【じーじは見た!】 後編:骨太の方針2021 ~政治家への突っ込みは5つのHowを問いましょう!~
6月18日に閣議決定された「骨太の方針2021」(正式名称:経済財政運営と改革の基本方針2021 について)を読んでみました。
比較的「どうやって?」の方法論がしっかりしていると感じたのは、「グリーン社会の実現」の方針でした。前編では、4つ目のHowまで確認しました。今日は、5つ目のHowから見ていきましょう!
✅政治家の言うことへの突っ込みは5つのHow?
我が国は「2050 年カーボンニュートラル」を宣言し、世界の脱炭素を主導し、経済成長の喚起と温暖化防止・生物多様性保全との両立を図り、将来世代への責務を果たす。
上記の「グリーン社会の実現」に関する基本方針に「それはどうやって?」の「How?」の質問を5回繰り返して、方法論がどこまで掘り下げられているのかを確かめてきました。
今回は、その5回目のHowの答えから確認していきましょう。
話が繋がらない方は、まず前編を読んでください。
✅最後のHow
【5回目のHow】
Aの答えに対するHowは次のとおり。
●グリーンイノベーション基金による野心的なイノベーションに挑戦する企業への 10 年間の継続支援
●カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の活用等、企業の脱炭素化投資を後押し
●新技術の導入に資する規制改革や国際標準化に取り組む
●3,000 兆円ともいわれる世界の環境投資資金を我が国に呼び込み、グリーン、トランジション、イノベーションに向かう資金の流れを作る
最後の●には、「資金の流れを作るというが、それはどうやって?」の答えも用意されていて、
・※TCFD等に基づく開示の質と量の充実
・グリーンボンド等の取引が活発に行われるグリーン国際金融センターの実現
・一足飛びでは脱炭素化が難しい産業向けのトランジション・ファイナンスの推進等に取り組む。また、グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進める
と書かれていました。
※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)
Bの答えに対するHowは次のとおり。
●必要な送配電網・電源への投資を着実に実施し、コスト効率化や、分散型エネルギーシステムなど真の地産地消にも取り組むよう促す。
●火力については、CCUS/カーボンリサイクルを前提とした利用や水素・アンモニアによる発電を選択肢として最大限追求する。
●原子力については、可能な限り依存度を低減しつつ、安全最優先の原発再稼働を進めるとともに、実効性ある原子力規制や、道路整備等による避難経路の確保等を含む原子力防災体制の構築を着実に推進する。
●安全性等に優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成等を推進する。
●電力部門以外は、炭素生産性が欧州に比べ劣っている中、省エネルギーを徹底し、未利用熱等も活用するとともに、供給側の脱炭素化を踏まえた電化を中心に進める。
●電化できない熱需要については、水素などの脱炭素燃料やカーボンリサイクルも活用していく。
●自動車については、EV充電設備や水素ステーションの整備等を進め、普及が遅れている電動化を戦略的に推進するとともに、SSの総合エネルギー拠点化等を進める。
●住宅・建築物については、規制的措置を含む省エネルギー対策を強化し、ZEH(ゼッチ:ゼロエミハウス)・ZEB(ゼブ:ゼロエミビル)等の取組を推進するとともに、森林吸収源対策を強化する。
●水素の輸入等のためのカーボンニュートラルポートの形成や船舶・航空分野の脱炭素化を進める。
●特に、2030 年度目標の実現のため、複数年度にわたる取組を計画的に実施する新たな仕組みを検討する。「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、地域・暮らしの分野における地方自治体や国民の取組を推進し、2030 年までに
脱炭素先行地域を少なくとも 100 か所創出するとともに、全国で重点対策を実施し、脱炭素ドミノを起こす。
●また、プラスチック資源循環を始め循環経済への移行を推進する。
●脱炭素社会への円滑な移行を進めつつ、メタンハイドレート、海底熱水鉱床、レアアース泥等の国産海洋資源開発を含むエネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に取り組む。
Cの答えのHowは次のとおり。
●炭素税や排出量取引については、負担の在り方にも考慮しつつ、プライシングと財源効果両面で投資の促進につながり、成長に資する制度設計ができるかどうか、専門的・技術的な議論を進める。
●国境調整措置については、我が国の基本的考えを整理した上で、戦略的に対応する。
ここまで見てくると、Cの答えがボヤっとしているなということが分かりますよね。
つまり、諸外国との調整もついていなければ、産業界との調整もついていないということで今のままでは「いうだけ番長」候補です。
だけど、Bの答えを見ると、随分具体化が進んでいるなと思えますよね。
つまり、「電力部門の脱炭素化に向け、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再生可能エネルギーに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す。」ということは、河野さん、小泉さん、梶山さんの頑張りで方針が明確になってきているんだなということが分かります。
その具体策に落とし込むプロセスも官僚任せではなく、大臣がリモート会議を国民に見える化して作り上げてきましたので、物凄く透明なプロセスだったと思います。
ただ、これらの具体的なメニューを実行する予算規模や産業界の投資規模は欧米に比べると見劣りしており、課題は山積です。
何でもかんでも「反対」と言うだけ、失言追求で国会空転の野党にも、是非政策論議ができるだけの「How?」を考えてもらいたいと思います。
そして我々国民は、気候変動問題の盲点を見落とすことなく、森林を伐採してメガソーラーを設置するような目的を忘れて、金儲けだけを目指す企業を助ける自治体の首長や地元の既得権益者を監視しなければなりません。
✅「グリーン社会の実現」以外の他の3つの原動力には不安?
もう一度確認しておきましょう。
「官民挙げたデジタル化の加速」は、Howの前に、「目的は何?」という部分がまだ曖昧だと思います。平井さんは頑張っておられるけど、既得権益の大きい分野で苦労されているのだと思います。
また、「日本全体を元気にする活力のある地方創り」も同じで、「何のために?」という根本が曖昧です。
東京一極集中が悪で、お金のない国でも予算を満遍なく地方に分散して、国際的な都市間競争に負けていくのが本当に国民のためなのか?、そのロジックが曖昧です。
少子化対策なんかは、全然Howの質問に答えられない状況だと思います。
これこそ、河野さんの再エネタスクフォースのような形式で、少子化対策にもっと若い人の意見を聞く、WEB会議のような場で、具体策を詰めた方がよさそうです。
✅4つの原動力を支える基盤づくりが更に不安?
(1)デジタル時代の質の高い教育の実現、イノベーションの促進
(2)女性の活躍
(3)若者の活躍
(4)セーフティネット強化、孤独・孤立対策等
(5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、
リカレント教育の充実
(6)経済安全保障の確保等
(7)戦略的な経済連携の強化
①グリーン・デジタルを始めとする戦略的国際連携
②TPP等経済連携の拡充・強化
(8)成長力強化に向けた対日直接投資の推進、外国人材の受入れ・共生
(9)外交・安全保障の強化
(10)安全で安心な暮らしの実現
この基盤の10項目、中でも「女性の活躍」「若者の活躍」に期待しているのですが、政府や官僚のコミットメントが弱く、具体的な数値目標が不明確な点が気になります。
積上げ改善が得意で、想定外のイノベーションが苦手な日本のお役所が、カーボンニュートラル2050に関しては、バックキャスティングで「How」を一生懸命に考えてきました。
そうすることで、この骨太の方針でも具体策を明確にできています。
いまこそダイバーシティにもバックキャスティングでHowが必要なのではないでしょうか?
女性国会議員は、2050年に何%、2030年には何%にすることを世界にコミットして、逆算で制度設計期日を決めるような方針が出てくることを期待したいです。
「骨太の方針」という面白くもない題材に2日間お付き合いくださりありがとうございます。Z世代の方が一人でも興味をもってくれたら幸せです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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