株式投資との付き合い方 ~自由で多様に~
今日は、株式投資との付き合い方について書きたいと思います。
このテーマについて書こうと思った理由は、さまざまなところで見かける個人投資家のメッセージの裏側に
「株式投資とは、お金を稼ぐためのもの」
「株式投資の成果は、金銭(すなわちパフォーマンス)」
という暗黙の前提を感じることが多いからです。
そのような価値観を否定するわけではありません。
もっと多様な価値観があるはずだよね、ということを確認したくて、この記事を書こうと思いました。
1.何のために走る?
多くの人たちがランニングしています。
皇居の周り、公園、道路など、いろいろなところでランニングしている人たちを見かけます。
この人たちに「何のために走ってるのですか?」と聞けば、
「次の大会で3時間を切るために」という人もいるでしょうが、
「次の大会で何時間かかってもいいから完走するために」という人もいるでしょう。
でも、そもそも大会に出る予定もなく
「健康のために」という人もいるでしょうし、
「ただ、走るのが好きなんで」という人もいるでしょう。
ランニングする人によって、その目的は多様です。
各人が、自分でランニングする目的を自由に決めることができます。
ランニングの目的は、自由で、多様です。
ランニングに限らず、人が行う活動の目的は、自由で、多様なものであるはずです。
2.株式投資の目的は、お金を増やすこと?
ところが、株式投資になると、なぜか勝手が違います。
個人投資家に「なんのために株式投資をしているのですか?」と聞けば、
どんな答えが返ってくるでしょう?
「お金を増やすため」
「お金を増やすため」
「お金を増やすため」
このような答えばかりが返ってくることに、あなたは違和感を感じますか?
感じませんか?
私は、違和感を強く感じます。
誤解してほしくないのは、そのような意見を否定しているのではない、ということです。
そうではなく、そのような意見ばかりである、ということに疑問を呈しているのです。
株式投資の目的が、不自由で、画一的であることに対する問題提起です。
もっというと、
「高いパフォーマンスで運用する人は立派」
「プラスで運用できない人は馬鹿。株式投資なんてやらないほうがいい」
これに近いような言説をたくさん見かけませんか?
でも、本当にそうでしょうか?
なぜ「高いパフォーマンスで運用する人は立派」なのでしょうか?
なぜ「プラスで運用できなければ、株式投資やらない方がいい」のでしょうか?
それは、前提として「株式投資はお金を増やすためのもの」という価値観があるからです。でもそのような価値観は、たくさんある価値観のなかのひとつにすぎないはずです。
ところがなぜか、個人投資家の間では、これが支配的となっているように感じられて仕方がありません。
個人投資家に蔓延する、この一面的な価値観に、強い違和感を感じているのは私だけではないはずです。
おそらく、そのような違和感を感じる人は、そもそも株式投資をしていないと思います。
が、なかには、私のように株式投資をしている人の中にも、同じ違和感を感じている人がいるはずです。(いてほしいです。)
3.株式投資の目的は、自由で多様である
株式投資の目的は、もっと自由で、多様であっていいはずです。
「好きな企業だから応援したくて」
「父が昔から大好きで保有していた企業の株だから、その想いを継いで」
「自分が勤めている企業で株主としても経営参画したいから」
「この会社の商品が好きだから応援するために」
「母がこの企業の医薬品に助けてもらったから感謝の気持ちを伝えるために」
「いつも宅配便を届けてもらってるからお礼の気持ちを伝えるために」
いくらでも、株式投資の目的は存在するはずです。
ところが、WEB記事、YouTube動画、SNS、その他、様々な媒体で見かけるメッセージは、
「株式投資は金儲け」
「パフォーマンスがその人の能力と価値を示す」
というような暗黙の前提です。
「母がこの企業の医薬品に助けてもらったから、感謝の気持ちを伝えるために」その企業の株式を買い、保有したもののの、その後、大きく株価が下がり、含み損が膨らんでいったとしましょう。
この株式投資をどう捉えたら良いでしょう?
私は、素晴らしい株式投資だと考えます。
株式投資の目的は、お金を増やすこととは限らないし、その成果の評価もパフォーマンス(投資リターン)で行う必要などないのです。それは、多様な価値観のひとつでしかありません。
ものごとの成果を「お金が増えたかどうか」だけで評価するような社会にだけは、なってほしくないです。
個人投資家を、クモの巣のよう捉え・絡めようとする、この一面的な価値観に対して、注意深くありたいです。
4.個人投資家と機関投資家の違い
このように個人投資家にとって、株式投資の目的が自由、多様であることができるのは、個人投資家が自らの資金を運用しているからです。
「自分のお金なんだから、どのように運用したって、自由」
ということです。
だから、個人投資家は、どのような目的で投資をしてもよいし、パフォーマンスを他者と比較する必要も、まったくありません。
これに対し、機関投資家は、第三者から資金を預り、報酬を得て、資金を運用していますから、株式投資の目的が自由で多様というわけには行きません。
「リスクを押さえながら、パフォーマンスを求める」のが機関投資家の責務です。だから、機関投資家は、パフォーマンスを比較されます。
個人投資家は、そもそも自由な存在なのですから、パフォーマンスにとらわれることなく、自由に多様に、株式投資を楽しめばよいと思います。
株式投資は、本来、とても楽しいものです。
楽しみましょう!