「選択的夫婦別姓制度」というセキュリティホール
このアカウントで作るnoteの一発目がこれか、とは思いましたが、一度しっかり自分の中で言語化しておいた方がいいな、と思ったので書きます。
「選択的夫婦別姓制度」という言葉は知っている方も多いのではないかと思います。
ただ、現在出ている議論は賛成派だと「女性が男性の姓に実質的に強制されるから選べるようにするべきだ」というものが多く、反対派は「家族のつながりが切れてしまう」というものが多いように感じます。
私は結論から言えば反対なのですが、これらの議論とは違う理由で反対です。
セキュリティの観点からそのお話ができたらと思います。
あなたがあなたである証明ができますか?
当たり前のように感じていますが、「あなたがあなたであることを証明しなさい」と言われて、証明ができますか?
「そんなの、運転免許証でわかるやん」と思うかもしれません。
では、その運転免許証を作る際にあなたがあなたである証明はどうやってするのでしょう?
答えは、「住民票と健康保険証などの本人確認書類を提出する」です。
健康保険証だけで本人確認できるのでは?と思いがちですが、健康保険証は本人確認の書類としては不完全です。偽装が自由にできます。
そこで住民票と照合するわけです。
では、住民票があなたのものであるという証明はできますか?
実は住民票もそれ単体では本人だと証明できません。
住民票が住民票として機能するために大事なのが「戸籍」なのです。
かなり高い精度で「この人は存在しています」という事を戸籍が証明してくれるため、住民票作成時には「戸籍の附票」という書類と連動させておくことでその人がどこからどこに引っ越したか、だれと結婚してどういった家庭になってどこに住んでいるかということが記録されるようになっています。
下記のリンクが総務省の住民票に関するPDFです。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000533868.pdf
生まれたこと、結婚したこと、子どもが生まれたこと、亡くなったことを百年以上逐一記録してきた集合体が「戸籍」というものです。
セキュリティとしての戸籍制度
戸籍制度は本人確認として極めて信頼性が高いもので、それゆえに国単位のセキュリティとして機能しています。
「戸籍に載っていない」という事は仕組み上考えづらく、日本人として認定されません。
そのため戸籍が存在しない人物にはパスポートや運転免許などが取得できないなど、権利に大幅に制限がかかります。
ただし、親の都合で不利益を被った「無戸籍」の方は存在します。
そのため、法務局などでは無戸籍の方が戸籍に記載されるように啓発などを行っています。
政府広報のURLも記載しておきます。
無戸籍問題はそれはそれで大変な問題ですが、今回の話の本筋とは違うので割愛します。
「不法に入国し、国に対して不利益を与える存在」をガードする役割として戸籍は機能していると言えます。
各国でも類を見ない制度
戸籍制度のみを見れば少数ですが海外でも存在します。
しかし、日本のように厳密な戸籍制度の運用ができているのは台湾ぐらいしかないそうです。
ではどうするか、例えばアメリカでは出生、婚姻、離婚、死亡などの証明書を総合して認定されているそうですが、それでも真実性があるとはいいがたいため、番号による識別制度が存在します。
よく日本は手続きが大変だという話は聞きますし、私が父の死後の手続きをした時も確かに大変でした。ただ、そのおかげで「戸籍さえ存在すれば本人認証は容易に可能」というメリットを享受できているわけです。
一度途切れたら復旧不可能
ただ、この人の戸籍制度の信頼性は「ずっと記録し続けている」からこそ機能しているわけです。
一年でもその記録が途切れてしまうと、その信頼性は一気に崩れます。
そのため、一部の人が言っている「ダメなら戻せばいいじゃん」は、こと戸籍制度に関しては不可能です。
本人の認証が甘くなれば、そこに抜け道ができてしまう
戸籍が無くなればアメリカのように番号管理+様々な証明書での本人認証になります。
先述したとおり、戸籍制度に比べて信頼性は下がってしまいます。
そうなればその抜け穴を狙っての不正が横行してしまいます。
後で触れますが、法の抜け道を作ってしまうと、治安が大きく損なわれます。
選択的夫婦別姓制度は、戸籍にかかわってくる
ここまで戸籍の話をしましたが、本題は「選択式夫婦別姓制度」です。
字面だけみると、戸籍は関係ないじゃん、と思いがちです。
ただ、そうではありません。
旧姓による通称使用は現在でも認められている
現在、結婚後に旧姓を名乗ることができないかというと、そんなことはありません。
戸籍上は配偶者の姓になってはいても、仕事上の通称では旧姓は認められており、使用範囲も拡大しています。
現時点の議論では「別姓家族でも同じ戸籍になる」と言っているけど…
現時点での検討会などでは、別姓家族でも同じ戸籍になるというような話も出てきています。それなら文句ないだろう、と。
しかし、それでは結局「配偶者の戸籍に入る」わけで、女性の立場が、アイデンティティが、という話から考えると、本質的に別姓じゃなくね?と思いますし、「銀行口座の作成が~」であれば、それこそ旧姓使用をそこまで拡大すればいいのでは、と思うわけです。
後で穴を広げるための「選択的」という言葉
中国の韓非子の言葉に「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ」というものがあります。
「蟻の穴から堤の崩れ」や「蟻の一穴」とも言われていますが、要は、大きな堤防も小さなアリの穴から崩れてしまうという意味です。
最初に大きな穴を作る必要はなく、みんなが共感しやすい、ちっちゃな穴でいいのです。
一旦穴を作れば、「戸籍が一緒なのも女性のアイデンティティを損ねている、別戸籍でも婚姻関係を認めるべきだ」と言ってしまえばなし崩しに崩れていきます。
戸籍制度を完全破壊する必要はないんです。穴が欲しいわけですから。
攻撃者は「セキュリティホール」を攻めてくる
パソコンのセキュリティでは当然の認識ですが、外部から攻撃を仕掛けるときは、システムの不完全な部分(セキュリティホール)を突いて攻撃の足掛かりとします。
これは国同士の話でも同じことがいえます。制度の抜け穴ができてしまえば、そこを突いて自国の人間を送り込むことが可能です。
別にスパイを入れるなんて大層なことをする必要はありません。
自国の人間を相手国で養ってもらって、相手国の治安が悪化すれば、さらに付け入るスキができるので、ただ送り込めばよいのです。
費用がかからないどころか、その人の分の費用が浮くので極めて効率的です。
穴さえあければ、後は拡げるだけ
選択式だから、別姓を認めてくれ
→やっぱり別姓だけじゃダメ、戸籍も別にして婚姻関係だけ認めてくれ
→除籍ができなくなるが婚姻関係は記述する必要があるため、戸籍の記述が複数になる
→2世代、3世代と続くと記述が一気に煩雑となり、管理ができなくなる
→戸籍の偽装が容易になる
そんなことになるか?と思うかもしれません。
ただ、攻撃する方にとってみれば攻めるための入り口ができればそこを突けばよいだけです。
逆に守る方はあらゆる攻撃を想定してルールを定めないといけなくなります。
制度設計がありえないほど難しくなります。
結果、いわゆる「ザル法」ができてしまうわけです。
そんな法律を悪用なんて実際におこらないよ、と思う方。
実例があるんです。
法律の抜け穴の代表例
近年、外国人による犯罪がニュースで日常的に見るようになってきました。
その大元は2010年にまでさかのぼります。
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003743.pdf
上記PDFは法務省の入国管理局のPDFです。
2010年から難民申請後半年間で一律に就労を認めるように運用を変更しました。
それによって就労目的で難民申請を行うケースが一気に増えました。
2015年から再度制度を見直したものの、申請数の増加は止まらず、2018年にさらに改正したことで減少しだし、紆余曲折の末に2024年の6月に改正入管法が施行されて、難民申請を出し続けて居座るという抜け穴がふさがったという結果になりました。
このように、法の運用は一度緩めてしまうと厳しい運用に戻すのは至難の業です。
結果、一部地域が自治区ができたかのような状況になってしまいました。
法の抜け穴を利用した実例がある以上、ルールは安易に緩めてはならないのです。
選択的夫婦別姓は戸籍を壊す蟻の一穴。
直接的に戸籍法を緩和しろ、というと「何で?」となって賛同が得られないので、「自分の名字を名乗ることを認めるぐらいいいじゃん」というところに落とし込んだテクニックは、認めたくないですが非常にうまいやり方です。
ただ、選択的夫婦別姓制度を押しているのが野党と一部与党、そして経団連。
個人的に共通していると感じているのは隣の巨大国家と非常に仲のいい方々ということです。
韓非子もその国の方ですね。
孫氏の兵法がいまだに勉強になるように、戦略に長けた国だと思います。
伝統的な家庭観がどうこう、ではなく、もっとリスクのある話としてこの制度は認めてはいけないと感じています。
感情論で「かわいそうだ」と法の緩和を訴えてくるときは、眉に唾をよく塗って望みたいものです。
今後もこのような記事を書いていきます。
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