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サンゴの産卵を観た話

2021年4月29日のこと。沖縄に住んでから一ヶ月経った頃に、ナイトダイビングでサンゴの産卵を観ました。5月〜8月の満月の夜、大潮の頃に一斉に行われるというもの。大潮であるということだけではなく、波の具合、水温など諸々の条件があるようで、そのタイミングはサンゴたち次第なのだそうです。

10代の頃からダイビングを始めて、サンゴの産卵をみることに興味がなかったというと嘘になるけれど、身近な場所にサンゴの生息する海がなかったので、この一大イベントに合わせて旅行の計画を立てねばならないと思うと正直なところそこまでの気持ちはありませんでした。

なんとなくタイミングがあって今回サンゴの産卵に遭遇することができましたので、その時の話を記していきます。

沖縄にやってきて初めて利用したダイビングショップで、大潮でサンゴの一斉産卵が予想される4月26日から29日までの4日間連続で、ナイトダイビングの計画があると聞き、その中でもお仕事の都合で参加ができたのが29日でした。

その日は夕方から雨が降り、根拠はないけれどなんとなく期待をしていませんでした。何度も挑戦しても観られなかったという話をよく聞くサンゴの産卵ですし。

ショップに到着し、支度をしてわたしを含めて4人ほどのお客さんとガイドさんとで近くのビーチからそれほど遠くないポイントまで船で向かいました。その日の日没は19:12。エントリーを開始したのが、19:44。あたりは真っ暗な状態です。

ナイトダイビングは暗くて怖くないかとよく聞かれますが、わたしはライトの光さえあれば、昼間のダイビングと変わらないと思っています。安全のため、グループからはぐれた場合も考えて、ひとり一つのライトを持って潜りますが、誰かひとりだけの灯りでも海の中は十分明るく感じます。ナイトダイビングでわたしが怖いのは「ダツ」というサヨリ科の魚。水面近くを泳いでいて光に突進してくる習性を持っています。このダツの口先は針のように鋭く尖っており、うっかり顔のあたりをライトで照らしていると顔に突進してきて運が悪ければ目に刺さることもあるのだとか。そのことを考えると暗い方がまし!と思ってしまいます。そのため、水面から潜っていく時、潜り終わって上がる時は、必ずライトはOFF!これが、真っ暗でも怖くない理由です。

…と、話が逸れてしまいましたが、今回のサンゴの産卵ナイトダイビングに話を戻します。ライトを付けずに潜降していき、水底でライトをパッと付けるとそこら中にピンクの粒が浮かんでいました。

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コーラルピンクというのでしょうか。とても鮮やかなピンク色。直径数mmくらい(水中だと物が少し大きく見えます、4/3倍くらい…)の球体で肉眼ですぐわかるくらいの大きさです。

もうすでにサンゴの産卵が始まっていたのです!心の準備もなく!あたり一面にピンクの球体が浮かんでいました。それをライトで照らして見ていると、真っ暗な空に惑星が浮かんでいるように見え、宇宙に居るような錯覚を覚えました。ふりかえってみると、潜ってすぐのこの時が産卵のピークだったかもしれません。

ちょっと近くで見てみましょう。

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枝サンゴの表面から粘液が出ています。どこから卵が出てくるのか気になるところです。もっと近くでよーく見てみましょう。

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矢印が足りないくらいですが、トゲのようなデコボコの近くにピンクの球が顔をのぞかせています。眺めているとゆっくりゆっくり穴から出ていき、静かに海の中へ飛び出していきました。さて、この場所、普段は餌をとるための口というか手というのか、ポリプというイソギンチャクのような部分が出てくるところです。

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このポリプの口から卵が出てきていたようです。この写真は卵を放った後に、ポリプが見えた状態といったところでしょうか。

40分ほど夜の海を散歩して海から上がりました。今回一緒に潜った方々は初対面でしたが、わたしを含め皆さん初めてサンゴの産卵を観たそうです。後片付けをして、帰宅するまでのちょっとした時間にお茶をしてこの日に観たサンゴの産卵について話に花が咲きました。

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日音もす|イラストレーター
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