまとめてみる
(以下ネタバレ注意)
大人になる
とある番組主催のパーティーに呼ばれる甜花とプロデューサー。甜花はパーティーに向けてマナーブックをしっかりと読み込んでおくも、思ったよりもカジュアルなパーティーであったためマナーブックでの学習は不発に終わる
これからの
甘奈が出演している雑誌を読みながら、雑誌のアンケートに答える甜花。しかし、どうしても『アイドルとしての今後の展望』という質問にはなかなか答えを出せないでいる。その中でプロデューサーと話し合いながら、一応の答えを絞り出す
いなくならない
甜花はある日「プロデューサーがなんの予告もなく、突然さよならを告げていなくなる」という夢をみる。もちろん夢であったが、甜花はそれが本当に夢であるかどうかを確かめるためにプロデューサーにいろんな質問を投げかける。そうしてプロデューサーがいなくなるというのが完全な夢であることに安堵する。
いつかの
ウェディングドレスを着て、チャペルで撮影をする甜花(と甘奈?)。撮影場のすぐ近くで結婚式が行われているのを見て、プロデューサーは甜花に対して結婚について聞いてみる。甜花は自分の結婚式については分からないが、甘奈だったら綺麗なドレスを着て素敵な式を行うだろうと想像する。しかし、甘奈が結婚するということはすなわち甜花の元から離れるということでもあり、甜花は甘奈に素敵な式をあげて欲しいという反面、結婚しないでほしいとも考える。「なーちゃんがいないと幸せじゃない」と考える甜花は撮影前に「まだ結婚しないでと約束してほしい」と伝えるためにドレスのまま走り出す。
Trueコミュ:夏が来る
メイク室にて、甜花はメイクスタッフが甘奈と同じリップ持っていることに気づく。そのリップは実は夏限定色であり、甜花はメイクスタッフと「夏は好きか」という話になる。甜花は「暑いから」という理由で強めの拒絶反応を示す。
その後事務所に戻り、プロデューサーとも同様に「夏は好きか」という話をする甜花。夏が嫌いという反応を示したことが、メイクさんからしたらかなり意外だと思われたことが気になっていたらしい。プロデューサーは甜花の気持ちを理解しながらも、「ずっと夏が来ないのも嫌じゃないか?」と甜花に問いかける。湿気のジメジメ(多分コミュの中では6月?)やテストなど、いろんな嫌なことも多いので、それなら確かに夏が来てほしいかもと甜花は考える。
【Eve】大崎甜花の「テーマ」とは?
このように、【Eve】大崎甜花のコミュは一つ一つのコミュが独立した内容なっている。しかし、どのコミュにも共通して存在しているテーマがある。
それが「時間と変化」である。
もう一度「時間と変化」というテーマとこれらのコミュの内容を照らし合わせてみよう。
このように、各コミュでそれぞれ、そしてやや異なった角度から時間と変化についてを描いている。
そしてこの中でも特に重要なのが、「いなくならない」「いつかの」「夏が来る」の3つのコミュである。
「いなくならない」では突然夢の中でプロデューサーがいなくなる。確かにこのコミュの中では「これは夢の中の話」で完結はするが、これが絶対に起こらないというわけではない。果たして、プロデューサーとの関係、そしてアルストロメリアとしての関係が不変に続ける保証はない。
果たして、“今の関係“は不変であり続けるのだろうか?そんな問いに対するアンサーが、「いつかの」と「夏が来る」である。
そしてその答えは「“大崎“姉妹という関係はいつか変わるだろう」というものだった。
甜花が思うに、いつかは素敵な結婚式を挙げるであろう甘奈。しかし、甘奈が結婚してしまったら甜花は甘奈と一緒にいれなくなり、幸せになれない。そんな変化に対しての“抵抗“として、甜花は甘奈の元へと走っていく。
このように「いつかの」では関係の変化に対して抵抗した甜花。しかし、次のコミュ「夏が来る」においてはむしろ“抵抗“ではなく“受け入れ“になっている。
なぜ、抵抗していたはずの甜花が受け入れ、変化を実質的に引き受けてしまったのか?
その理由は、甜花が「時間の進行」を肯定的に受け入れたからである。
関係に変化をもたらすものは何だろうか?様々な要素が存在するだろうが、最も究極的に考えるとするならば、それは“時間“であろう。時間が進み続ければ、いつか変化の時は訪れる。もし変化を望まないのであれば「ずっと今のままであり続ければいい」と思うしかない。
しかし「夏が来る」において、「今が続くよりは夏が来てほしい」と考えており、甜花はむしろ季節=時間が進むことを“いいこと“として捉えている。
つまり、甜花自身は自身の周辺の関係(特に甘奈との関係)について変わらないでほしいと思い続けている一方、実際に関係の変化をもたらす“時間の進行“については受け入れた。
そして、(もちろん、ゲームの性質上実際には進まないが)甜花とプロデューサーをめぐる季節すなわち時間は否応なしに進み続け、そして1年1年を重ねていく。そうして時間が過ぎていくたび、いくら抵抗しようとも、“別れ“は実在性を増していく。
【Eve】大崎甜花は、ある意味で当たり前であり、そしてあまりもグロテスクな事実を描写した、そんなコミュである。
シャニマス6th、そして拝啓タイムカプセルへ
そんなコミュを経てシャニマス6th大阪Day1披露されたのが、大崎姉妹&ひなこいの「拝啓タイムカプセル」である。(本記事の便宜上大崎姉妹だけに絞って述べていく)
前述のように【Eve】大崎甜花においては「彼女たちの関係は不変ではなく、いつか終わりが来るかもしれない関係だ」ということが示された。しかし、“そんな関係をこれからどうしていくのか“という最大の問いについては答えが示されないままだった。
そんな問題に対する最大のアンサーこそが「拝啓タイムカプセル」だったのではないだろうか。
「彼女たちの関係は変わりうる。だからこそ今の関係が愛おしいし、大切にしていきたい」
ある意味当たり前であり、前々からもずっと大事であったものが、より大切に、そして愛おしく感じさせられる。それが【Eve】大崎甜花であり、そこからの「拝啓タイムカプセル」なのである。