何もないのがいい
旅先で岬めぐりをしていた。
車ですぐにいけない岬に出会った。
車は侵入禁止になっていて、徒歩25分という看板がある。
行くか行かないかちょっと迷う。
ちょうど、反対方向から帰ってきたばかりのおじさんに
どうでしたかと聞いてみると、「何もないけれど、よかったよ。」と言われ
行ってみようという気になり歩き出した。
少し砂利道を歩くと、木道。そして、木道の脇には水芭蕉の群生。
水芭蕉は見たいと思いながら、まだ見たことがなかったので
なんだかとってもうれしい。
木道をずーっとまっすぐに歩いていくと、視界が開けて海が見えてきた。
あるのは灯台と海と空だけ。他には何もない。
でもそれがいい。
何もないのがいい。
何もないから人も少ない。
でもぜいたくな空間だった。
何もないようで、ある。
ただ、ある。
ただ、それだけでいい。