彼誰時

どういうひとかも知らないのに
どこにいるかも分からないのに
その誰かがとてつもなく遠くに
離れて行ってしまったみたいな
そんな気がなぜか湧き上がって

急にさみしさが襲ってきた

どうやらいろんな感情の中でも
わたしは喪失が特に苦手らしい

あなたはかなたとおくに
あなたははるかとおくに

知らなければ失いもしないのに

いないと知ったらさみしくなってしまうから
いること自体をそもそも知らずにいられたら
こんなにさみしくなんてならずに済んだのに

それでもあの季節の夕暮れに
たぶん離れることを彼自身は
知っていたであろうあのとき
わたしの背中をきっとずっと
見ていた彼にも感傷のような
何かしらがあったのだろうか

どこにいるのかなんてこと
今は知りたくないなと思う
あのときと同じ席で夕暮れ
後ろにあなたのいない今は