見出し画像

君にはコンプラを振りかざせない。

 「『品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する』といえば法子のりこさん、君は3つの格別な口を用いて行きそうな動きが旨くて、活き活き動くハムみたいな艷やかな開ききった脚をさらけ出し、透けた明るい色の下着で堅くなった僕自身を捧げ持ってくれるんだろう? しかも淫乱な性を二つも隠し持って」
「ダメ、もう……」

 再生が一時停止される。専務はごくりと唾を呑んで社長を仰ぎ見た。
たかし」社長は密室でしか呼ばない名で夫の名を呼ぶ。
「貴方、法子だけじゃなく、総務の律子、企画のじゅん子、営業二課の守君にまで同じように……」
 専務でもあり社長の夫、木島隆には昔から特殊な性癖があった。コンプライアンスの類を見るとつい欲情して、魅惑的な相手に迫ってしまうのだった。
「すまん、つい」
「貴方」社長が眼鏡を外す。「私に何か言う事は?」

 しかし専務は妻にだけはどうしても、その気が湧かなかったのだ。

「廊下は、走りません」
 小さな声でそう答えるのが精いっぱいだった。


(ルビ含めず410文字)

たらはかに(田原にか)さんの企画の裏お題でも、一作できました。
よろしくお願いします。
たらはかにさんの企画はこちら。

企画に乗って(乗せられて?)書いた自作置き場はこちらです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?