見出し画像

ポートレートフォトグラファーのライティングLIVE SHOW、須田さんアシスタントによる熱烈レポートをお届けします!


ポートレートフォトグラファーのライティングLIVE SHOW

現地、配信ともにたくさんのご参加、本当にありがとうございました!

アーカイブ動画はこちら

皆様のおかげで無事に大盛況で終えられたこと、
スタッフとして大変嬉しく思っています。

終了後、須田さんと話していたのですが、

「終了間際、参加者がみんな満足そうな顔していたのが何よりだったね。」

と、とても嬉しそうにしておられました。

こういうイベントって、前から参加者の皆様を見ていると
受付〜スタートの頃はどことなく緊張感を感じます。
お金や時間をかけているので、「良い時間になるだろうか?」という
厳しい目線もあるでしょうし、参加者の属性が近いので
多少なりライバル意識みたいなのもあるのかなと。

私もたまに人前で話す機会があるので体感してきているのですが
その緊張感は主催者にも伝わるので、堂々としているようで
「喜んでくれるだろうか?」「スムーズに進められるだろうか?」
内心ではとてもドキドキしながら開催していたりするものです。

そんな背景もあり、皆様の表情やSNSでの反応にホッとしたようでした。


今回私はアシスタントしながら特等席でイベントの様子を見ていたので
その立場からのレポートを残しておこうと思います。
参加できなかった方も、臨場感が伝われば幸いです!


準備中


今回利用させていただいたハレノヒスタジオ初台のスタッフの方は須田さんのご友人。
配信の準備をしつつ、会場の導線や準備なども非常に柔軟に対応して下さりました。

参加者の会場入りが17:30~のところ、準備は16時頃からスタート。
普段ならスタジオに入ったらすぐに機材セッティングを行うのですが、
ライブシューティングということで最低限の準備まで。

その分、配信や撮影が滞りなく進むように
モニターやビデオカメラの配置、スイッチングの調整から
テザー撮影(撮影データのPC投影)などを入念にチェック。

イベントではPCの接続トラブルはよく遭遇するものかと思いますが
時間も無駄になりますし、焦ってしまうので極力避けたいものですよね。
普段の仕事でもトラブルを避けるために丁寧に準備していますが、
スムーズな進行のために色々な対応を行なっていくのも大事な仕事の一つ。ちなみに須田さん、この日テザーケーブル5本くらい持ってました。

ヘアメイク中のイマムラキョウカさんの横でご自身の著書で振り返りをする様子。
参加者の皆さんが混乱しないよう、なるべく当時に近い撮影をベースにしていました。

配信スタート


撮影チームの紹介から始まりました

18時になり、いよいよイベントスタートです!

今回のライブシューティングでは、書籍に掲載されている写真から
3つの撮影を抜粋して実演するというもの。

基本的には書籍にある通りのセッティングですが、
モデルのイマムラキョウカさんとヘアメイクの中田真代さん、
スタイリストの中本ひろみさんとチームを組み
作品撮りとして全力で臨むことをコンセプトにしていました。

当然ですが、書籍とは人物やヘアメイク、スタイリング、そして場所
全てが違った環境での撮影となります。その違いをどう微調整しながら
作品として昇華させていくのかという点が見所でした。

パターン①撮影

最初に撮影したのは、書籍にて

クラシックな格好良さ

と題されていた1枚。
本木雅弘さんの渋さと登場のエピソードに
痺れた方も多いのではないでしょうか。

比較的シンプルでクラシックなポートレートながら、
実は細かなこだわりと技術が詰まっているこちらの写真を元に
イマムラキョウカさんを撮影していく様子をご紹介。

セッティングしながら、機材の扱いやアレンジなども解説。
黒田さんが参加者の目線に立ち質問しながら進めていきます。
参加者目線×玄人目線でのファシリテートが見事でした。

使用していた機材の一覧とセッティングはこちら。

キーライト:Profoto D2 + Profoto RFIオクタボックス 150cm
フィルライト①:Profoto B10 + Profoto アンブレラホワイト M +トランスルーセントレフ
フィルライト②:Profoto B10 + 黒ケント紙
ネガティブフィル:上手に黒カポック、足元に黒布
背景布:海外輸入品

紹介されていた主なポイントは

キーライト

ソフトボックスはディフューザーを1枚外し、オパライトのような硬さを足す。また芯を外す(フェザリング)によってグラデーションをなめらかにし、光の硬さと柔らかさのバランスを取る。

フィルライト

キーライトで生まれる影をコントロールし整える。
出力としてはかなり控えめで、モデル右頬の露出がF8→F8.2になる程度。
衣装がダークなトーンで影が重くなりすぎたので、足元にも白ホリにバウンスするためのB10をフィルとして設置。

ネガティブフィル

いわゆる黒締め。白ホリでは特に光が回りすぎてしまい意図しない部分まで明るくなってしまうことが多いので、光を吸収する黒をモデル上手、足元に設置することで印象を引き締めます。

露出計を実践で使用している姿は意外と貴重だったのではないでしょうか。
とっつきにくさはありますが、光が読めるようになる上では非常に重要な機材、スキルです。

露出計、安いものでも3~4万するので最初はかなり手を出しにくい機材。
ですがこれを使うようになると光の強さを数値で認識できるようになり、
ハイライト〜シャドウのコントラストの強さが頭にイメージとして見えるようになってきます。

ちなみに、今回の書籍の出版元である玄光社さんが運営されている
ウェブマガジン”PICTURES”に露出計の連載記事が載っています。
複数回に渡り詳しく解説されているので、露出計で混乱した方はぜひ。

キョウカさんが入った様子。
ご本人の美しさに、強めのヘアメイクとスタイリングが相まって既にカッコいいですね。

そうして撮影されたのがこちらの写真。

カッコいいですね!!
元の本木さんのお写真と比べるとフィルが追加されていることや、
ポージング、顔の向きなどの違いが多少の印象変化をもたらしていますが

顔→顎→首、背中にかけてのハイライト〜シャドウのコントラスト
背景→衣装→背景(上手下)にかけての溶けていくようなグラデーション

この絶妙な塩梅が、キーライト→フィルライト→ネガティブフィルにて
緻密にコントロールされていることがよく分かるのではないでしょうか。
ヘアメイク、衣装の艶感との相性も素晴らしいですね。

ライブシューティングでは須田さんがあまりにもさらっとセッティングしてしまうので、黒田さんから「経験値が高過ぎる」とイジられていましたが
このさらっと行っていた角度や距離、出力の絶妙な加減が
自分でやってみると本当に難しいところ。
ライティングの知見を得るまでは、こういった複数灯での撮影と
キーライト1灯で撮った写真との違いを認識するのも難しかったりしますが
最終的な仕上がりから人に伝わる印象には大きな違いが生まれます。
まさに神は細部に宿る、といったところでしょうか。


パターン②撮影

続いては

青の惑星


と書籍で題されていたカットです。
満月のような光と、青く包まれた空間が印象的な1枚でしたね。

会場を暗くするのも大事なポイント。
撮影中の様子。
めちゃめちゃ楽しそうでしたね!


使用していた機材の一覧とセッティングはこちら。

キーライト:Profoto D2 + オプティカルスヌート
アクセントライト:Profoto D2 + シアンブルーのカラーフィルター
モデリング用:Profoto B10 (写真には影響せず)

紹介されていた主なポイントは

キーライト

丸く滲みのない円をつくるためにオプティカルスヌートを使用。
光量が4段近く落ちるので、出力をしっかり上げて照射し、これを基準にすること。

アクセントライト

光量によって色の濃さが変わるので好みに合わせて調整すること。
均一に色をつけるため、芯をずらした位置でバウンスすること。
カラーフィルターは熱で溶ける場合があるので、モデリングなどには注意。

ちなみにモデリング用にB10を使用していたのはピント合わせをスムーズにするため。アクセントライトで影に色をつける兼ね合いで環境光を切っておく必要があり、それによって暗くなるからです。
D2をモデリングとして使用しなかったのは、フィルターが熱に溶けてしまう恐れがあったからですね。

奥が色を付けるためのD2、手前がモデリングのみで使用したB10です。


そうして撮影されたのがこちらの写真。

こちらもまた素敵ですね!
白ホリのシンプルな背景に、光によって不思議な空間が生まれました。

須田さんが中田さん、中本さんにヘアメイク、スタイリングの要望として「遊んで欲しい」と依頼していたのだそうで、華やかでインパクトのあるヘアや衣装がライティングとマッチしているのが良く分かります。
キョウカさんもそんなニュアンスを汲み取って大胆にポージング。
黒田さんがジョジョ6部だね、と話していました。

今回のスタジオはアールといって足元が湾曲していたので、
書籍の撮影と異なり壁に近付くことが難しい環境だったのですが
そんな様子を微塵も感じさせないポージングは素晴らしいものでした。
記事トップの写真もこの時のものですが、楽しげに撮影していたのが伝わりますでしょうか。

この撮影の直前、須田さんから中田さんに
「ヘアメイクにどんな色使ってる?」と確認がありました。
目の付け所がシャープな参加者の方が「あの確認、返答次第で何が変わったのですか?」と質問。この時、中田さんからは"リップがピンク系"と返答があったのですが、色次第でカラーフィルターの色を変更していたとのこと。

ピンクはシアンブルーと相性の良い色なので、
メイクが際立つようにシアンブルーで影に色をつけた、ということです。
結果的には書籍と同じ色になりましたが、ただ同じことをしたのではなく、
チームへの気配りと仕上がりへの拘りが詰まっていたということですね。
こういった配慮の細かさが須田さんのクオリティと
信頼感のポイントの1つだったりするのかもしれません。
寄りの写真を見ると目元のパールのようなメイクが青く輝き、
口元も華やかで際立っているのが分かりやすいですね。

ちなみに、当日の解説には無かったものの須田さんに確認したことがあり、
個人的に感じたポイントと初心者目線での質問があるので添えておきます。
今回の記載にあたっても須田さんに確認していただいているで、
正式な答えとしてご認識いただければ幸いです。

ポイント

キーライトとモデルの顔の位置関係がなるべく正対するようになっている

これはオプティカルスヌートの光が硬い光であることが理由です。
正面から光が当たることによって不用な影が顔に出ず、美しい仕上がりに。
撮影時もさりげなく「顔の向きはライトの方に」と指示しておられました。
黒田さんが「ビューティーのように緻密だが動ける範囲が小さいライティングと異なり、このライティングは大きな動きを表現できるライティング」と解説して下さり、須田さんも正面だけでなく斜めや横からも撮影していましたが、キョウカさんの顔の方向の意識が定まっていることでどの位置から撮っても画になるライティングだったということですね。

質問

なぜスタジオを横にして撮影したのか?

これはモデル正面方向からのバウンスで均一に色を付けることと、
壁に寄りかかってポージングするための2点が理由です。
今回はスタジオの両サイドもアールになっていましたが、書籍の撮影で使われていたスタジオはサイドがアールではなく直角の壁でしたね。


パターン③撮影

最後のカットは

軌跡の奇跡

にて部井久アダム勇樹選手を撮影していた写真の再現です。
躍動感が瞬間を切り取る写真の中にギュッと詰まった力強い一枚でした。

今回、書籍の撮影と大きく異なる点として背景の色があります。
ライブシューティングでお話されていた際に
"背景が明るいと、色をつけた光の軌跡が目立ちにくい"
お話されていたのですが、つまり難易度が上がるとも言えるのでは。

そんな違いにどうやって立ち向かうのかを見ていきましょう。

スタジオを大きく使う撮影のため、立ち位置を大移動。
動きのある写真のため、全身を使って表現するキョウカさん。


使用していた機材の一覧とセッティングはこちら。

キーライト:Profoto D2 + ディープオクタ
背景ライティング:Profoto B10
アクセントライト:NANLITE 720B + フレネルレンズ + バーンドア

紹介されていた主なポイントは

キーライト

背景からモデル立ち位置、ライト共に距離を撮ることで、白い背景の露出をなるべく落とす。

背景ライティング

背景にできた明暗のムラを整える。

アクセントライト

軌跡をつくるための肝となる光。
フレネルレンズを合わせることで光量と太陽のような生っぽさを加えつつ
バーンドアで余分な部分に漏れる光をコントロールする。

そうして撮影されたのがこちらの写真。

躍動感と静かさが共存するような、とても幻想的な写真になりました!

こういったスローシャッターを活用した撮影は僅かな変化が大きく出るので
何度も撮って追い込んでいくものかと思いますが
ライブシューティングという都合上、なるべく1発で100点が見せたいもの。
そんな環境に珍しく緊張している須田さんが印象的でしたね。
白い背景をいわゆる"成り行きグレー”になるように少し落とし、
キョウカさんと光の軌跡が浮かび上がるようなカットです。

ライティングはただ形だけ真似しても同じものを撮影することはできず、
本当に微妙な距離感や出力のバランスによって成り立つもの。
そのバランス感覚を最も感じられた撮影だったのではないかと思います。

特に2枚目は撮影の後半、絞ると同時にストロボのみの光量を上げ
全体のバランスを変えた結果の1枚になっています。
背景にかかるオレンジと軌跡の明るさと濃さが少し落ち着き、
同じセッティングでも大きく雰囲気が変わっていますよね。

このバランスの微細なコントロールを頭に描き、処理できるのかどうかが
求める画をきちんと撮れることや、変化させる上で非常に重要。
この技術はやはりセッティングを知っていても簡単にはできず、
職人技と言って差し支えない部分なのかなと思います。

撮影を終えて


こうして無事に3パターンの撮影が終了。
3時間に渡り、セッティングと撮影、そして解説や質疑応答が行われた
非常に贅沢な時間だったのではないでしょうか。

冒頭でも触れましたが、参加されていた皆様の満足そうな表情に
ほっと胸を撫で下ろした瞬間でした。
シューティング中は必死でメモを取っていた方も多く、
参加されていた皆様も全力で臨んでくださっていたのだなぁと思います。

準備中なども質問できる機会はありましたが、
緊張してしまったり、時間の兼ね合いで控えてしまうこともありますよね。
イベント終了後には須田さんの前にたくさんの人だかりができて、
疑問点についてたくさんの質問がなされていました。

写真を見せながらしっかりと質問に答える須田さん。
実はサインを貰えました。
私も貰ってないので、今度お会いするときにお願いしようかと。
終了後は主催の3人で記念写真。
撮り方が胡散臭いと言われましたが、この笑顔が撮れるなら胡散臭さも悪くない。


あとがき

ここまでで6000字を超えました!
読み切ってくださった貴方は素晴らしい方です。
長文レポートを読んでいただいた皆様、いかがだったでしょうか。

さて、改めてのご紹介になりますが
今回のイベントは7/31に発売された須田さんの書籍
ポートレートフォトグラファーのライティング設計図
の出版を記念し企画されたものとなります。

レポートではお見せできていない、過去の実際の撮影されたお写真は勿論
そしてそのライティングを設計し撮影に臨んだ須田さんの試行錯誤の数々が
詰まりに詰まった1冊になっています。
もし、まだ手に取っておられない方がいらっしゃいましたらぜひお早めに。

この書籍、須田さんが以前から発行されているnoteが元になっています。

このnoteを書き始めたとき、そして今回の書籍を発売したとき
おそらく須田さんが何度も言われてきているであろう言葉が

培ってきた技術なのに、こんなに包み隠さず紹介してしまっていいの?

という一言。

例に漏れず、noteが始まった頃に私も聞いたことがあります。
いたずらにライバルを増やしてしまうのではと、周りが心配するくらいに
世の中には出にくい貴重な情報がたくさん書いてあるので。

その頃から仰っていたのは、

こうやって自分のスキルを見せたり、記録していくことで
自分へのプレッシャーにもなるし、新しい挑戦をさせてくれる。
実際、自分もマガジンを始めてからかなり上手くなったと思う。

それに、撮影記録を真似したらかなり近い撮影はできるようになるけど、
そこからもまだまだ伸び代はあるし、同じライティングを組んでもそれぞれの人によって美意識が違うからどういうバランスで光を当てるかも変わり、そこにはその人の個性が出る。ライティングだけが写真の本質ではないし、紹介することで、困っている人の役に立つならいいことだと思うからね。

ということ。

実際、私は須田さんにアシスタント入りをお願いした時から
トップクラスの技術を持った人だと思っていましたが
最近の写真はさらに磨き抜かれている印象を持っています。

こんな人が載せている情報と技術なら、
繰り返し読んで何度も挑戦したくなりますよね。
ライブシューティングを見て、真似して80点の写真が撮れるようになったら
きっと嬉しくて、写真やライティングが最高に楽しくなるはず。
そしてそこからは書籍やnoteを擦り切れるほどに繰り返し見て、
100点120点を目指す挑戦が始まるはずです。

このレポートからご興味を持っていただいた皆様は是非、
改めて書籍やnoteの記事をご覧になってみてくださいね。

本レポートは5年に渡り須田さんにお世話になっている私が
人よりも須田さんの撮影を知っている身として、
そして須田さんのライティングやポートレートの技術によって
大きく成長することができた一人として、
自分にしかできないであろう視点を交えてご紹介させていただきました。
私もまだまだ100点、120点を目指して修行中ではありますが
このレポートを読んで一緒に頑張る仲間が増えたらいいなと思います。

以上、日野でした!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?