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戦場

 鋭利なチクワが、若い兵士の脇腹に深く突き刺さっていた。隊長は彼を抱き起し「大丈夫だ」と励ます。しかし隊長の身体にも、いくつも研ぎ澄まされたナルト巻が食い込んでいた。
「降伏せよ」
 機械的なアナウンスを繰り返し、無人飛行船が頭上を横切った。飛行船は巨大なおでん鍋の形をしていた。
「どうして」兵士は声を絞る。「どうして、タネどうしが争わねばならないんだ」
「ジャガイモ一等兵」隊長の牛スジは、目に涙を浮かべてようやく答えた。
「練り物たちが歩み寄らねば平和は来ない」
「ならばむしろ」ジャガイモがやっと起き上がる。
「こちらが歩み寄ればいいのでは、ないのでしょうか」
「おでんには……」牛スジが声を振り絞る。「練り物だけではないのだ」
 捕虜になった玉子が城壁から放り出され、無惨にも四散したのはまだ彼らには生々しい記憶だった。そして、スパイと疑われた餅巾着が銃殺されたあの日のことも……

「で、何かと入っとるんじゃ」
「じいちゃんのうそつき!」


(410文字)


周回遅れとなってしまいましたが、ようやくたらはかに(田原にか)さんの参加できました。元の企画記事が見当たらず、たぶん#鋭利なチクワ だったかと思いますが、一作載せました。
たらはかにさんの記事が見当たらなかったので代わりにこちら。

自身の、上記企画についのっちまったよウホホーってマガジンはこちら。

よろしくお願いします。
世界に愛を。おでんに平和を。

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