ごはん杖　#毎週ショートショートnote

杖をぷいっと振ると料理が並んだ。
今日は生姜焼きか。

ごはん杖を手にして一切料理をしなくなった。
だって一振りすれば現れるのだ。

最初は、今日はパスタ？なんて想像しながら一喜一憂していたが、そのうち何が食べたいとも考えなくなった。

「今日は米の気分だったなぁ」


そんな文句を聞いてか、最近杖の調子が悪い。
白米だけがぽんと出てきたり、昨日なんてキャベツが一玉。
どうしたごはん杖。財政難か？
とはいえ何か作る気にもなれず、冷蔵庫に眠っていた味噌をつけて食べる。


今日こそまともな物が食べたい。頼むぞ。
そう念じて杖を振ると現れたのは人参ともやし。

思わず苛立ち杖を二度三度振る。
すると今度はフライパンとピーマン、そして全く同じ形の棒がもう一つ。
そしてごはん杖はうんともすんとも言わなくなった。

なるほどね。次はこっちを使えばいいわけだ。
そう思って新しい杖を振ってみるも何も起こらない。


「...ちぇ。フライパンくらいあるよ」

そう呟き久しぶりに台所へ。
出てきた材料で野菜炒めを作った。

ごはん杖はその日から菜箸になった。

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