ビル丸ごと楽器屋
※2023年8月にOFUSEにて配信されたコラムを編集し再掲したものです。
親愛なる友だちへ、ひねもです。
この間、韓国に行ってきた。
海外でも楽器屋とレコード屋に行く。
日本にいるときとあんまり変わらない。
韓国の専門店の在り方
韓国では専門店が密集している場所を”◯◯通り/◯◯横丁”と呼ぶことが多い。
例えば鳥1羽を豪快に煮込んだ”タッカンマリ”という料理が名物の場所はそのまま”タッカンマリ通り”と呼ばれる。
レバ刺しやユッケを食べたくなったら”ユッケ通り”に行く。
専門店なのでレバー、ユッケ、センマイなどのホルモン系のみを扱っている。
なので、この店で日本の焼肉のようにカルビをジューっと焼く事はできない。
肉を焼きたい場合は焼肉専門店に行くのだ。
焼き魚を食べたければ”焼き魚横丁“へ。
食事より酒をメインに楽しみたい場合は”ノガリ横丁”へ。
ビアガーデンのようなものだと思っていただければ合っている。
韓国式ソーセージのスンデを食べさせる場所は”スンデ通り“
しかしこの場合は通りに路面店が連なっているわけではなくビルの中に専門店がひしめき合っている。
歴史や成り立ちは様々だが少なくとも10軒以上の専門店が密集している場所がたくさんある。
日本だとあまり見ない光景だ。
”銀座と言えば寿司屋が有名“というイメージはあるが、何十軒も連なって密集している通りはないはずだ。
秋葉原にゲームセンターが10軒連続して建ってる通りとかもない。
広島の”お好み村“は成り立ちも雰囲気も韓国のそれに近いかもしれない。
楽器を買いたいときは
ここからが本題。
韓国で楽器を買いたいときは
”楽園楽器商店街/ナゴンアッキサンガ / 낙원악기상가”
に行けば良い。
住所”ソウル特別市 鐘路区 楽園洞 284-6”
最寄駅”鐘路3街駅/チョンノサムガ/종로3가 “
駅を降りてすぐにある巨大なビル。
この中に楽器屋がひしめき合っているらしい。
パッと見では楽器屋には見えない。
入店
入ると本当にズラーっと楽器屋が並んでいた。
そして奥が見えないくらい広大な空間。
異世界に迷い込んでしまったかのようだ。
写真では全く伝わらないだろうが、どこまで歩いてもずーっと楽器屋さんがある。
信じられないくらいの数だ。
同じような通路が横にもう1つある。
つまりこのフロアだけで今見てる2倍はあるという。
それだけでも凄いのに、さらに上の階もあると知りさらにビックリ。
正確な数はわからないが、100店舗以上は余裕であるだろう。
ネットで調べたところ“約260店舗くらいで数千の楽器がある”という字も目にした。
それも嘘ではないだろうと思ってしまうくらいの規模感だ。
しかもイベントなどの特別な日ではなく、日常の通常営業でこれだけの店があるのだ。
日本の楽器屋街
日本では御茶ノ水駅周辺が楽器屋街ということになっている。
しかし韓国と比べてしまうと規模はかなり小さい。
途中に飲食店や大学もあり密集もしてない。
同じ楽器店が飛び地で複数店舗を営業しているだけだったりもする。
昔は個人がやってるところもあったらしいが、今はほとんど無い。
韓国では様々な個人店が密集していて凄い光景だった。
韓国の音楽
僕の中のイメージだと韓国というとアイドルグループや伝統音楽のトロット(日本だと演歌に近い)歌手がとても有名。
しかし、いわゆるロックバンドやミュージシャンをほとんど知らず楽器の需要がこんなに高いとは知らなかった。
不勉強で大変申し訳ないが韓国出身のギターヒーローがパッと思いつかないのだ。
韓国のロックバンドもドラマ”D.P. -脱走兵追跡官-“で若者たちがカラオケで歌っているシーンで知り来日ライブを見に行ったCrying Nutしか思い浮かばない。
韓国のプレーヤー達
どの店にもお客さんが入っていて、大賑わい。
とりわけアコースティックギターの試奏をしている姿をよく見かけた。
(韓国出身の弾き語り系ミュージシャンもパッと思い浮かばない...)
修理屋さんもたくさんあった。
看板を見ても読めないので雰囲気で判断するしかないのだが
・アコーディオンなどの特殊楽器修理の店
・トランペットなどの金管楽器修理の店
・弦楽器修理の店
...などいくつもの修理専門店があるようだった。
どこも大盛況で、特に弦楽器は大人気らしくリペアを待つギターが外まで並んでいた。
韓国にこんなにたくさんのギタープレイヤーがいるという事も恥ずかしながら全く知らなかった。
豊富な専門店
全て専門店なのでアコギやエレキなどパッと思いつく以外にも
・ギターケース
・エフェクターケース/アンプケース
・エフェクター
・ケーブル
・ピアノ
・マイク
・マイクスタンド
・アコーディオン
・スピーカー
・PA機材
・金管楽器
・ドラム
(もっとたくさんあったが)それぞれが専門店を営んでいるのだ。
つまりマイクを買う店とマイクスタンドを買う店は別々なのだ(どちらも売っている店もある)。
ギターケースのみを何種類も取り扱う店も初めて見た。
トランペットやサックスの専門店は日本にもあるだろうが、ハーモニカやカズー、リコーダー、ピアニカなどの(または民族系の)吹く楽器だけを扱う店があるのにもビックリした。
スピーカーの中身だけを売ってる店や、マイクやケーブルなどの内部パーツや周辺部品だけを売ってる店もある。
めちゃくちゃ凄い。
あとドラム専門店もたくさんあって、韓国ではドラマー人口も多いんだなと知った。
日本だと都内にドラム専門店は4軒くらいしか知らない。
日本では見かけないブランド&試奏
ギターも見た事が無いブランドばかりで面白かった。
ビザールギターとかマイナーギターはけっこう好きなつもりでいたが、初めて見るメーカーが多かった。
アコギやベースのイメージが強いCortのエレキも珍しい。
HEXってブランドのギターもユニーク。
店員さんに聞いたところHEXはアコギが有名だが最近はエレキも出してるらしく。
見た目が可愛くて値段もお手頃で買おうか悩んだ。
試奏もさせてもらった。
韓国語はわからないので拙い英語で心配だっが、楽器用語はどこの国でもだいたい同じなので通じた。
“セレクタースイッチはどうなってる?”
“これがトーンポットなのか?”
とか
“オーバードライブサウンドにアンプをメイクしてくれ!”
みたいな...。
日本には入ってきてないレアなギターだし、カラーもフェンダーのフィエスタレッドっぽくて好きな感じ。
だいぶ悩んだけど最近ギターもらったばかりなのと、テレキャスターは既に持っているし。。
通販可能なことを確認してから諦めた。
どうしても欲しくなったら帰国してから電話するね!って。
全店は回りきれず...
数が多すぎて全店は回りきれなかったが、試奏もできて満足。
大物は諦めてカズーをいくつかと、ピックとか細々したものを少しだけ買った。
まとめ
これだけの楽器屋が密集しているのに、どこも営業中ってことはそれだけの需要があるわけだ。
そこが凄い。
フェンダー、ギブソン、マーチンとかの高級ギターを扱う店もあるし、伝統民族楽器店もある。
マイクスタンド屋さんとか、アンプのスピーカー屋さんなどのニッチな店も含めてどのお店も生き残ってるってことはそれだけたくさん売れているということだ。
日本では楽器屋はどんどん減っていってるのに。
ネット通販全盛時代にこうして数百軒の専門店があるって奇跡としか思えない。
ブラザー、シスターズ、世界は広いなー。