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「伊藤蘭コンサート」に行ってきました!

1月25日(土)、東京・有明にある東京ガーデンシアターに、伊藤蘭のコンサートを観に行ってきた。昨年から開催されている「Over The Moon」ツアーのファイナル公演だ。
 
このコンサートの内容を紹介する前に、私がなぜ「伊藤蘭推し」になったかを記しておこう。

なぜ私は「伊藤蘭推し」になったのか

キャンディーズのメンバーだった伊藤蘭は、解散後一度も歌手として活動することはなかった。だが、2019年、40年ぶりにアルバム「My Bouquet」を出してソロ歌手としての活動を開始した。正直なところ、キャンディーズ全盛期にはまだ中学生か高校生だった私は、世間並みにヒット曲の数々は耳にしていたし、「3人のうち誰が好み?」などと友達同士で話してはいたものの、特に熱烈なファンというわけではなかった。それでも「あの蘭ちゃんが!?」という驚きと興味から、このアルバムを購入して聴いてみた。
 
すると、これが実に良いアルバムだったのである。キャンディーズ時代を彷彿させる曲もあれば、全くの新境地を感じさせる曲もあった。楽曲がいいのはもちろん、蘭ちゃんのボーカルも少しもブランクを感じさせない伸びやかなものだった。日本のポップミュージックの中でも、かなりレベルの高いアルバムだと思った。何よりもこのアルバムを通じて、蘭ちゃんが歌うことを心から楽しんでいるのがよくわかったのである。
 
アルバム発売と相前後して、伊藤蘭はコンサートを開くことを発表した。場所は東京ドームシティーホール。これは、キャンディーズ解散コンサートの開催場所が後楽園球場だったことを踏まえて選ばれた会場らしかった。マスコミ等でも報じられて、けっこう話題のコンサートだったが、私はわざわざ会場に足を運ぼうとは思っていなかった。確かにアルバムは素晴らしかったが、コンサートも素晴らしいものになるとは限らない。何しろ40年ぶりに人前で歌うのだ。痛い懐メロ大会にならないとも限らない。
 
だが、何の拍子か、コンサートの数日前にまだ残席があることを知った。コンサート初日の2019年6月11日(火)は、特に予定もなかった。そこで、前日にチケットを予約して会場に出かけてみた。はたして、どんなコンサートになるのやら。落胆することも十分に覚悟して臨んだ。ところが、これがまあ予想以上に素晴らしかったのである。痛い懐メロ大会どころではない。40年のブランクなどどこ吹く風、そこには現役バリバリのソロ歌手、伊藤蘭が存在していたのだ。キャンディーズの曲も何曲か歌ったが、ちっとも違和感がなかった。
 
そして、この日から私の「伊藤蘭推し」が始まった。

初めてアイドルの推しになったのだ!

伊藤蘭はその後も精力的に活動を続けた。発売されたアルバム、シングルはすべて購入し、ほぼ毎年開催されるコンサートツアーにも毎回足を運んだ。新宿文化センター、中野サンプラザ、ライン・キューブ渋谷(渋谷公会堂)、Zeep DiverCity、東京ドームシティーホール・・・。コロナの時期に延期されたコンサートもあったが、東京近郊のほとんどの会場に出かけた。会場でグッズも購入した。コンサートの模様を収録したDVD、Blu-rayもすべて購入した。
 
一昨年はキャンディーズのデビュー50周年を記念したツアーが行われたが、KAAT神奈川芸術劇場、東京国際フォーラム、日比谷野外音楽堂と3回も参戦し、去年は東京国際フォーラム公演のBlu-ray/DVD化を記念したEX THEATER ROPPONGIでのスペシャルライブに参加した。そこでは伝説の紙テープ応援も体験した。
 
これまで私は、洋楽、邦楽問わずお気に入りのアーティストはいたし、そのアーティストのコンサートに通ったり、アルバムを購入したことはあった。その中でも、最も敬愛したアーティストはPANTA(頭脳警察)だった。確か20代後半か30代だったと思うが、初めて彼の音楽を聴いて以来30年近く彼を追いかけてきた。だが、いわゆるアイドルのファンになることはなかった。そんな私がずいぶん遅れて、伊藤蘭という永遠のアイドルの推しになったのだ!
 
ちなみに、敬愛するPANTAは2023年に亡くなってしまった。彼の音楽は残るが、もうコンサートに足を運ぶことはできない。そのぽっかり空いた心の隙間を伊藤蘭が埋めてくれていると言っても過言ではない。
 
伊藤蘭は2024年の8月から「〜Over the Moon〜 コンサートツアー 2024-2025」として、全国9都市での公演を敢行。私は大宮公演と東京公演に参戦することにした。本当は名古屋、大阪、京都あたりにも行きたいと思っていたのだが、スケジュールが合わなかったり、体調が悪かったりで断念したのだった。
 
というわけで、冒頭に戻って東京ガーデンシアターでのファイナル公演である(ようやくです。すいません)。

現在進行形の伊藤蘭を象徴する曲たち

りんかい線の有明駅にほど近い有明ガーデンシアター。巨大ショッピングモールの一角にあるイベント会場で、まだオープンしてからそうは経っていない。会場に着いてみると、すでにグッズの先行販売に長い列ができていた。そこに並んでグッズを購入。しかし、お目当てのサイン入り新ポスターはすでに売り切れ。スウェットのLも売り切れということで、仕方なくXLとTシャツ2枚を購入。計1万3000円。前回の大宮公演でパンフレット等はすでに購入済みだ。
 
開場まで40分ほど。周囲をぶらぶらして、ベンチに腰を掛けて時間を過ごす。ちょうど読みかけの文庫本があったので助かった。そしていよいよ会場の午後4時少し前に入場者の長い列に並んで、会場内に入る。私の席はアリーナ席。といっても、ステージに向かって左の端の方で、とても良席とは言い難い。しかし、そんなことは関係ないのだ。開演までペンライトの準備をして、紙テープの芯を抜き(当たると痛いから)、準備万端でその時を待つ。それにしても大きな会場だなぁ。アリーナ席の他にバルコニー席が4階まである。伊藤蘭のコンサート会場でも最大級ではないだろうか。
 
そして、午後5時を少し回ったところでバンドメンバーが登場。音楽監督の佐藤準(Key)をはじめ、是永巧一(G)、笹井BJ克彦(B)、そうる透(Dr)、notch(Per)、竹野昌邦(Sax)、渡部沙智子(Cho)、高柳千野(Cho)という錚々たるメンバー。彼らがまずはロック調のインストルメンタルを演奏する。そこに伊藤蘭が現れ、最初の曲、激しいロックナンバー「ICE ON FIRE」をシャウト。会場からは「ランちゃん!」の大声援。そしておびただしいペンライトの波。もちろん色は蘭ちゃんカラーの「赤」。私もペンライトを振る。こんな経験は伊藤蘭のコンサートが初めてだ。
 
続く「恋するリボルバー」もロック調のナンバー。観客に向けた指ピストルが決まっている!3曲目のポップなナンバー「なみだ媚薬」のあとはMC。「ツアータイトルのように『月を越える』ほどの楽しい時間にしましょう」という伊藤蘭の言葉にまたまた大歓声が。
 
そして早くもキャンディーズナンバーの登場だ。吉田拓郎作曲の「アン・ドゥ・トロワ」「やさしい悪魔」「銀河系まで飛んで行け!」の3曲。といっても「アン・ドゥ・トロワ」「やさしい悪魔」は「〝味変〟でお届けします」と蘭ちゃんが言ったように、ロック調にアレンジして楽曲の新たな魅力を引き出している。
 
ここで蘭ちゃんはステージ上で着替えて、黒を基調とした衣装からシルバーのドレスに。曲は、最新アルバム「LEVEL 9.9」の収録曲で自身が作詞した「FUNK不肖の息子」、そしてノリノリの楽曲「明日はもっといい日」、シティポップの「Shibuya Sta. Drivin' Night」。さらに、最新シングルのタイトル曲「風にのって~Over the Moon」とそのカップリング曲「大人は泣かない」を続けてパフォーマンス。これらは、現在進行形の伊藤蘭を象徴する曲たちだ。

怒涛のキャンディーズナンバー

さて、ここで15分間の休憩。何しろ観客は最初から立ち通しだ。椅子などあってないようなものだ。この調子でいくと倒れる者もいるかもしれない。何しろ年齢層が高いので(笑)。休憩をはさむのは蘭ちゃんの気遣いだろう。
 
そして再開した後半戦は、キャンディーズ時代の楽曲のみで構成。最初にバンドがキャンディーズのテーマ曲「SUPER CANDIES」を演奏。ボーカルはいつものように是永巧一。会場全体が「C・A・N・D・I・E・S スーパー・スーパー・スーパーキャンディーズ」と叫ぶ中、自身のカラーである真紅のドレスをまとって伊藤蘭が登場。2人のコーラスとともに「危ない土曜日」「その気にさせないで」「わな」とおなじみのキャンディーズの曲を歌う。
 
ちなみに「わな」はミキ(藤村美樹)ちゃんがセンターを務めた曲。「ミキさんの面影を密かに重ねながら歌ってみました」「1人は寂しいけれど、微力ながら明日につなげていけたら」と語っていたのが印象的だった。
 
その後も、「ハートのエースが出てこない」「年下の男の子」「暑中お見舞い申し上げます」とヒット曲の連打。はるか昔の曲なのに歌も踊りも違和感は全くない。アップテンポの「春一番」も当時とほぼ同じ振り付けで歌いこなす。
 
「哀愁のシンフォニー」で紙テープ投げ入れ
 
そして、ついにやって来ました「哀愁のシンフォニー」。この日、唯一、紙テープ応援が許された曲だ。イントロが始まると同時に乱れ飛ぶ赤、青、黄の紙テープ。特に「こっちを向いて~」のところでは、一斉にものすごい数のテープが宙を舞う。紙テープの演出は去年5月のEX THEATER ROPPONGI公演でも行われたが、なにせ今回は約5,500人という大観衆。その時とは比べ物にならない半端ない数の紙テープだった。
 
もちろん私も4本の紙テープを投げたのだが、あれは日頃から練習しておかないと、なかなかうまく投げられないものだ。なのでコントロールは不安定だったが、どうにか投げ切ったのであった。
 
「哀愁のシンフォニー」が終わったところで、スタッフがステージ上の紙テープを片付ける。蘭ちゃんは「肩、大丈夫ですか?」とファンを気遣いながら「美しかった」と口にした。
 
そして、本編最後の曲はキャンディーズのラストシングル「微笑みがえし」。歌詞中には「春一番」「わな」「アン・ドゥ・トロワ」「やさしい悪魔」など、シングル曲のタイトルが随所に入れられている曲だ。ファンにとっても思い出がたくさん詰まった、ラストにふさわしい曲ではないだろうか。歌い終わった伊藤蘭は大声援を受けながらいったんステージから降りた。
 
先ほど良席とは言い難いと書いたが、実際にコンサートが始まってみるとそうでもなかった。蘭ちゃんはステージの左右でも随時歌ってくれるし、直線距離にすれば比較的近かったので表情もよく見えたのだ。

アンコールで趣里登場!
 
再び伊藤蘭がターコイズブルーのドレスで登場してアンコール。このところのコンサートで定番になっている「美しき日々」だ。「誰もが今日よりも明日 美しくなるため生まれた 心が呼ぶ方へ歩き出そう ときめきを集めて」で始まるポジティブな曲。歌に合わせてペンライトが左右に大きく振られ、ステージと客席が一体になる。
 
その後、蘭ちゃんは1月13日に誕生日を迎えたことを報告。「私は年甲斐もなく、年相応に、という言葉の両方が好き。でも、音楽に関しては年甲斐もなくにしようかな」「これからも自然に、自由な感じで音楽に携わっていきたいと思います」と歌手としての決意を表明。続いて、「プライベートでは家族の存在に支えられています。ツアーのファイナルということで……」と呼び込んだのが、娘であり、俳優として活躍する趣里だ。このサプライズはほとんどの人が知らなかったようで、会場からは驚きの声と大歓声が湧きあがった。もちろん私もビックリ仰天だった。
 
真紅のミニスカートにジージャン姿の趣里は、母とハグを交わしたあとで「買物ブギー」「ラッパと娘」を熱唱。言わずと知れた自身が主演の福来スズ子を演じたNHK連続小説「ブギウギ」の劇中曲だ。「ラッパと娘」では二宮孝裕のトランペットも加わった。本格的なステージで歌うのは趣里にとって初めてのことだったろうに、とてもそうは思えない堂々たる歌声。観客の盛り上がりも大変なものだった。
 
曲の合間に趣里は、「偉大な父と母なので、私ももっともっとがんばろうと思って、なかなかタイミングがなくてこの日になってしまった」と初共演の経緯を披露。一昨年の紅白歌合戦で親娘共演が実現するのではないか……という期待が膨らんだものの、それは実現せず。それでも以前のコンサートで、伊藤蘭が「いつか福来スズ子ちゃんも来てくれたら……」と口にしていたので、どこかで実現するはずと思っていたら、まさにこのタイミングで!いやぁ~、これはうれしい。伊藤蘭のステージだけでも大満足なのに、娘の趣里の歌まで聴けるとは。まさに盆と正月が一緒に来たみたい。ついでに趣里は「以前週刊誌に不仲なんて記事も出ましたが、あれは嘘ですから!」と笑い飛ばしていた。
 
娘の歌が終わったところで伊藤蘭が再登場。「こんな機会はないので、最後は趣里も一緒に」と、奥田民生とトータス松本による楽曲「春になったら」を趣里と手をつないでデュエット。これぞ本当の親娘共演だ。桜の花びら(というよりハート型?)の形をした紙吹雪が舞う中、素晴らしいコンサートの幕が閉じた。
 
それにしても、約2時間、歌って踊る伊藤蘭はすごい。これで70歳とは信じられない。私同様に多くのファンが彼女から元気をもらっているに違いない。
 
厚着をしていったのに、途中からはTシャツ1枚で過ごした私。さすがに会場から外に出るとTシャツ1枚とはいかなかったが、それでも体も心もぽかぽかと温かいまま、りんかい線に乗り込んだのであった。
 

 

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