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スクランブル鍋/謎めく鍋パ

■あらすじ

鍋パーティをしようとなるサトはカズキ、慎一、モカで集まった。ところがサトはカズキと付き合っていながら、モカの彼氏である慎一と浮気している。その秘密の恋を刻印した指輪を、みんなで食べる鍋に落としてしまった。どうにか気づかれずに鍋底の指輪を回収しようと思うサト。

また、モカはモカで焦っていた。ペンダントトップがないのだ。そこには、サトの彼氏であるカズキと浮気した証拠のイニシャルが刻印されてある。たぶん、鍋の底にあるはずなので、どうにか回収しようとするモカ。

慎一とカズキは焦っていた。なぜなら、ふたりはそれぞれのモカとサトという恋人がいながら、なおかつ浮気をしながら、本当はふたりが真の恋人同士だったのだ。そのふたりがお互いに持ち合っていたピアスの石がない。ピアスの見えない位置にはお互いの愛を誓う刻印がある。たぶん、鍋の底に落ちているはずなので、ふたりは協力して鍋の底から回収しようとするドタバタ劇。

■登場人物

サト(22)大学生

モカ(22)サトの友達の大学生

カズキ(23)サトの彼氏。大学院生。モカと浮気しているが、本命は慎一

慎一(24)モカの彼氏。大学院生。サトと浮気しているが、本命はカズキ

〇サトの部屋

テーブルの上には美味しそうな鍋がぐつぐつしている。席にはサト(22)、モカ(22)、カズキ(23)、慎一(24)が座っている。サトは指の付け根を触って笑顔で焦っている。

サト(おかしい。指輪がない。キッチンにもなかったし……こうなったら、もう鍋の中に混ざってるとしか思えないっ! どうしよう。あれには慎一と浮気してる証拠が刻印されてるのに!)

モカ「サトとカズキって付き合って何年? もう長いよね」

サト「え、あ、う、うん。3年になるかな。ちょっとマンネリ気味かな。ねえ、あははは」

カズキ「そうだね。もう長年連れ添った老人夫婦みたいな関係だよ」

モカ「やだ。のろけちゃって~」

サト「そういうモカと慎一だって、もう付き合って一年でしょ」

モカ「まあね。まだ飽きてないかな? でも、最近、あやしい時間があるのよねえ。あ、そろそろ煮えてきたみたい?」

モカが鍋の底をすくうようにして混ぜ始めて、サトがあっと声をあげる。同じくカズキと慎一も小さくリアクション。

サト「混ぜると、せっかくの飾り盛りが台無しになっちゃうよ」

モカ「ええ~、でも混ぜないと煮えに片よりができるし~」

ぐるぐる回すので、サトが悲鳴じみた声をあげる。同じく、慎一とカズキもひっという。

モカ「なによ。みんな~、見た目よりも美味しさでしょう」

モカ(まずい。絶対、ペンダントトップを鍋に落としてる。やっぱりあの怪しいアクセサリー屋で作るんじゃなかった。どこ、どこよ~。あれにはカズキと浮気してるのがわかる刻印が押してあるのよ~。先に見つけて飲み込まなきゃ)

まだモカが混ぜ続けようとするのを、カズキが止める。

カズキ「もういいんじゃないかな? 僕がつぎ分けるから、貸して」

モカ「えっ、あ~」

変な声が出るが、変な顔をされたので、黙る。

カズキ「なんか好き嫌いある? 慎一はネギだめだったよな。よけてやるよ」

慎一「サンキュ。しっかり頼むぜ」

カズキ「ああ、任せとけ」

しっかりと目を見つめ合って頷く真一とカズキ。

カズキ(まずい。僕と慎一の愛の証であるピアスの石をふたりとも落としてしまった。絶対に鍋の底にあるはずだ。女たちよりも先に見つけないと、まずいぞ!)

慎一(カズキ、頑張ってくれ! やっぱりあの怪しいアクセサリー屋はダメだったな。まさかふたりとも石を落とすなんて、しかもそこに二人の愛の刻印が!)

サト「カズキも混ぜすぎ~。もう、私がついじゃおっか?」

慎一「ダメ――!」

サト「なんで、慎一がダメ出しすんの?」

慎一「いや、ほら。ネギをよける技はカズキが一番上手だから」

サト「ふ~ん」

サトが菜箸をどんと鍋の底に突き立てる。わずかにカキンって音が鳴る。

モカ「あった!」

サト「あった?」

モカ「あ、あのね。実は歯につけてたダイヤが取れてて、それが鍋に落ちたのかなああって」

サト「歯にダイヤ!?」

モカ「知らない? 今、流行してるの。歯にダイヤ。だから菜箸ちょうだい。というか、ダイヤの入った鍋なんて、嫌でしょ。私、全部作り直してくるから」

モカが鍋を持ち去ろうとするけれど、それをみんなが止める。

サト「待って」

慎一「オレが作り直すよ」

カズキ「そうそう。女性陣は座ってて、僕らで作り直すから」

モカ「あやしい」

サト「そうね。その意見には、私も賛成。差し歯なんて関係ないわ。このまま鍋をつぎわけましょう」

サト(それで自分の器に指輪が来たら、飲み込む)

慎一「わかった。じゃあ、自分で自分の分を取り分けていこう。まずはオレ」

そうやって慎一、カズキ、サト、モカがそれぞれの器に自分で具をつぐ。

慎一(オレのに固いのが入ってるぞ。うまく取れたな)

カズキ(僕のにも固いのが入ってるよ。これでふたりのピアスは回収だ)

慎一とカズキは目で合図し、頷き合う。

サト(よっしゃ! 固いのが入ってる。無事、回収~)

モカ「あ、私のに。固いのが入ってるから、ダイヤはここにあるみたい。だからみんな安心して」

慎一(ということは、ダイヤは別に落ちてたのか)

カズキ(じゃあ、僕たちの器にあるのがピアスで間違いないね、慎一)

モカ(よかった。私の分は私の器にきてくれて。後は証拠隠滅すれば)

モカ「では、いただきまーす!」

そこでモカが、こっそり取り出したダイヤと言いつくろっていた固いものを見ると、慎一とカズキの愛の刻印が押されたピアス。

モカ「なんじゃこれ――!!」

そこでそれぞれが自分の器の固いものを見る。サトにも慎一とカズキの愛の刻印ピアス。慎一にはモカの浮気の証拠のペンダントトップが、カズキにはサトの浮気の証拠の指輪がそれぞれ入ってるのを発見。

サト「なに、これ!」

カズキ「そういうことか」

慎一「たいしたスクランブル鍋だな」

お互いがお互いを見合って、あはははと笑いあってエンド。






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