AIは建築家を潰すのか?
最近注目されているチャットGPTというものがありますね。AIに仕事を奪われるという話はよく聞かれますが、建築家についてはどのような未来が待っているのでしょうか。今回は僕なりにその将来について予測してみたいと思います。
設計図の自動作成
建築家はカッコいい建物を建てるのが仕事です。ハウスメーカーや工務店ではできないようなデザイン性の高い空間、生活の提案、社会性、施主の要望など緻密に練り上げ、一つの建築として表現していきます。
一つの建物に何ヶ月〜何年とかなりの時間を必要とします。
設計図の自動生成はそんな莫大な時間を短縮してくれることでしょう。
建築家にはそれぞれ個性があり、納まり、ディティール対して独自のこだわりを持っています。建築家のもとで働いている所員はその納まりを理解して、建築家の代わりに図面を書いています。
それをAIに学習させれば、どうでしょう。
これまで所員にやってもらっていた図面作成をAIにやってもらえば所員の労働時間はかなり短縮できるだけではなく、確認申請などの書類関係もAIにまかせてしまえば、もう所員は必要なくなるのかもしれませんね。
建築家の伊礼智さんは独自の納まりを「標準化」させて設計レシピ本として世の中に広めました。工務店はこれをこぞって真似をし、デザイン性を向上させました。
これまでは建築家→工務店だったのを、建築家→AIに置き換えればいいだけです。
工務店の設計業務はなくなってしまうかもしれませんね。
AI建築家の誕生
建築家の納まりを学習させるのはただ一人の建築家である必要はありません。有名建築家の納まり、空間の特徴を全てAIに学習させてしまえば、スーパー建築家が誕生します。そして日本の建築基準法も学習させれば、素人でも図面が作成できるようになるわけです。
例えばこんな注文をしてみます。
「安藤忠雄のコンクリートと光の入れ方に隈研吾のような木質な感じを足して、全体的にはコルビジェのフォルムにして欲しい!でもアアルトような温かみを忘れないで!」
そんな無茶な注文でもAI建築家なら数分で図面、パースまでを書いてくれます。
そして機能性についても
「トイレは寝室から近いほうがいいな!キッチンは対面型で!もう一つ6畳の部屋が欲しい!」
AIはその場で修正してくれることでしょう。
まさに全知全能のスーパー建築家ですね。既存の建築家は施主の要望から、施主の好みに似合った建築家探し出してAIに入力するだけのオペレーターになるかもしれません。それすらもAIがやってくれるかもしれませんが…
見積もり
「よし、そのデザインで決まった!見積もりお願い!」
そんなふうにしてたった1日で見積もりまで出してしまうのです。
「ん〜やっぱりちょっと高いかなー」
そう言うと、
AI「•提案1 檜のフローリングを杉に変更すると○○万円削減できます。
•提案2 窓の大きさを小さくすると○○万円削減できます。
•提案3 ユニットバスのメーカーを〇〇から〇〇に変更すると〇〇万円削減できます。」
このように具体的な数字を瞬時に見積もりしてくれるため、打ち合わせの回数が1回で終わってしまうなんてことも出てくるかもしれませんね。
AI建築家×設計コンペ
建築家の腕の見せ所であるのが設計コンペです。しかしAI建築家なら、コンペでさえも勝ち抜いてしまうかもしれません。
東京オリンピックでザハハディドのデザインした新国立競技場が予算の関係で、実現されませんでした。
しかしAI建築家なら、デザインだけでなく、見積もりまで瞬時に出すことが可能です。
デザイン審査会では、予算までは考慮するのは困難なのをAI建築家ならやってのけます。具体的な数字が見えるデザインと、そうでないデザイン、どちらが選ばれるでしょうか?
お偉い上の方がどちらを好むのかは明らかでしょう。
建築家は食っていけなくなるかもしれませんね。
AI建築家と建築家のコラボ
AI建築家は既存の建築家を学習できますが、新たな発想を生み出すのにはまだ時間がかかるのかもしれません。
建築家は新たな価値やアイデア生み出すことができる存在です。
AI建築家にとっても新しい考えを生み出すことができる建築家は魅力的でしょう。
そういった建築家はAI建築家の発達に貢献することでしょう。AI建築家のエンジニアと言えばいいでしょうか。
AI建築家と共同して新しいデザイン、ディティールを生み出すかもしれませんね。
しかし巷の建築家の全てが新しい発想を生み出せてるとは言えないのが現状です。
建築家の中の上位数%が新しい価値観を生み出し、他の建築家はそれに影響され、真似するといった流れができています。
新しく生み出せない建築家はAI建築家に淘汰されていく。AIによって建築家の分断が起こることでしょう。
最後に
建築家の未来は明るいか?そんなことを考えると不安になりますよね。
しかし、AI建築家は光を肌で感じたり、風や湿気を体感することはできません。これは人間に与えられた特権と言えるでしょう。
合理的な部分、効率性では圧倒的にAI建築家が得意です。これらはAIに任せましょう。
本当に大切な身体性を人間の方で補正する。
これがあるべき将来なのかもしれませんね。
言葉を追って旅に出よう。