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時間

毎日、今目の前で笑って話す人を眩しく私は見る。今日もあなたは素敵だと、心の奥底でつぶやく。
素敵だよ、可愛いよ、といつも通り言うと、あなたは怒ってまたそんなこと言ってとあっちへ向いた。
私にとって言葉は重くて軽くある。あの子が死んでから、というより、私はずっと今目の前にいる人が死ぬことを毎日覚悟しながら生きていた。
そうすれば時間の流れは25時間になって、一時間分の感性の重さを24時間にくれるから。
風が遠く吹いている。
あなたの瞼が閉じて開く指先が不思議を握る服のたわみが照らされている。シワが波のように打つ。
もうずっとあなたが死ぬことを覚悟して生きている。
だから私は怒るなんてことはしないし、あなたに怒りなんて湧いたこともないのだ。
ずっと死ぬ直前だから、
悲しさと、切なさと、幸せで、貴方をめいいっぱい思い出せるように、あなたという空気を閉じ込める。

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