『漫画ネームで手が止まってしまう』回答
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私たちの漫画を楽しく読んでいるとのこと、とても嬉しいです。
ご質問の内容は、
①ネーム作業に取り掛かる際に何を考えているか
②何も描けない現状を突破するには
私なりに回答させていただきますね。
②の答えがメインになると思うので、①はさっくりいきます。
ネーム作業の最初で考えているのは
「面白いのが書けると良いなぁ〜かけますように〜」
です。
ふざけてないです。
ネーム作業に入る前は、プロット以上に面白くなるように祈るくらいしかできないのです。
私はプロット(お話作り)を理論的な辻褄を合わせる作業。
ネームを直感、センスに任せる作業と捉えて行なってます。
ネーム時にプロットから外れて演出や構成を変えることも多いです。
「分からない」「つまらない」と直感的に思ったら、その場でストーリーを捻じ曲げることもあります。
だからネームはすごく疲れます。頭フル回転です。
なので質問者さんがペンと紙を目の前にして何も書けない
という状況もすごく理解できます。
②では少しでも質問者さんが現状打破できる方法を考えてみますね!
②
ということでネームです!
質問者さんの文章に熱意と本気を感じたので、私もできるだけ同等のものを返せたらと思います。
この回答、火鳥なりの考えだと前置きしてから言いたいのですが、
私は「もっと皆、ネームが難しいって自覚した方がいい」と思っています。
ハードルを上げたいんじゃないんです。
要素が詰まりすぎなんですよ、ネームって。
私はネームの前にログライン、プロットなど、前述したようにストーリーは事前に書いておきます。
それはネームの段階でお話を作るのは技術的にまだ無理! だからです。
中にはネームとお話作りをまとめて行なっている方もいます。
いますが、それは漫画を描き慣れてるからできる芸等です。
漫画的な演出や絵作りなどは、もう感覚的にできるから、ストーリー作りに脳の容量を割けるんじゃないのかなぁ。
質問者さんが現状「紙を目の前にして手が止まる」のだとしたら、ご自身のキャパシティーを超えた作業をしようとしているのかもしれません。
ただ、これを能力不足とか、そういう悪い意味には取らないでいただきたいです。
初めてで、プロでも難しいとされる工程(ネームが一番辛いという漫画家さんは多いです)、さらさら描ける方が稀ですよ。
なので、ネーム作業を簡単にする方法を二つ考えてみました。
【A】分けられる作業は分けましょう
【B】どんどんハードルを下げましょう
それぞれ解説していきます。
【A】分けられる作業は分けましょう
先ほど「ネームは難しい」と言いましたが、その原因はネームに含まれる要素がめちゃくちゃ多いからです。
もし、ゼロの状態からネームに取り掛かろうとするならば、
・お話作り
・キャラクター作り
・キャラデザ
・ストーリー構成
・コマ割り
・視線誘導
・コマごとの絵作り
・めくりの引き
・演出
・見せ場作り
などなどなど
つまり下絵とペン入れといった作画以外、漫画の全ての要素を一度に考え、生み出さなければならなくなります。
普通に難しいですよ。
描きたいジャンルによって難易度は変わりますが、いわゆるストーリー漫画を描こうとするならば、一個一個の項目のハードルも高くなります。
手が止まるのは、何から手をつけたらいいか分からない部分にも原因があるのではないでしょうか。
例えば、【お話作り】、【キャラクター】、【一番見せたい場面のラフ】や、お話の設計図としての【時系列】、【驚きのポイント】、【テーマ】などを事前にまとめておく。
そういったものを資料にして、ネームを作っていく。
もしくは本番のネームの前に、もっと簡単に描けるざっくりとしたネームを作る(ミニネームと呼ばれたりします)。
ネームに取り掛かる前の、いわゆる【事前準備】【企画書】的なものを作っていくのはいかがでしょうか。
その下準備が、作業の単純化、簡易化につながってくると思います。
【B】どんどんハードルを下げましょう
最後の項目になりましたが、私が質問者さんにお伝えしたかった一番の内容はここです。
下げましょう!ハードルを。
漫画の一番の上達方は、漫画を描くことです。
あまり作品へのハードルが高いと、挑戦すること自体が怖くなってしまいませんか?
それはちょっと勿体ないです!
自分の手で、自分の楽しいと思うものを形にできる漫画づくりは面白い作業ですよ。
でも、ここで一番問題になるのは「何を書いたらいいか分からない」という部分にあるのかもしれません。
漫画を描く際の最初のハードルは「漫画にするストーリーが思い浮かばない」だと思うのです。
オススメの方法はいくつかあります。
【い】エッセイ漫画(自分の日常)を描く
【ろ】短く、単純な話を描く
【は】映画を漫画化してみる(練習用に)
それぞれ解説していきます。
【い】エッセイ漫画(自分の日常)を描く
有名な小説家が、「何を書けばいいか」と尋ねられた際、「自分が知っていることについて書きなさい」と答えたとどこかで知りました。
自分の日々のできごとや面白かったこと、旅に出かけたことや出会いなど、個人的な体験はあなた自身がこの世で一番詳しい事柄の一つだと思います。
コマ割りや絵柄なども読みやすさ重視のジャンルなので、漫画の練習にはもってこいなのではないでしょうか。
(もちろんリアルめに書いても全く問題ありません)
1pや4pなど、短いページ数で始められるのもオススメする理由です。
【ろ】短く、単純な話を描く
最初から大長編ファンタジーにチャレンジしてもいいんです。
でも、もし手が止まり、これ以上前に進めないと感じるなら、簡単なお話を一度書いてみてはいかがでしょうか?
一生に何作品まで、と決まりがあるわけではありません。
どんどん書いちゃいましょう!
私の始めてのオリジナルストーリー漫画も12pほどのショートでした。
単純な話というのは、『誰がどうなってどうした』というのが基本型です。
例) 桃から生まれた桃太郎が、鬼を退治して、故郷にお宝を持ち帰る話
例) 継母に虐められている美しい少女が、魔法でお城の舞踏会に出席し、王子に見初められる話
おとぎ話は基本型が多いですが、このオチの部分に捻りをきかしてパロディーとして描くという方法もあります。
【は】映画を漫画化してみる(練習として)
※(練習として)と書いたのは、それをそのまま賞などに投稿するとパクリになるからです。
過去に既存の小説の内容で漫画賞を獲得し、問題になった事例も知っているので……
個人の練習として漫画化して、知人などに読んでもらう分には問題ありません。
これは上にあげた二つと比べるとかなりハードルは上がります。
映画は基本長編なので、ネーム化には早くて1週間はかかると思います。
でも、ストーリー漫画を書きたい方には一番オススメする方法でもあります。
描くべきストーリーは決まっていますし、絵作りに困ったときは映画を見直せばヒントが転がっているので、非常に力のつく練習方法です。
(映画の俳優さんを模写すれば画力や構図の勉強にもなるので一石二鳥ですね)
⭐︎
以上が今の私が考えつく、ネームに取り掛かるときに手が止まる現状を打破する方法です。
色々書きましたが、私もネームを書き始めたばかりの立場。分からないことだらけです。
でも10万円以上する液タブを買ったとのことなので、できればこれから沢山の作品を生み出してほしいな、と思い、書き連ねました。
激励の言葉を発しづらい世の中ではありますが、あえて頑張ってくださいと言わせてくださいね。
漫画、考えることも、必要なスキルも、それなりに必要な業種だと思います。
でも出来上がったものが残っていく、素敵なお仕事だと思ってます。
私も頑張ります。
(疲れたときは一生懸命に休みましょうね)
応援しています。
2025年2月5日
火鳥