ジェームズ・グレイ「アド・アストラ」
2019年の作品。劇場で鑑賞したがもうあまり覚えていない。
ただラストが衝撃だった。ロイが宇宙の果てで父親に出会ったとき、
父親は宇宙人になっていた!というわけで、ミイラ取りがミイラになるお話だ。
もはや親父は人間でもなんでもなくて、それに捉われていたロイも気の毒である。呉智英曰く「200万年にわたって破られ続けてきた処女膜が子どもたちに遺伝しないように獲得形質は遺伝しない」ので、もちろんロイはミイラにはならない。(リブタイラーだって家で待っている!)
親父はボケることで、ある意味で宇宙人化する。それは無限に広がる非圧迫的宇宙の中で、物質としては収縮しながらも抽象的に膨張し続ける脳をもつ人間の限界である。この人類にとって無限な広がりを持つ非圧迫的宇宙と比肩するものがあるとすれば、有限だが未踏である強圧迫的深海である。
その意味で「グラン・ブルー」においてジャック・マイヨールは人間からイルカになっている!
マイヨールは深く深く潜る過程でイルカになり波になり、人魚のように気泡となって、海(スクリーン)のシミとなって消えていく。死の類型として深海的消失と宇宙的飛散とか考えてみようかな。