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道迷いを防いで山を楽しむ
「山の遭難」は最近報道などでも取り上げられる機会が増えたこともあり耳にした方や関心がある方も多いのではないでしょうか。
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今年は少し減少したとはいえ、年々件数も上昇傾向にあり、総数も800人前後と決して少ないとは言えません。遭難者数の80%以上は登山スタイルの方ということです。レジャーで山を楽しみに行って遭難…なんて笑えないですよね。
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様々な要因があり緩やかに減少傾向にあるようですが、遭難構成比率で道迷いも多くの割合を占めています。そこで今回は「道迷い遭難」予防のためにできることを考えてみましょう。
道迷い予防のためにできることー事前の準備
1)計画と情報収集
「準備8割」とはよく言いますが、山の場合は特にそれが言えそうです。道迷いの理由には「たぶん、大丈夫」や「想定になかった道の出現」、「この先に何があるか分からない(見通しが立たない)」「どこまで進んだらいよいよヤバいか分からない」などが背景にあるようです。これらの多くは事前の準備である程度カバーできます。
例えば地図をよく見ることで、多少のトレーニングは必要な場合もありますが、歩く予定のルートがどのようになっているかを見通すことができます。
・分岐が何か所あって
・道が登りなのか下りなのか
・どちら方面に下るのか。(登山道の看板は様々な地名や方面で書かれているので、全体像をつかんでくのは有益)
・進行上目印になる物の位置関係 などなど…
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最近は便利なもので、インターネットでもたくさんの情報が出ています。行きたい山の名前をたたけば、これでもかというくらい情報が出ているので直近に出かけた人の情報や道の様子を写真でとらえることもできそうです。
しかし、ネット情報は「主観的なもの」が多いため、コースタイムや”感想”(余裕だった、大変だったなど)については参考にならないことも多いです。客観的な事実だけを情報として使うには有益です。
特に迷いやすいところや地形は、同様のハプニングに見舞われている人のストーリーが良くネット情報では拾えます。事前の心構えとしてはありがたいですね。
GPSを用いた地図アプリも便利です。使い方は練習する必要がありますが、登山地図や地形図とGPSを重ねてまるでカーナビのように現在地を指名してくれる便利な道具もあります。無料で使えるものもあるのでお守り的に用意しておくのはいいことです。(予備電池や事前に地図を入れておくなどの段取りを忘れずに!)
2)登山中に意識を張る
せっかく楽しい登山に来ているのにずっと気を張っているのは逆に疲れちゃいますね。一方、登山道上には落とし穴になりそうな「道迷いの誘い口」がいくつも待っている場合があります。
まずは目の前の道だけではなく、広い視野を確保しながら歩くようにしましょう。特に疲れてくると足先の道しか見なくなってしまいそのまま誤った道に引き込まれることも少なくないようです。
上の映像ですが、分岐点のようなところから2つの道のようなものが見えたかと思います。右側、左側いずれもピンクテープが張っています。みなさんはこのシーン、どのように感じますか?
①右側は登山道、左側は道ではない
②左側は登山道、右側は道ではない
③両方とも登山道
…じつはここ、正解は②です。右側は登山道のようにも見えるかもしれませんし、ピンクテープもありますが、登山道ではないのです。実はこの手前に道標もあるのですが、しかしこのビデオの出発点から下だけを見て歩いているとまっすぐ「誤った道」にも引き込まれそうになりませんか?
道迷いはちょっとしたキッカケの何気ない一歩が始まりだったりします。
・急に開けたところ
・同じような景色が広がっているところ
・予定してないところに出てきた道
・道が分かれているところ
では、特に注意深く観察しましょう。地図などで方向を確認するのも役立ちます。必ずしも分からない場合もありますが、注意深く観察しておけば、ソローリソローリと進んだ先に「違った!」となってもどこまで戻ればいいかが明瞭でリカバリーが効きます。遭難の多くは、どこまで戻るかも明確じゃない、どこから間違えたか分からないまま突き進むことが悲しい結果を生んでいるわけです。
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しかし正規のルートはこの倒木がある側なのです。
注意深い観察や地図・アプリとの同定をしないと、雰囲気で歩くと逆側に吸い込まれるポイント。
③やっちまった! と思ったら…
そうなりたくはないものの、道に迷ってしまうこともあるかもしれません。対応の王道は、「来た道を、分かるところまで戻る」ことです。そんなのは多くの人が分かってます。しかし、できないのです。
戻るのは勇気がいる行動です。早く帰りたいし、きっとその先にも道があるだろうし、時間をロスしたくないから…。
「急がば回れ」とはいい言葉で、おそらく戻るのが結果一番時間を短く安心する場所に帰れることになるでしょう。
いよいよ分からん…となったら、早めに救助を要請することです。電波が入るならGPSの座標などを伝えてあげるのはナイスアイディア。特に里山は尾根に名前もついてなく、周りの景色も変わらないことが多いですから特徴を伝えるのにも苦労します。最近はGPSでとらえられる捜索サービスなどもありますね。ソロで登山に入るひとにはお勧めです。
多くの道迷いでは沢筋に降りたくなります。しかし禁物です。山の場合、山頂は1か所ですが沢筋は枝葉のように広がり、日本の山は急峻なところが多いので行き詰ってしまうことも多々あるからです。大体電波も入りにくいし…。。
まとめー山を楽しく遊ぶために。
こうして読んでいくと「怖いからやーめた!」となりがちですが、山は出かけた人にしか味わえない価値が盛りだくさんです。怖い思いをできるだけしないためにも、事前の準備や現場での適度な警戒感をもって無事にいい山旅を楽しみましょう♪
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ひの自然学校リスクマネジャー 寺田まめた