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恒大集団をどのように倒産させる?~リーマンショック、日本バブル崩壊を参考に~

恒大集団については、過去、何度かYouTube動画を公開しているのですが、これについて補足する意味で、記事を書きたいと思います。

恒大集団は、なぜ、なかなか倒産しないのか?

恒大集団の危機が広く報じられるようになってから、はや2年が経過しました。
実際、経営危機であることは間違いないのですが、倒産しません。

なぜでしょうか?
「理想的な倒産をさせようとしている」からだと思います。

倒産というと、悲惨なイメージ、ネガティブなイメージがつきまといますが、現実の倒産は様々です。
悲惨な倒産もあれば、見事な倒産もあります。
見事な倒産とは、事業と従業員をできるだけ守り、債権者にできるだけ多くの配当を行うものです。

ただし、恒大集団は非常に規模が大きいため、このような通常の倒産のスケールでは測れないところがあります。

そこで、リーマン・ショックを振り返ってみたいと思います。

1.リーマン・ショックで得をしたのは誰か?

リーマン・ショックで得をしたのは誰か?と問えば、まっさきに思い浮かぶのは、映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』にもなったマイケル・バーリでしょう。

視点を変えて、マクロ的に見てみましょう。
大局的に見れば、アメリカで住宅バブルが発生し、信用力の低いアメリカ人に世界中の投資家がお金を貸したのが、サブプライムローン問題です。(実際には、アメリカの金融機関が貸したお金を証券化して、世界中にバラまいた。)
そして、信用力の低いアメリカ人たちがローンを返せなくなって、住宅バブルが崩壊するとともに、サブプライムローンが暴落し、世界中の投資家が損失を被りました。

では、アメリカで大量に建設された住宅は、どうなったのでしょうか?ローンを返せなくなっても、サブプライムローンが暴落しても、リーマンブラザーズが破綻しても、一度、建設された住宅は、残ります。
所有者は変わりますが。
まずは担保にとっていた銀行が召し上げて、それをアメリカにおいて体力のあった企業や個人が、暴落した住宅を買いあさったことでしょう。

すなわち、世界中の投資家は損失を出したが、アメリカに住宅は残り、アメリカ人のものとなりました。
アメリカは、人口が増加し続けている先進国です。住宅は、いくらあっても困ることがありません。

見方によっては、アメリカが、他人のお金で、アメリカ全土に大量の戸建て住宅というインフラを獲得した、といえるでしょう。

リーマン・ショックで得をしたのは、アメリカです。
(もちろん、アメリカのなかでも得した者、損した者、いたでしょうが、トータルで見れば、得の方が大きかったでしょう。なぜなら、海外の投資家たちは、みんな損したからです。)

2.恒大集団をどのように処理したいか?

このように考えると、恒大集団を中国政府がどのように処理したいか、想像できます。

恒大集団が抱える債務のうち、対外債務(海外の投資家からの債務)については、すべて踏み倒し、国内の建設企業などに対する負債(買掛金・未払金等)はすべて支払う
これが理想的な解決です。時間をかけてでも、このような方向での解決を目指すでしょう。

これができれば、2008年のアメリカと同じく、海外の投資家のお金で、中国国内に住宅というインフラを大量に構築できたことになります。
(実際には、質の低い建物も多そうですが)

2008年のアメリカと違うのは、中国の国内企業に対する買掛金・未払金が残っていることでしょう。
これを残したまま恒大集団を倒産させてしまうと、連鎖的に、下請け・孫請けと倒産していってしまいます。

この点、2008年のアメリカが見事だったのは、国内建設企業に対する代金は、金融機関からの融資できっちり払えていることでしょう。
そして、その融資を証券化して、世界中にバラまきました。
アメリカ国内の建設企業には、きっちり支払い、世界に損失を押し付けた形です。(もちろん、リーマン・ブラザーズなど、アメリカ企業もダメージを受けたわけですが、それでも大量の住宅がアメリカに残りました)

対外債務は踏み倒し、国内債務は支払う(少なくとも突然の倒産という形は避ける)ためには、海外投資家とハードな交渉をし、国内企業には計画的に支払っていく。当然、倒産するまでに時間がかかります。というより倒産させるとは考えにくいです。

2023年8月17日、恒大集団がアメリカの裁判所に連邦破産法の適用を申請しました。これも、上記のような狙いの一環であると見ています。

3.日本のバブル崩壊から何を学んだのか?

中国政府は、日本のバブル崩壊とその後の長期低迷を研究していると思います。
日本のバブル崩壊は、長期的な不動産価格の下落をもたらしました。

この「長期的な」というところが、よくないのです。
なぜなら、
不動産価格が下がる→担保価値が下がる→新たな融資ができず、むしろ貸し剝がしが起こる→経済が停滞し、さらに不動産価格が下がる
という悪循環に陥るからです。
この悪循環の過程で、徐々に銀行が弱り、金融危機にもつながります。

悪循環に陥るという点と、金融危機につながるという点が良くないです。

このことを中国政府は学んでます。

ですから、今、中国で行われていることは不動産の価格統制です。
安売りの禁止です。
現実には、不動産が売れない。でも、安売りはできない。
だから、「不動産を買ってくれたら、○○をプレゼント」というプレゼントが提供されるわけです。これは実質的な値引きです。
しかし、形式的には不動産を値引きしたわけではないし、中国政府が発表する不動産価格データにも悪影響を与えない。

仮に恒大集団を倒産させてしまうと、恒大集団が保有する不動産が、処分価格で売り出され、一気に不動産価格の崩壊をもたらしてしまいます。
このため、やはり恒大集団を倒産させるわけにはいかないのです。
ちょっとずつ、在庫不動産を販売し、そのお金を国内事業者への買掛金・未払金の支払いに充当する。対外債務は踏み倒す
こうして、時間をかけて解決しようとしているのでしょう。

4.恒大集団の処理方法

以上、まとめますと、
・対外債務は踏み倒し、国内債務は支払う(少なくとも突然の倒産という形は避ける)ために、海外投資家とハードな交渉をし、国内企業には計画的に少しずつ支払っていく。
・恒大集団が保有する莫大な不動産は、時間をかけてゆっくり換金していく。
この結果、倒産させるにしても5年10年かけて、ゆっくりと倒産させていくと思います。

中国政府の思惑通りいくのか?

1.次の恒大集団が現れる

恒大集団の処理に限定していえば、中国政府の思惑通りに事を進められると思います。

しかし、第2、第3の恒大集団が現れてくるでしょうし(例えば碧桂園)、金融機関の破綻も発生するでしょう。地方政府の実質破綻も次々に起こるでしょう。

2.不動産価格の下落と経済のマイナス成長時代が到来する

こうなったときに、
・不動産価格の継続的な下落
・経済のマイナス成長
は、避けられないでしょう。
不動産価格の継続的な下落は、既に、おまけ販売という実質値引きで発生しています。
また、中国はGDPに占める不動産の割合が大きいうえ、地方政府の税収が不動産の売却に頼っているなど、経済全般が不動産に依拠するところが大きいです。よって、GDPが過去のように10%成長するなど、考えられませんし、8%、5%も無理でしょう。良くて2%、下手すればマイナス。という状況に陥ると予想しています。

3.総人口、生産年齢人口が減少し、デフレの時代へ

この背景は、
・これまで不動産バブルだった(不動産に依拠しすぎた経済成長だった)
ということもあるでしょうが、やはり大きいのは、
・中国が総人口減少、生産年齢人口の減少時代に突入している
ということでしょう。
日本のようにデフレに突入するのではないでしょうか。

世界が懸念するのは、中国の政情でしょう。
ロシアにて盤石に思えたプーチン政権も、プリゴジンの行動で、実は盤石でない、ひっくり返し得る。と見えたと思います。
中国政府も盤石に見えて、実は盤石でないかもしれません。
中国には多数の核兵器がありますし、宇宙空間に浮かぶ衛星等への攻撃準備も万端です。

ともかく中国の時代は終わり、今、インドの時代が始まっています。


参考:恒大集団に関するひねけんのYouTube動画

https://youtu.be/JsiiaQImXfU

https://youtu.be/tua3P6SCULk

https://youtu.be/DBEf8D5UDbE

https://youtu.be/JzlUqtBxfSE

https://youtu.be/vMHIIIISLyc






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