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”農の最高傑作を創る!”第六話 僕が掲げるてっぺん

2016年は、一年かけて考えをまとめるという中々ボリュームある作業に取り組みました。
作業を開始するにあたりまず決めるべきは、挑戦の最大目的でした。
情報や知識を整理しながら、並行しててっぺんに据える最大目的を研究、探究し続けました。

【整理を始めるにあたって】

2014年、2015年と、農業についてや経営について、あれやこれや知識や情報を頭の中に叩き込んできました。
2016年は年の初めから、貯め込んだ知識や情報を紙に書き出して、整理する作業を進めていきました。
何も考えず夢中になって詰め込んできましたので、頭の中はグチャグチャのバラバラです。

まとめあげるためにペンを走らせ続けた当時の書類の一部

こんな時の解決手段として、僕は僕なりの整理術を持っています。
それは、てっぺん、言い方を変えますと目的地、または最大目的を決めるということです。
てっぺんさえ決まれば、どこから登っても目指すところは変わりません。どのルートを選んでも、どのアプローチを選んでも、目指しているところはいつも同じということになります。

てっぺんだけは、そこそこはっきりと決まっていました。
まだ、霞みがかっていて、はっきりと形は見えてはいませんでしたが、おおよその輪郭はとらえていました。
それは僕の挑戦の結論になってしまうんですが、”熱狂をつくる”ということです。おそらく、どういうこと?とハテナマークがついたと思いますが、こちらは残りのスペースでエピソードを交えながら解説していきます。

”熱狂をつくる”というてっぺんが決まるまでには、たくさんの情報収集と探究が必要でして、ずいぶん長い時間がかかりました。
僕の場合は、挑戦するためにてっぺんを設けたのではなくて、てっぺんがはっきりくっきり映ったからこそ、人生を賭けて挑戦するって決断したと言えます。
ということで、第六話は、てっぺんが決まるまでを書いていきます。てっぺんこそが、僕の目指す目的地であり、人生を賭けて挑戦する”意味”です。

【働くことの意味】

2001年に入社した当時の会社(農業に挑戦する直前まで15年半お世話になった会社)では、営業マンをしながら「働く」ということの大義名分を欲しがっていました。
営業マンとしてはそこそこ順調にいっていたと思いますが(周りの評価は違っていたかもしれません)、心のどこかがしっくり来ていませんでした。
というのは、頭を下げながらご契約をいただき、売上げ成績を追い求めるという営業活動が、なんだか卑しい行為のように感じていたんです。
僕はとても理屈っぽくて融通が利かないところがありまして、割り切ってやればいいのに、ど~も自分にウソついてまでやるってことができないんですよね。卑怯者、ウソつきって自分を貶してしまうんですね。どこまで行っても青臭いんです。
もっと胸張って堂々と働きたいなぁっていつも思ってました。

日々の営業活動の中ではお客さんとは良好な関係を築けていまして、納得のいくご契約はいただけていたんです。お客さんに喜んでもらえると、僕も嬉しくなっていて、良い仕事ができたなって充実した気持ちにはなっていました。
それでもですね、いつも心のどこかに営業マンでいることに誇りが持てないところがあったんですね。どこか悶々としているところがありまして、今一つ自信をもって働けていなかったんです。ホント、難しい性格なんです。

そんなこんなで11年も経ってしまった2012年8月、ある方の講演で、僕の心の中を曇らせていた濃厚なモヤモヤが一気に晴れるという出来事が起こります。
70歳を超された講師であるそのお方は、力強く、しかしサラッとおっしゃいました。
「なぜ働くのか?それは、人世のために働くんです!」と。
・・・。・・・!・・・!!動きが止まりました!息も止まりました!物凄い衝撃で、強烈に胸に突き刺さったんです!!
「人世のために働く」。ホワイトボードに書かれたその言葉を見つめ、まったく動くことができなくなりました。そして、ただただ涙があふれてきました。
いやー、シビレました。なんの装飾もないシンプルな言葉です。言ってみれば、たったそれだけの言葉です。
でも、僕には心にも体全体にも響き渡る、いやそんな言葉では表現できないような、もっと何と言うか、立ちはだかっていた何かが思いっきりぶっ壊れて全身にとてつもない衝撃が起こってきれいさっぱりなくなって、突然静かで美しい景色が出てきたような・・・。もうクラクラするようなとんでもない衝撃の言葉だったんです。
そんなものなのかもしれませんね。心の奥底から欲しかった言葉だったんですかね。ずっと望んでいた言葉だったんですかね。今でも思い出すと涙があふれてきます。

この瞬間から、変身したかのように僕は別人になりました。心底自信をもって営業活動が展開できるようになりました。営業活動だけではなく、とことん人世のために働くぞってヤル気満々フルパワーで色んな活動をすることができるようになりました。

【追い打ちをかけて】

それから半年ほど経った2013年2月、またしても衝撃のお話を聴くことになります。
今度は、中村文昭さんという事業家の方の講演会でした。とてもためになるお話が聞けるから、絶対来た方がいいよって薦められての参加でした。正直なところ、まったく興味は湧かなかったんですが、あまりにも熱心に薦められたもので、その方の顔を立てるために行くことにしたという程度の消極的参加でした。
ところが、これまた予想もしなかった二発目の衝撃言葉に出会います。以下。
「世の中の仕事は全部、”喜んでもらう”というのが前提になっている」
ん?ナ、ナ、何~?!そうなの?
色んな職種を当てはめて考えてみたら、確かにどれもこれも喜んでもらうためにやっている・・・。
そ、そ、そうか~!なるほど~!!って思いました。
ウオーッ!またしてもスゲー真理!
あまりにもシンプルだったから、脳ミソが弱い僕にもスルッと入ってきました。疑いたくなるようなシンプルさです。
僕は、すぐさま生業の営業活動に活かしていきました。
どうやったら取引先の社長や担当者の方は喜ぶかな、どんな情報を持っていけば喜ぶかなって、考え方と動き方が変わりました。

「人世のために働く」「喜びを提供する」、この二つの言葉を基本に据えて、僕の営業スタイルはとても力強く自信に満ち溢れていきます。

【喜びの研究と探究】

「喜び」については、自分なりに研究しました。
人はどんな時に喜ぶんだろうか。喜ぶことでの効果って何だろう。喜びを大きくしていくと、どうなるんだろうか。
中々奥が深いテーマでした。簡単そうで、とても難しかったです。営業活動をしながら、農業経営の情報収集をしながら、考え続けていました。ここが、農業挑戦の最大目的、てっぺんになるって確信がありましたので。

街中で喜んでいる人たちを見ては、「なぜ喜んでいるんだろう?」と観察したり、「あ、人はこうすると喜ぶんだ」と発見したり、「これはスゴイ盛り上がりだ!」と驚いた り、喜び研究をクセづけていきました。
そして、一つの式?が出来上がりました。
喜び<感動<熱狂
です。

喜びは、大きくなりますと感動に変わり、さらに感動が大きくなりますと、今度は熱狂に変わる、という式です。

研究してきたことでの、僕の仮説があります。
喜びは一人の時よりも二人、二人よりも十人、十人よりも百人、百人よりも千人と、喜びの共有が多くなれば多くなるほど、比例してドンドン大きくなっていくという理論です。
式でも表しました通り、喜びが大きくなっていくと、感動に昇華します。感動レベルに行くと、心は大きく震えます。それだけでも、ものすごい衝撃があるはずですし、強く心に残ります。
そして更に、感動を通り越していく現象。ある一つの事象に対して、たくさんの感動が一点に集中するという超レアケース。そこには思いもよらない「熱狂」という現象が生まれます(もちろん一人熱狂もあります)。おそらくこの瞬間は、心が震えるだけではなくて、心の振動が体をも震わせて、人によっては涙があふれて鼻水だらけになり、ひどい人はヨダレも流れていることに気づけないでいるかもしれません。
おそらく、一生忘れることのできない深く心に刻み込まれる記憶になり、もしかすると、その後の人生を大きく変えたり、または力強く生きていくための大きなエネルギーになっていったりするかもしれません。

【侍ジャパンの世界一】

最近の「熱狂」のシーンで思い出されるのが、WBC(ワールド ベースボール クラシック)での侍ジャパンの優勝ではないでしょうか。
僕は熱狂しました。何人かの人たちとスマホの小さい画面に釘付けになって、画面に穴が空いてしまうほどに食い入るようにのぞき込んでいました。
9回ツーアウトランナーなし。バッターはメジャーを代表する大打者マイク・トラウト。スリーツーフルカウント。大きく深呼吸するトラウト。獲物を狩る獣のような眼差しの大谷さん。バッテリーのサインが決まる。気合十分でセットポジションに入る大谷さん。ゆっくりとモーションに入り渾身の一球!龍の如くウネるように躍った白球!トラウトの迫力ある覚悟を決めた鮮烈のフルスイング!夢と希望を乗せた白球は、日本中、いや世界中の人々の心を一点に集め切り、見事キャッチャーミットに吸い込まれたのでした!!
(ウオーッ!!!)叫びだしたくなる僕!(隣に人がいたからぐっとガマン)震えだす体!勝手にあふれてくる涙!
おそらく、空間を超え、日本という国レベルで心が一つになり、みんな同じ思いで最後の一球を追ったのではないでしょうか。これほどピンポイントに人々の心が集中して、パンパンに詰め込んで膨れ上がった感動のかたまりが爆発する瞬間なんて、まず出会えない貴重な貴重な超!超!レアケースの「熱狂」だったはずです。

すみません。野球狂なもので、筆がすぎました。

【感性 感受性】

プロ野球の監督をされた故野村克也さんの著書「野村ノート」だったと記憶しているんですが、人の強さは感じる力である感性、または感受性にあると書いてました。
僕なりの解釈としましては、五感を通して入ってきた情報から、一(いち)しか学べない人よりも、十(じゅう)学べる人の方が人生においては有利なはずという理解をしています。
そして、この感性・感受性の成長は、感情の震えにあると野村さんは言っていたと思います。わかりやすく言うと、強烈な喜怒哀楽にあるということになるんではないでしょうか。
残念ながらここには、ひどすぎる何かへの大きな怒りだったり、貧乏な境遇での強い劣等感だったり、身近な人の耐え難い死だったりが入っているかもしれません。
皮肉なもんですが、大きな怒りや悲しみも、人を強くしてくれるということなのかもしれません。
僕はできるならば、喜んで楽しんで感性・感受性を磨いていけたらいいよなぁって考えています。

【僕が目指す理想】

喜んで笑顔になると、次の活動の大きなエネルギーになります。
みんなで喜びをつくり合えば、間違いなく世の中はハッピーで明るい雰囲気に変わります。
みんなが喜びをつくる練習を続ければ、おそらく一人ひとりの人間力はアップします。
みんなが感動をつくり合えるようになれば、人も社会もガラリと変わります。
そして、みんなの心を一点に集めて、感動を超えていった先の「熱狂」を肌で感じた人は、一生モノの宝を手にしたと言えるかもしれません。

人世のために、「熱狂」を創り出すことが出来たら・・・。
創り出したいですねぇ。死ぬまで追い求めたいですねぇ、「熱狂」。

改めて、てっぺんに据えた僕の経営理念です。
「喜びも感動さえも超えていく 農の最高傑作を創る」

第七話へ続く


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