母との記憶/短文バトル444

地域の飲み会に行くと父はいつも潰れて帰ってくる。母親はそれを見て、父の父が早く亡くなっているから後ろ盾がなく、馬鹿にされるからだと言った。土地も町に取られていく、田舎では公務員でなければ人間扱いはされない、だから公務員になれと続けた。

でも、私はそんな扱いしかしない田舎には絶対に残らないと心に決めていた。

就職するときに就職活動はさせてもらえなかった。父に引きずられて履歴書用の写真を撮りに行かされ、勝手に公務員に応募させられた。

それでも絶対に試験だけは受けなかった。そのため臨時採用で役場に勤めさせられる。また試験を受ける秋になり、もちろん受ける気はなかったので、私は家出することにした。友達のアパートに住まわせてもらい、福岡での生活が始まる。

去年、父の一周忌、母親はまだ公務員になれたのに逃げたと謗ってきた。

小さい頃、読み聞かせなんてして本好きにさせるんじゃなかった、そうすれば話を書く仕事をしなかったのに失敗したという言葉を投げつけられた。

私の中の小さな子供は今も泣いている。


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