自主管理と外部委託、どちらが正解?無人宿泊施設運営の現場からのアドバイス
無人宿泊施設運営は、最近注目されている投資のスタイルです。
ですが実際に始めようとしたら、
「自分で管理した方がいいのか?プロにお願いした方がいいのか?」
と迷う方も少なくないでしょう。
この記事では、無人宿泊運営の基礎から自主運営と外部委託の違い、そして運営を効率化するコツまで、実際に施設を運営している私の実体験を踏まえながらわかりやすく伝えます。
宿泊施設運営を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
1. 無人宿泊施設運営を始める前に知っておきたい基本事項
「無人宿泊施設」は、一般的なホテルと何が違うのでしょうか?
ここでは、無人宿泊施設についての基本事項をご紹介します。
無人宿泊施設とは?今注目されるその仕組みと特徴
無人宿泊施設運営最大の特徴は、名前の通り「スタッフが常駐しない」点。
チェックインやチェックアウトにオンラインやセルフシステムを採用することで、人件費をはじめとした運営コストを大幅に削減できます。
施設に常駐する必要がないため、本業を持ちながら副業や投資として運営できる点も大きな魅力ですね。
他にも、空き家を再利用できるというメリットがあります。
特に田舎や離島では、空き家問題が深刻なのをご存じでしょうか。
人口減少や過疎化を受け、地方では放置される空き家の数が上昇。
平成20年から平成30年の10年間で、空き家率が10%を超える都道府県が0→6自治体にまで増加したというデータもあります。
一方で宿泊施設が不足している地方も多く、無人の宿泊施設運営は両問題を打開する一手としても注目されています。
どれを選ぶ?自主管理と外部委託の仕組みを徹底解説
無人宿泊施設の管理方法には「自主管理」と「外部委託」の2種類があります。
自主運営の大きなメリットは、低コストで柔軟性の高い運営ができる点です。
コストを削減しつつ、お客様の要望を汲み取ったり、オリジナル性の高いサービスを展開したりできます。
対して外部委託はコストがかかりますが、自主運営と比較して業務負担が軽い分拘束時間は短縮されます。
どちらを選ぶかは運営者のライフスタイルによって決めると良いでしょう。
ちなみに私は基本的に自主運営で一部を外注するハイブリット型です。
後述するメリット・デメリットも参考にしながら、自分に合った戦略を決定してくださいね。
2. 実際に運営して分かった!自主運営の実態
「無人宿泊施設を運営している」と聞くと、短い時間で高い収益が得られると想像する人もいるのではないでしょうか。
ここでは実際に活動しているから分かる、無人宿泊施設の自主運営の実態をご紹介します。
自分のペースで運営可能!自主運営ならではの自由な働き方
自主運営の最大の魅力は、自分のペースで働けることです。
私にはもうすぐ2歳になる息子がいるので、息子が保育園に通っている時間内で業務が完結するようにスケジュール調整しています。
しかし子どもの体調不良、お客様からの急な呼び出し、その他トラブルなど、予定外の出来事はつきものです。
加えて副業としてwebライター業務も始めたので、スケジュール管理には特に気を付けています。
具体的な1日のスケジュールは以下の通りです。
働く親御さんなら共感いただけると思いますが、子どもはしょっちゅう体調を崩します。
会社勤めであれば子どもが休む度に自分自身も休暇申請が必要で、多少なりとも申し訳ない思いをするでしょう。
施設の自主運営ならその必要もありません。
自由度の高い働き方は、自分の価値観やライフスタイルを大切にしながら収益を上げたい人にとって、非常に魅力的な選択肢ではないでしょうか。
自由だけど…何があっても休めない現実
「自由度が高い」と書きましたが、施設運営を始めてからまるっと1日ゆっくりすることはできなくなりました。
お客様が毎日入れ替わる上に、問い合わせにも対応しなければなりません。
「今日は休もう」とはいかないのが現実です。
たとえ子どもが発熱しても、自分が体調を崩してもお客様から電話があればとらなければいけない生活というのは地味にしんどいです。
先日1泊の旅行に行きましたが、どんなときでも対応できるようスマホが手放せず、旅行に来た時の解放感が以前より薄れていると感じました。
どうすれば選ばれる?集客に苦戦した初期運営
集客のために私がとった具体的な施策は「地元民の口コミを強化」「MEO対策業者に外注」「OTAの導入」の3つです。
簡単に言うと、地元民の口コミを増やす努力をして、Web上の集客は外注しました。
Web集客については自分で調べて活動していた時期もあったのですが、「ここはプロに依頼した方が確実だな」と途中で考え直しました。
Web集客は
googleマップで上位表示させるための「MEO対策」
自社サイトを上位表示させる「SEO対策」
InstagramなどのSNS運用して認知度を上げる「SNS運用」
などがあるのですが、それぞれにコツがあって、1つ1つを勉強していると1日の時間の大半を取られてしまっていたからです。
素人が勉強して成果を上げるまでにかかる時間を考慮すると、お金をかけてプロに依頼する方がより早く結果が出せると判断しました。
地元民の口コミについては、
地元の情報誌に掲載してもらう
広告Tシャツを着て毎日生活する
友人を介して紹介してもらう
など、地道に活動しています。
宿泊者へのアンケートをみると、うちの施設を知ったキッカケの半分くらいは「知人からの紹介」だったので、オフラインの口コミの力は強大だと改めて感じています。
3.一部を外部委託に!見えてきた効率的な運営
先ほども少し触れましたが、私は基本的に自主運営で一部を外部委託するというハイブリット型運営をしています。
まだまだ改善の余地がありますが、今のところ毎日3〜4時間程度の実質稼働時間で運営できています。
具体的には以下の通りです。
【自主運営】
お客様への応対(電話/メール)
チェックインの案内
SNS運営
請求書/領収書の発行
施設内掲示物の充実
清掃(状況に応じて自分自身も清掃に参加)
ゴミの処理
リネンの発注
消耗品の購入・管理
売上管理
清掃バイトのシフト管理
公式HP作成&運営
【自動化】
空室照会・予約
宿泊名簿の管理
【外部委託】
MEO対策
OTA活用と連携による広告
自主運営と外部委託を判断するポイントは、専門知識が必要かということ。
勉強すればできるようになりそうなことでも、「それを生かせるまでに必要な時間」を考えて、プロに頼った方がより効果が得られると判断した場合は外部委託しています。
他人に頼ることで、自分では思いつかなかったような知見を得られることもあります。
4. PMSで運営がここまで変わる!導入のメリットとは?
PMSとは(Property Management System(プロパティ・マネジメント・システム)の略語で、ホテルや旅館が、予約や客室管理を行う際に利用するシステムのことです。
お客様ご自身でネットから予約できるようになったり、予約状況がリアルタイムで管理できるなどの機能があります。
その他にも売上管理、データ分析、清掃管理等の機能が付随している場合もあるので、上手に活用すれば業務を大幅に簡略化できます。
ここでは、PMSを導入した効果を3つご紹介します。
電話応対時間の短縮
PMSを導入したことでネット予約が可能になり、電話に割く時間は大幅に減りました。PMS導入以前は電話で予約を受けていましたが、1日20件ほどの電話がくるので、1回5分で計算すると100分も電話している計算になります。
実際、「私毎日電話しかしてないな・・・」と感じる毎日を送っていました。
PMS導入後は1日5件前後の電話連絡で推移しているので、毎日75分の時間が生まれたことになります。
責任の所在の明確化
PMSを介してお客様がご自身で予約をすることで、仮に宿泊日が間違えていたとしても「お客様側のミス」であることが明確になります。
電話で受け付けていたころは「聞き間違える」ことがとにかく恐怖で、夢に出てくることがあったくらいでした。
予約に関する責任の所在が明確になることで、心理的負担が大幅に削減されたのは大きなメリットです。
ペーパーレス化
実は、PMS導入以前は紙帳簿で管理していました。
そのため外出先でもA3サイズの予約帳簿を持ち歩かなければならず、かなり煩わしかったです。
買い物中に電話がなると走って駐車場に戻って、車の中でもぞもぞと予約情報を書いていたのですが、今思えばとんでもなく非効率的ですよね。
PMS導入後はPC・スマートフォンから予約状況が確認できるようになりました。
知り合いに会った際、ふと「そういえば●日空いてない?」と聞かれることがあるのですが、今ではスマホをチェックすればすぐ答えられます。非常に便利です。
個人的には、宿泊施設運営を検討している方は全員、PMSを導入すべきだと思います!
まとめ
この記事では、無人宿泊施設運営に関する基礎知識、自主運営と外部委託の比較、PMSを活用した効率的な運営方法について、実体験を元にご紹介しました。
自主運営はコストを抑えながら自由度の高い働き方ができるというメリットがあります。
一方で宿泊施設運営はお客様ありきの働き方になるため、自分の都合で休日を設定できないというデメリットもあります。
この課題については外部に委託することで解消される面が大きいので、自身のライフスタイルに合わせて委託する部分を見極めることが効率的な運営のコツです。
この記事が、無人の宿泊施設運営を考えている方のお役にたてば幸いです。