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卒業式にもらった私のもう1つの名前
中学3年の時の担任の先生は書道家だった。
国語の担当をしていたが、書道家として学校外部から依頼もあるくらいの腕前で、行事で使う題字や式次、垂れ幕など、学校でも彼の字は至る所に飾られていた。
小柄で丸顔、丸い眼鏡をかけ、太っているわけではないのだが、なんとなくころんとしたイメージの、にこやかな先生だった。
小さい頃はサラサラのストレートだったのに、父親に命じられ一度坊主にしてから極度の天然パーマになったという本当にそんな人いるのかと思うような不思議なエピソードの持ち主で、クルクルの髪を短く切り揃え、大仏のような髪型をしていた。
そんな先生が、卒業を数ヶ月後に控えた私たちにある時こう言った。
「先生は書道が得意なので、皆さんの好きな言葉や好きな文字を1人一枚ずつ色紙に書いて、卒業の時にプレゼントしようと思います。
好きな曲の歌詞でもいいし、自分の名前でもいいし、皆さんが気に入っているものであればなんでもいいので、今月くらいまでに教えて下さい。
あ、でもあんまり長すぎると書ききれないから程々の長さでね」
3年生は私たちA組と隣のB組、全部で2クラスだ。
隣のクラスの生徒たちはその特別なプレゼントの話を聞くと、いいないいなと羨んだ。
しまいにはその隣のクラスの担任に「先生もなんかやってよ」なんて言う程で、隣のクラスの先生はちょっとかわいそうだったかもしれない。
あまりにも隣のクラスの生徒がいいなと言ったので、最初は「好きな文字なんてある...?」なんて大してありがたみも感じずにきょとんとしていた私たちだったが、現金なもので羨まれる程に段々とその色紙がとても楽しみになり始め、何書いてもらうか決めた?なんてワクワクしながら話した。
好きな言葉や、なんだかカッコ良さそうに見える四文字熟語、自分のフルネームを達筆で書いて欲しいなど、それぞれ思い思いのものをリクエストする中、私はギリギリまで何を書いてもらおうかと考えあぐねていた。
そして決めかねた結果、私は先生にこう頼んだ。
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