お題&タイトル バラ園未解決事件 2000文字以内。
「どうしてこうなったか? そんなの決まってるよ。蒼が変な事言うからさ。俺は弱虫じゃないからな! 笑うなよ」
「バカだなぁ。怖いなら怖いって言えば良いのに。佐久は意地張りすぎ」
俺は憮然として遥を睨むと、
「でっ、結局辿り着けなかったと言う訳か」
黙っている俺の肩を叩き、遥が笑う。
「じゃぁ! ふたりで行くぞ!」
俺がキョトンとしていると
「何? 俺とでも怖い?」
「だから、怖くないって!」
遥は俺を抱き締めると
「佐久となら、何処へでもいける。楽しみだな」
俺は遥を押しやる。
「じやぁ、明日ここに集合。持ち物は食物、飲物、タオル、上着、お金、携帯、懐中電灯ぐらいかな」
「遠足か。こんなにいる?」
「呆れるぜ! 用意周到って言葉知らないの。だからこの間みたいになるの!」
遥に頭を小突かれるのを除け
「判った。何時に集合する」
「そうだな、朝六時、それと歩きだからな」
そして俺たちは別れた。
中一、八月の話。
翌日時間ビッタリに集合する。いざ出発! 目指すは町の反対側にある謎のバラ園だっ! とにかく噂が噂がを呼んでるんだ。例えば、バラ園に足を踏み入れると棘か飛んで来て体中に刺さるとか、呪われた老人がいて目が合うと動けなくなるとか、凄いのはバラに為れると……あり得ないと思うけど死ぬとか。大人も気味悪がって放置してる場所だ。
迷子にならないよう俺は地図を書いてきたが、遥に見せたら腹を抱えて笑うから蹴飛ばしてやった。
「ごめん、ごめん、然し判りやすい。ここが役場、ここが原山だろう? でっ、バラ園がここ!
佐久制作の地図に従って進むぞ!」
この遥は、五月に東京から転校してきたんだけど、俺には妙に懐いて来たんだよ。
「なぁ佐久、俺歩くの速い? 大丈夫?」
「大丈夫! チビですけど、歩きなれてるからね」
「疲れたら言ってよ」
黙って頷く俺の頭を撫でる。
「もう~やめろ~年下じゃないんだから!」
遥が笑う。俺も笑う。
少し早いが、お昼を食べて小休止してバラ園を目指す。
原山は小山で、それを越えるとバラ園がある。
「見て! バラ園だろう? あれ」
「だよな。バラがないじゃん」
「確かに」
俺たちは駆け下りて、バラ園の前に立ち辺りを見回す。静かだ。
人の姿は見えない。
「入るか」
遥に言われビグッとしたのを見られ、手を繋がれてしまった。
「大丈夫だよ!」
「シッ! 行くぞ……」
俺たちは抜き足差し足、バラ園を進んで行った。
所々に可愛いバラが咲いている。「おい! 誰だ!」
背後から途轍もなく大きな声がした。ふえ~俺たちは腰を抜かしてしまった。
「僕たちは怪しい者ではないです」
遥が小さな声で言うと、
「ほぅ? 何しに来た」
「はい……町に伝わるうわ、いや……バラ園未解決事件を確かめに来ました」
遥は声を張りきっぱり言い切った。何? そんなの聞いたこと無いけど。
「バラ園未解決事件? なんだ?」
老人も思案顔だ。
「まあ、要するに良くない噂話を確かめに来たんです。バラに為れると棘が四方から飛んでくるとか、後なんだっけ?」
「えっとえっと……老人と目が合うと動けなくなるとか……」
老人は笑い出した。
「確かに、合ってるぞ、お前ら動けないからなヒヒヒ、まあ何だ、暑いから母屋で話すか」
俺たちはズボンの泥を払いながら老人の後に続いた。
部屋は涼しくて気持ち良かった。冷たい麦茶も問題なく美味かった。
遥は部屋を見回し、一枚の絵が気になった様子だった。
「おじさんの大切な人?」
その言葉に釣られて俺もその絵を見ると、描かれているのは、優しい眼差をした男の人だった。
「……そうだよ……大切人だ」
俺は、バラ園が背景だと気づき、
「ここだよね。ふたりで造ったの?」
「……いやそいつが造ってな。俺の為に」
「すげぇなぁ! 親友なんだ」
俺と遥と一緒だと言おうとしたがその前に遥が、
「ここは何色のバラが咲くの?」
遥は物凄く真剣に聞いてる。
「ブルーローズ」
「ブルーローズかぁ」
「ああ、嬉しかったさ。一面に咲くブルーローズを見ながらほんの少し一緒に暮らせたよ」
「青いバラなんてあるの?」
「あるよ……今度春に見においで二人でな」
「名前聞いてなかったな」
遥はノートを出して書いて見せた。
「俺ははるで、あいつはさくです」
「良いね、はるにさくかぁ 遥くん。君の思い大切してな。彼はまだ気づいてないけど。じいさんには痛いほど伝わってくるなぁ。」
俺がトイレから戻ると、遥が目を擦っていた。
「如何したの? 遥目が痛い? 目薬あるよ」
「大丈夫だよ……佐久帰ろ」
「お邪魔しました」
「あっそうそう、事件は未解決のままでな」
「はい! 勿論! また来ます」
オレンジのバラを六本つづ
お土産にと言って包んでくれた。
「本数に意味があるんだ」
と教えてくれた。
俺たちの冒険? 遥言うところの
「バラ園未解決事件」は未解決のままという事にしたよ。
ある春の日俺たちはブルーローズ六本を送り合った。
六本はあなたに夢中。
ブルーローズは夢は叶う。
終
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