遊びが育む、子どもたちのチカラ
みなさんが遊びと聞くと、どんな場面が想像されますか?
・子どもたちがみんなで1つの遊びをしている場面
・大人たちの指示によって決められた遊びをしている場面
・近所の広場などで子どもたちが自由に遊んでいる場面
きっと様々な場面が想像されたと思います。
上記すべて「遊び」という言葉にくくられるものですが、どうやら遊びの仕方によって育つ能力が変わってくるようです。
今回は、いくつか面白いトピックを見つけたので、みなさんと共有していきたいと思います。
前提として・・・
遊びが身体づくりにもなる!
詳しくは過去の記事に譲りますが、『遊びを中心とする身体活動を十分に行うことは、多様な動きを身に付けるだけでなく、心肺機能や骨形成にも寄与するなど、生涯にわたって健康を維持したり、何事にも 積極的に取り組む意欲を育んだりするなど、豊かな人生を送るための基盤づくりとなる』そうです。(H24 年文部科学省幼児期運動指針策定委員会より)
みんなが大好きな遊びには大きな価値があることは間違えなさそうです。
自然の中での遊びは多様は動きや感覚の獲得に繋がる
少し考えてみれば当たり前かもしれませんが、自然の中で遊ぶことは多様な動きの獲得に繋がります。現場にいる私たちは日々そのことを実感していますが、どうやらそのことは事実のようで、日立製作所名誉フェローであり、OECD 「学習科学と脳研究」 国際諮問委員や文部科学省科学技術振興事業団の「科学と教育」 領域総括などを歴任された小泉英明氏と元独立行政法人国立青少年教育振興機構理事の鈴木みゆき氏の対談の中にも同様の記載が・・・!
引用元は最後にも記載してありますので、よかったらぜひ原文にもアクセスしていただければと思いますが、対談を簡単にまとめるとこのようなことが言われていました。
まとめると、大人など一緒に遊んでくれる人と一緒に、遊び方の制限されていない自然の中に身を置き遊ぶことによって、運動能力の向上だけでなく、様々な感覚を育むことができるということです。
ひの自然学校の事例で考えてみると・・・
上記で言われていることと普段の活動を振り返ってみると、「たしかにな」と思う場面がいくつかあったので合わせて紹介していきます。
→ばサッカーやバスケットボールなどそれぞれの種目にあたる前の投げる・蹴るなどの動きが遊びながら獲得されているように思います。
例えば森のようちえんでは、松ぼっくりを投げたり、石を投げたり、どんぐりを投げたり、ロープを投げたり。質感や形状、重さが異なるものを扱い、自分が思ったことを実現していく過程の中で運動要素が獲得されていっていると考えられます。事実、投げることに興味を持ち出した子どもは同じような動作を好み繰り返すことによって動きが洗練されていっています。
また小学生になってから取り組む、カヌーやシャワークライミングなどでは、単一の動きが多いながらも日常的にあまり行わない動作の連続のため子どもたちの感覚を刺激するものとなっているのではないでしょうか。
→こちらはアウトドアの強みそのもの!海・山・川様々なフィールドならではの良さを自分の肌で感じるそのものに重要な価値がある気がします。
土の感覚や雨が地面にあたる音、葉っぱの触覚。太陽の温かさ。木にたわわになった木の実や甘い花の蜜。霜柱を踏む感覚や地面に張った氷をすべる体験、すべてが聴覚を刺激してくれます。また聴覚だけではなく視覚・嗅覚・味覚・触覚、五感を刺激してくれるのは自然の中ならではです。
→今日における首都圏の自然は整備されているものが多すぎます。大人が意味を持って決めた空間で指定されたことしかできないようでは、子どもたちの創造性をすり減らしていってしまっていることも容易に想像できます。ルールに縛られず何をしても大丈夫と保障された空間の中で遊ぶこと自体を探しにいかないといけない時代なのかもしれません。
→子どもたちは大人が思う以上に、私たちの言動や様子をよく見ています。例えば、洋服を汚して家に帰ってきたとき、「こんなに汚して・・・」と暗く放つ一言に子どもたちは汚さないように遊ぶという目標の中でしか遊べなくなってしまったりします。一緒になって遊ぶというのも時間的にも場所的にもなかなか難しいですが、場所や時間を決めてめいいっぱい遊んでみることがお互いにとって思い出に残るものになると思います。
近所で達成できるものや旅行先のアクティビティなどで体験できることもあると思います。幼少期に様々な場所や環境に触れてもらうことと大人のちょっとした工夫により、子どもたちの多様な動きや感覚を育むことができるようです。
ではここからは少し視点を変えて、大人の指示のもの行う遊びよりも自由遊びのほうが運動能力は向上するかもしれないというお話です。
自由遊びは可能性に満ち溢れている!?
前提条件として、子どもたちの性格や住環境ということがあるかと思いますが、こんな面白い論文を見つけました。
題名は、「幼稚園における健康・体力づくりの意識と運動指導の実態」。内容としては、「保育の一環として運動を多く取り入れているよりも、まったく行なっていない園の運動能力が高く、一斉保育中心の園が自由保育中心の に比べて保育に運動を多く取り入れているものの、自由保育中心のの方が運動能力は高かった。」というような内容です。
要は保育中にみんなで行う体操の時間や体育の時間がある園よりも、特にそのような時間を設けずに自由に遊んでいた園のほうが運動能力が高かったというような内容です。
こちらは抽出による比較調査のため運動に特化した園などではないと思われますが、衝撃的な内容ですよね。
運動発達を支えている直接的で主な要因は、運動体験の経験の量と質であります。一斉指導の中で行われている運動には実は、整列や説明や待ち時間など自分が実際に身体を動かす時間が少ないということが原因として挙げれていました。
が、メリットの裏にはデメリットもあるものです。
自由遊びにもデメリットはあります。
それは、子どもの主体性に任せられるため運動量が多い子と少ない子の差が大きくなるということです。例えば、おままごとが好きな子どもはずっとおままごとをし続け運動量が担保されないということ。
ここまで読んでいただいたみなさんは、我が子には指定された遊びや運動が多い日常と自由遊びが多い日常とどちらの方がよいだろう・・?と想いを馳せている頃かなと思います。
こどもの育ちは多種多様。それぞれのお子さんにあった機会の提供が大切だと思いますが、それぞれのメリットデメリット知って場面に応じて使い分けられるととっても良いのではないかと感じました。
そして遊びを構成する最大のポイントは、1人遊びには限界があるということ。
遊びに大切なのは時間・空間・仲間
保育・教育の世界では「三間」とも呼ばれていますが、この「時間・空間・仲間」は核家族化と都市化が進んだ現在、すべてをそろえるのは難しいと言われていますが、この三間が子どもたちを育てると言われています。
「遊びにいっておいで」とお子さんに声をかけたとき、もし「いかない」と断ってきたらこの3つのうちどれかが足りないのかもしれません。
時間・・・遊びに割ける潤沢な時間を指します。
今の子どもたちは学校から帰ってきたあとも習い事や宿題など多くのことに追われています。よって自由だと思われがちな子どもたちも実は多忙!自由になんでもしていい時間というものを保証してあげることが大切です。
空間・・・子どもたちが安心して遊べる場所を指します。
都市部では公園でもボール遊び禁止や大声禁止。道端で遊ぶのも交通量が多くで心配。そうなると室内?という現状があります。大人が一緒に行く、安心していかせてあげられる場所を見つけることが子どもたちが安全に楽しく遊ぶ空間を保証してあげることに繋がるかもしれません。
仲間・・・一緒に遊ぶ仲間を指します。
子どもたちの一番の社会は学校ですが、実は地域にはたくさんの仲間がいます。年が違くとも一緒になって遊べる仲間はたくさんいます。
近所の子や児童館・プレーパークなどのコミュニティをみつけ、たくさんの居場所をつくっておくことで自ずと仲間が増えていくことでしょう。
時間・空間・仲間がそろった時に遊びが深くなり、学び、発達していく
三間がそろった時、子どもたちはいきいきと遊びだすはずです。もしその遊びがゲームで子どもの成長にとっていいことだけではないなと感じた場合は、空間の提案を変えてみるとなにか変化が起こるかもしれません。
ひの自然学校ではスマホもなければ、Switchなどのゲームもない。その中でも子どもたちは楽しかった!また行きたい!と言って帰っていってくれます。冒頭の話に戻りますが、子どもたちは何もないところでも遊びを創造していく素地を全員が持ち合わせています。たくさんのモノであふれる社会がその能力を発揮させにくくしているだけでひとたび自然にでればたくさんの工夫や楽しいものを子どもたちは、発見しています。またそれに共感してくれる仲間の存在があれば、それを安全基地だと感じされに遊びを深くしていき自分のものにしていきます。
遊びの種類を知り、その時々に応じて遊びがチョイスできると子どもたちも様々なものに触れられてより感覚が刺激されていくことでしょう。
自然の中に行くからこそわかる不自由さ、またそれを楽しむマインド。
近所で夕暮れまで仲間と遊び込む楽しさ。
幼少期にはどれも必要なことでしょうし、その自由を担保していける大人が地域により多くなるともっと子どもたちにとっても過ごしやすい世の中になるのではないかと思います。
ひの自然学校ブランドバリューマネジャー
井上えっぴ
引用・参考文献
吉田 伊津美ほか.幼稚園における健康体力づくりの意識と運動指導の実態.東京学芸大学紀要2007,vol58,p75-80
国立青少年教育振興機構.「しぜんであそぶ!」まるわかりガイドブック
niye.go.jp/pdf/shizendeasobu_maruwakari_guidebook.pdf