お大師さんの霊場にて

 私は呼ばれてるような気がして、お参りするお寺があります。元々は修験寺なのですが本尊が弘法大師さん。そのお寺は山の裾にありまして山中8キロ行程で八十八ヵ所のお遍路の修行場があります。
私は初代の師匠が亡くなりまして、どうしてよいかわからず途方に暮れた時期がありまして、誰に聞いたのか忘れましたが弘法大師霊場があって山中修行が出来るのを知って、このお寺へ行きました。確か真夏の暑い日にお寺で山中の地図をもらって巡礼開始。
心中はこれから先、どう生きていくか?どう修行しようかと悩み抜きながら1ヵ所づつ真言を唱えて行きました。山中は風が通らず、道もありますがぬかるんでたり坂があったりと悪戦苦闘。悩みながらでしたので、かなり苦しい時間でした。すると「こっちをみろ」と左側から声かけを受けた気がして左側を見ると山中に木もなく、開けた場所が見えました。すると黒装束の修行大師が立っていて「世の中はこんなに広いぞ!」と開けた土地を指差しています。私はハッとして、そうだ!悩んでと思考が狭くなるだけだ!世の中は広い!と感じました。その後はどのように山中の霊場をまわったのか、あまり覚えていません。お寺に帰って本尊の弘法大師に半べそかきながらお礼のお勤めをして帰りました。その後も悩みながらも先行きが開けてきて、今の師僧に拾ってもらって本山で修験得度までさせて頂きました。
お遍路では弘法大師に会うことがあるとは聞いていましたが、地方の霊場でもお大師さんに会うことが出来るとは思いもよらなかったです。それ以降も、この霊場で拝みまわったりしましたが、あの開けた土地を見つけることが出来ません。あれはお大師さんが見せた草原だったのかと思っています。

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