慢性期脳卒中後の上肢運動障害に対するTransfer Packageを中心とした週1回20分の外来作業療法の取り組み -事例報告-
慢性期脳卒中後の上肢運動障害に対するTransfer Packageを中心とした週1回20分の外来作業療法の取り組み -事例報告-
小渕浩平
JA 長野厚生連長野松代総合病院リハビリテーション部
https://doi.org/10.32178/jotr.38.4_497
■基本情報
右脳梗塞(放線冠)による左上下肢麻痺を呈した70歳代女性、利き手は右。
脳梗塞発症後、急性期OTと外来OTを受け、発症後1年で外来OT終了。その3か月後に転倒してL3圧迫骨折受傷。その後の疼痛の影響から臥床期間も増え、左上下肢の動きが低下。脳神経外科受診して、外来OT再開。
■評価
・BRS:上肢Ⅳ、手指Ⅳ、下肢Ⅴ
・上肢FMA:45点
・感覚:表在10/10 深部5/5
・MAS:1+
・握力:9㎏
・MAL:AOU1.91 QOM0.92
・STEF:65点
・BI:100点
■上肢訓練内容
・初めにBehavioral Contract(BC)を結び開始。
・事例の一日の生活スケジュール例を把握し、その中で麻痺手の使用状況を確認。そのうえで、Transfer Package(TP)と課題指向型訓練を実施。
・TPの具体的内容としては、BC、MALのQOMでの自己評価、麻痺手に関わる日記、自宅での麻痺手使用の割り当て(HAS)、自主トレの指導、Problem Solving(HASに対する問題解決方法の提案と指導)
外来では、HASの項目を確認し、PSのための装具装着しての動作確認などの難易度調整を行うなどする。
痙性コントロールとして、自宅での振動刺激の実施(手の屈筋群)、対立バンドの使用を促した。
目標に関連しない内容でも、できそうな課題はHASに追加。
恒常的に麻痺手の使用ができている者はHASリストから除外し、新たに項目を思案し、OT外来で動作確認し、難易度調整したうえでリストに追加。
■結果
・BRS:上肢Ⅴ、手指Ⅴ
・上肢FMA:55点
・感覚:表在10/10 深部5/5
・MAS:1
・握力:15㎏
・MAL:AOU4.33 QOM3.42
・STEF:81点
・BI:100点
■感想・学び
・事例の生活スケジュールを把握して、麻痺手の使用場面の想起・聞き取りをすることで、よりHASは実生活にもれなく取り込めると感じた。
・週一回の取り組みでTPを行うための難易度調整やHASのPSを丁寧に行い、事例が前向きに取り組めるようマネジメントすることが非常に大切かと思った。
・本報告の経過にはそれらの丁寧な一面が垣間見れて、非常に勉強になった。
今日も最高の一日に。