みんなで地球を助けよう③:水素をどうやって製造するのかが重要⁉
水素は、化石燃料に代わる主力燃料として非常に有望だと思っています。
さて、その水素について高校の化学の授業以来の方も多いと思いますので、少し基本的なことをおさらいしましょう。
水素の化学式は、H、元素番号1です。
水素は、軽くて水素ガス1kgは11㎥もあります。(これを11N㎥ノルマル立米と呼ぶそうです。つまり0℃1気圧の標準状態に換算した容積です。)
気化する沸点は、マイナス252.87℃です。液化させた水素の体積は、800分の1に縮みます。
そのため、1kgの液化水素は、14リットルまで縮みます。
しかし、加圧して臨界温度を上げてもマイナス240.14度ですので、液化を維持するのに超低温が必要です。
海外からの輸入を考えた場合、液化天然ガス、LNG以上の超低温輸送設備が必要になります。
そう簡単なことではなく、経済合理性を維持できる実用化までには輸送の試行錯誤や改善には時間が掛かりそうです。
ちなみに、LNGは、加圧することで、マイナス160℃の沸点をマイナス82.6度まで高めることができますが、この温度以上ではいくら加圧しても液化しないようです。
✅水素の代表的な製造方法
水素が、何故、期待されているかと言えば、水を電気分解して、水素を取り出すことを考えれば、地球上に無尽蔵にある資源だからです。
しかし、電気分解に使う電力が、化石燃料を燃やして、二酸化炭素を吐き出して作った電力では、本末転倒ですので太陽光発電などのクリーンな電力で水素を製造しないと意味がありません。
さて、現在、水素がどうやって製造されているのかを見てみましょう。
まず、苛性ソーダの製造に伴う副産物としての水素があります。
苛性ソーダ1トンを製造すると約280N㎥の副産水素が製造されます。
苛性ソーダの副産物として生産されている水素は、どれくらいあるでしょうか?
仮に日本の粗鋼生産を全て水素還元に置き換えるとしたら、1,000億N㎥、約900万トンの水素が必要(実際には鉄はリサイクルできるので、650万トン~700万トンの水素で済む)です。
日本の苛性ソーダ生産量が、約400万トンですので、生産量から推定される水素の製造量は11億2千万N㎥、約10万トンが製造されています。
しかし、これでは水素還元製鉄に必要な700万トンの水素の1.4%に過ぎません。
次が、製鉄製造プロセスで、コークス炉で発生する水素ガスです。
これは、水素還元製鉄に変えていくのなら、将来は出てこない水素です。
3点目が、石油精製時に、副産物として出てくる水素です。
これも化石燃料消費が減っていく将来においては減っていく水素です。
そして、最後に書いたのが、化石燃料を高温で水蒸気と反応させて、水素を取り出す方法です。
今は、これで仕方ありませんが、水素だけでなく、二酸化炭素も排出されるため、グリーンな水素製造ではありません。
本当は太陽発電等の再生可能エネルギーや原発の電力で水を電気分解して製造した水素が理想なのですが、経済合理性との兼ね合いです。
✅水素のコスト
水素の製造にどれくらいのコストが掛かるのでしょうか?
ここに大雑把な目安を書きだしてみました。
現状、水素ステーションで販売されている水素の値段が1,100円/kgです。
化石燃料由来の水素で供給されているのだと思います。
化石燃料を高温で水蒸気と反応させる改質によって取り出した水素が、供給量の主体なのだと思います。
オフサイトで大規模に化石燃料由来の水素を製造するコストが、560円/kg、流通コストを加えて販売価格が1,100円/kg、そんな感じではないかと思います。
また、水素ステーションに設置されているオンサイトの小型水素製造装置(都市ガスを改質して水素製造)の製造コストも1,100円/kgで販売できるレベルまでコストダウンが進み高効率化されてきていると思います。
今のところ、苛性ソーダ製造の副産物としての水素が一番安くて、224円/kg。
太陽光発電や風力発電のクリーン電力で水を電気分解するコストが、まだ一番高いのではないかと思います。(今後、どんどん安くなっていくのでしょうが)
海外では、クリーン電力の太陽光発電や風力発電のコストがどんどん安くなっています。
しかし、海外のクリーンエネルギーで製造した水素を液化して船輸送して日本に輸入したものを使うとなった場合の最終的な電力の競争力はどうなのでしょうか?
ちなみに、政府の「グリーン成長戦略」の中では、液化水素の価格として、目標として記述してあったのは、「2030 年に30円/N㎥の供給コストの実現を目指す。」というくだりがあります。
つまり、政府の目標は2030年に336円/kgの水素価格ということになります。
この価格であれば、水素ステーションでの水素販売価格を800円程度にまで下げることができるのではないでしょうか?
そこまでもっていけば、太陽光や風力だけに頼れない日本でもカーボンニュートラルが見えてくるかもしれません。
後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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