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Non:Fiction Part1“愛”

※これはフィクションです。

俺は当時働いていた居酒屋の前で父の弟、つまり叔父に馬乗りになられて殴られていた。首を絞められ気絶寸前。顔を殴るのでなく溝内を殴打。あの時、多分少し地面が濡れていた。絶妙に見えた地面に汚い街が写ってたから。
俺は叔父の胸ぐらを掴み離さなった。おかげで叔父のTシャツはビリビリに破けていた。道行く人々はまるでアリを見るように過ぎ去って行った。むしろ働いていたマスターも横でただ見ていた。

なぜこうなった?話すると長い。

                                 〜4ヶ月前〜

叔父の期待は俺だった。自身の兄(親父)はろくでもない。サーフィンが上手い。ただそれだけ。商売も上手くいかない。進歩もなく過去を愛していた。
ところが叔父は違った。今の若者たちに夢を見せたい。過去にしがみつき今を作っていた。そんな叔父は俺に期待をしていた。なにか創るのを待っていた。
そして、事件は起こった。俺が働いていた割烹居酒屋のマスターは叔父や親父の従兄弟にあたる。我々の家族は少々特殊だがそれはまた次の機会で。その居酒屋に俺は事件の1か月前に就職した。厳密に言えば俺はその時は脱税をしていたから“遊びに来ていた”。その事は親戚中には内緒だった。この事実がバレたのは俺の一家の三男であり親父や叔父の父親であり俺の祖父の法事後の集まりだ。俺が迎えた。みんな俺を見て声援を送ったり無視したり笑ったりしていた。父と母と妹の姿が見えない。俺はすぐさま両親に連絡すると「妹の試合で行けない」。その一言だった。それなら長男である俺が挨拶するしかない。俺は一通り料理を出し終わり階段を駆け上がった。

俺「この度は祖父の法事に集まって頂きありがと
        とうございます。」

深々と土下座をした。20歳だぞ。いい息子だ。すると不機嫌な叔父は酒を仰ぎ俺を殴った。

叔父「お前は外様だ。出ていけ!」

俺は両親の尻拭い、祖父への敬意、何より承認欲求で挨拶に行ったがことごとく粉々にされ、眠るように泣いた。そこに駆けつけたのは他のバイト達。一家の誰一人として俺を助けなかった。あろうことかマスターにすら笑われながら言われた。

マスター「叔父が酔ってる時話しかけたお前が
                   が悪い。」

誰も俺の味方は居なかった。苦しかったさ。叔父が帰る時、決心を決め店の外まで追いかけて詰め寄った。

俺「やってやるよ。」

叔父「お前はこんなところで終わる玉じゃな
            い。外に出ろ。ここで働くな。」

俺「俺がここで働きたいと思ったんだ。ここな
        ら俺が成長できるって。」

叔父は笑いながら去って行った。両脇に生前何も関係もない取り巻きを連れて。

取り巻き「大変な叔父を持ったな。」

小声で励ます取り巻き。いや?挑発か?どっちでもいい。俺はその日、夜通し家の近くの水門で泣き散らかした。朝になって漁師たちが海に出ていくの眺めながら全員に怒鳴ってた。

俺「お前らの叔父は!!」

よく分からなくなっていたが多分そんなことだろう。俺は叔父を無視するようになった。

                               〜4ヶ月後〜

俺の居酒屋で叔父の兄弟分であり友人Aが帰省をして飲んでいた。叔父と共に。俺は叔父に対して反抗期真っ只中だ。夜は老け、明日は速い。マスターは俺に「明日があるから帰っていいぞ」と言った。俺は真に受けカウンターの2人に上がることを告げ帰ろうとしたが叔父に止められて友人Aと共に飲むことを勧められた。だが俺は拒否をし少々荒らげた声で怒鳴り帰ろうとしたが店の前まで叔父は追いかけてきて俺の胸ぐらを掴んだ。

叔父「なんだその態度は。」

俺「うるせぇ。」

叔父「髪も金髪にしてイキんな。」

俺「うるせぇ。」

攻防の末、気が付くと馬乗りだ。まだ喧嘩慣れのしていない俺は叔父にとって玩具同然だろう。濃くなる鉄の味。溝内を殴られすぎてウンコ漏らしていた。首を絞められ息ができない。横目で見える道行く人々のあの冷ややかな目。

                       “一体、誰を見てるんだ?”

そんな思考はもう追いつかない。息が出来ない。

叔父「降参しろ。」

俺「う……うるせぇ。クソ野郎。」

叔父のでかい手が俺を顔面を覆いかぶさりどんどんを俺を溶かす。食い込む爪、多くなる痣、どんどん苦しくなる喉。叔父の胸ぐらを掴んではなさい俺の右手は痺れてくる。悶える。

叔父「降参しろ。」

俺「殺してみろ。」

叔父はスっと立ち上がり店に入った。マスターも苦笑で店に入り友人Aも入って行った。俺は冷たい背中を起こしアドレナリンでガチガチに震え上がった体を起こして店に入った。

叔父「どうしたいんだ?」

俺「縁を切りたい。」

友人A「それは辞めろ。」

叔父「……。お前の親父や妹、母親も全てと俺が
            縁を切るんだぞ。お前は従兄弟にも会えな
            い。」

俺「妹は関係ないだろ!」

叔父「縁を切るってのはそういうことだ!
           軽はずみに言っていい事じゃねぇ!
           家族丸ごといなくなるんだよ!」

俺「嫌だよ。」

友人A「そうだよ。」

叔父は俺への期待をぶちまけた。そして長く長く俺への愛を語った。両親にすら言われたことのない言葉だらけだ。そして今まで俺を褒めた事のない叔父が唯一褒めた。

叔父「それでも降参しなかったお前は根性ある
            よ。普通はする。やるなぁ。」

クソほど憎んでいた奴からこんな風に褒められと嬉しいもんだな。俺は長い夜に終止符を打った。

それから叔父とは喧嘩はしてない。叔父も俺を認めるようになった。というかお互い薄い壁が出来た。触れちゃいけない。なにか薄い壁。氷の様に冷たく薄い。正直、今まで嫌いだった叔父が良き理解者になり俺にとってかけがえのない親友になって行った。
俺にとって喧嘩初戦はこんなものだ。何かを理解し合う為に殴りあった2人、それを見る2人、それを見て飲み屋の姉ちゃん達への話の話題にするクソ野郎共。俺はそいつら全員をぶっ殺す。その時はそう思ってなくてもそうなることは必然だった。

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