檜原村の冬を彩るお手伝い【檜原村こよみだより 1月】
最低気温が氷点下になる日も珍しくなくなり、布団から出られなくなってきました。料理や洗濯などの家事をしようにも、指先が冷え切って思うように動かず、気力が削がれていきます…。
出勤前になんとか洗濯を終え、軒先に干したバスタオルやワイシャツを見ると、やけにシャキッとしています。触ってみると、凍りついてパリパリになっていました!檜原村の厳しい冬を表現している洗濯物を、長く村に住んでいる人に、どうしたらよいか聞いたところ、乾くまでそのままにしておけばよい、とのことでした。
今回は、そんな檜原村の冬を彩る「払沢の滝冬まつり」というイベントや、お正月の飾りつけについて紹介したいと思います。
払沢の滝冬まつり
東京都で唯一“日本の滝百選”に選ばれている、払沢(ほっさわ)の滝。
あきる野市方面から檜原村役場を右手に通り過ぎ、橘橋(たちばなばし)の信号を右に曲がり、車で約3分のところにある専用駐車場から、遊歩道を15分ほど歩くと現れる、高低差約60m、全4段の滝です。
「払沢の滝冬まつり」では、払沢の滝が冬季(今シーズンは1/5~2/20)に“最も凍りつく日(最大結氷日)”を当てる「氷瀑クイズ」と、滝周辺で撮った写真を公式インスタグラムに応募する「フォトコンテスト」の2つのイベントが行われます。
まつりの成り立ち
今から35年以上前、観光客の少なくなる冬にも楽しんでもらえることがないかと、払沢の滝のある本宿(もとしゅく)という地域の商店や飲食店の方々が中心となり、実行委員会を立ち上げて、冬まつりを開催しました。
それから毎シーズン、冬まつりが開催され続けることで、払沢の滝が結氷することが広く知られるようになり、冬に檜原村を訪れる人も増えました。35年以上の歴史がある冬まつりです。
今では、冬まつりを始めた先代からお店を継いだ方々が、実行委員会の中核を担っています。
***
地域おこし協力隊は、実行委員会の一員として、冬まつりの運営のお手伝いをしています。冬まつり開催期間中の約45日間、毎朝8時に交代で滝の結氷率を確認に行くことが主な仕事です。マイナス4℃以下の日が数日続くと、滝が凍りつく面積が広がります。
氷のオブジェ
駐車場から滝に向かう遊歩道の途中には、実行委員会が製作したオブジェが展示されています。
委員会のメンバーでアイデアを出し合い、先輩協力隊員のTさんが提案した、繭玉(まゆだま)をモチーフにすることになりました。
繭玉とは、かつて養蚕が盛んだった檜原村で「今年も多くの繭が採れ、家が繁栄するように」という願いを込めて、小正月の飾りとして作られていたものです。
縁起物の紅白のお餅と金柑(きんかん)を繭に見立て、食べ物にも困らないように、という願いも込められています。
Tさんから、村の繭玉にまつわる由来を聞いて、繭玉は村の昔の暮らしが垣間見え、檜原村の正月を象徴するものなのだな、と感じました。
オブジェを見ることで、少しでも村の文化を知ってもらえれば、という思いで、オブジェのアイデアについて熱く語り、意欲的に製作に取り組むTさんの姿に、檜原村を盛り上げていこう、という意気込みを感じました。
***
昨年末に滝までの遊歩道が整備され、歩きやすくなったので、冬ならではの滝の景色と併せて、オブジェも楽しんでいただけたらと思います!
門松作り
地域おこし協力隊の活動として、毎年年末に門松を製作し、村役場や、村内の介護施設、村内の温泉施設に設置させていただいています。
もともとは、村の方が門松を製作していましたが、その方が高齢となり作業が困難となったため、地域おこし協力隊が正月の風物詩である門松の製作を引き継がせていただきました。
その様子は、以前のnote記事で紹介されています。
門松作りを引き継いだ協力隊OBの方や、先輩協力隊員に指導してもらいながら、作業を行いました。
門松の材料となる、松、竹、梅、南天(なんてん)、藁は全て村内で調達します。
檜原村は斜面が多く、門松の材料となる竹や南天などのある竹藪や畑も、足場が斜めになっているところが多く、斜面を意識して立っていないと転がり落ちてしまいそうになります。
材料の運び出しの際も、腕や膝、腰など全身に負担がかかり、門松製作の大変さを身を持って知りました。
調達した材料を、設置場所の村役場や村内の介護施設、温泉施設に持ち込み、門松を仕上げていきました。
私も藁の刈り込みなどの慣れない作業を、悪戦苦闘しながら行いました。
作業中、通りがかる多くの人に「今年もいいのができそうだね」「いい新年が迎えられそうだね」といった声をかけていただき、協力隊が門松製作を行っていることが、村の方々に知られてきているのだな、という実感が持てました。
***
払沢の滝冬まつりのお手伝いや、門松作りを通じて、檜原村の冬を彩り、盛り上げていこう、と活動しているたくさんの村の方に出会うことができました。
そして、地域おこし協力隊の先輩方が、地域にとけこみ、盛り上げようとしていることがわかりました。
地域おこし協力隊として村の方々の思いに耳を傾け、発信していくことで、良い関係性を築き、村を盛り上げるような活動のお手伝いをしていけるよう心掛けていきます。
今後も、村の四季折々の風景等を、協力隊の活動を交えて紹介していきますので「ひのはらマガジン」をよろしくお願い致します。
【ライタープロフィール】
松本 圭史
群馬県前橋市出身。前職は在宅の介護支援専門員。2024年8月より東京都檜原村地域おこし協力隊に着任。情報発信業務を担当している。ゆず、ルバーブなどの村の特産品を使用した商品開発や、白炭を使ったコーヒー豆の焙煎をしてみたい、と構想中。