もかり鍋/謎めく鍋パ
あらすじ
サリが『もかり』というものを鍋に入れたというが、葵もリュウジも崇もそれが何かわからない。タピオカの次に流行っているというので、リュウジと葵は知ったかぶりをする。崇だけは知らないので聞きまくる。適当に答えるふたり。しかし、結局もかりが流行っているというのは嘘で、毒の実のことであり、サリは3人を毒殺してしまう。
登場人物
サリ(25)
葵(23)
リュウジ(23)
崇(25)
本編
〇サリの家・リビング(夜)
サリ、リュウジ、葵、崇がこたつで鍋を囲んでいる。サリはおたまで鍋をかきまぜている。
サリ「それじゃあ、もかり入れたから」
リュウジ「もかりって?」
サリ「ええ~、もかり知らないの? 今、タピオカの次に来るって流行ってるじゃない」
リュウジ「あ、あのもかりね。いやあ、頭の中で漢字に変換してたから、海藻的な物かと思ってたよ」
リュウジ(いや、知らないし。今、タピオカよりも流行ってるって相当じゃん? 後でスマホで隠れて調べよう)
リュウジ「なあ、葵ちゃん、鍋にもかり入れたんだって? 流行ってるよね」
葵「もかり!? え? ああ~。そうそう流行ってる流行ってる。私も昨日表参道で食べてきたとこー」
葵(何? もかりって? そんな食べ物流行ってたっけ? この私が流行に乗り遅れてるなんて有り得なくない?)
サリ「な~んだ。原宿の店、行ってきたんだ。凄い行列だってでしょう?」
葵「う、うん。まあね。2時間待ちかな?」
サリ「凄いね。でも、今日は成城石井で買ってきたやつだから、たっぷり食べてね。たぶん、鍋の底にたまってると思う」
葵「へー。そうなんだ。楽しみ~。ね~、崇。あの流行ってるもかりが入ってるんだって?」
崇「何それ? 初めて聞いた」
リュウジ「遅れてるな~。崇はさすが、テレビも見ないんだっけ?」
崇「動画配信見てるからいいんだよ。でもそこでだって、もかりなんて知らないぜ。どんなやつだよ」
リュウジ(いや、知らんし)
葵(どんなの? わけらないってば!)
葵「どんなやつって、ね~。そお……丸くて……。でしょ。リュウジ」
リュウジ「そうそう。丸くて、こう黄色っぽいというか、赤っぽいというか、緑っぽいというか」
崇「ハッキリしないなあ。信号機かよ!」
リュウジ「ハッキリしない色なんだよねえ。あはははは」
崇「じゃあ、味は?」
葵(味――っ!!)
葵「甘い……かしら?」
リュウジ「オレのときは辛かったなあ」
葵「へー。そういう種類もできたんだ。商品開発してるんだねえ」
リュウジ「そうだね。あははは」
崇「お前ら。本当に、そのもかりってのを知ってるのか?」
葵「もちろん」
リュウジ「知ってるぞ。食べたこともある」
葵「ある」
サリ「粒粒してるスパイスみたいなものよ。スイーツ系じゃないし」
リュウジ「ほら見ろ。辛いんだよなあ」
リュウジ(セーフ!)
葵「あれ? スイーツ系じゃなかったっけ?」
サリはもくもくと器に鍋をつぎわけていく。それをみんなに回す葵。
リュウジ(とりあえず食べてしまえば、話が合わせられるな)
葵(食べて挽回しなきゃ)
みんな「いただきまーす!」
みんなで鍋を食べ始めるが、サリは口をつけない。
崇「なんだよ。別に味しないじゃん。もかり、もかりっと、スマホで調べてみよ……ああん?」
サリ「もかり……殯(もがり)のなまったもの。殯は死者を安置する意味から、食べると死ぬという木の実のこと。3粒で致死量に至る。たぶん、みんなそれくらいは食べてるんじゃない?」
サリはおたまを持って、にっこりと微笑む。
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