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30-芽実と陽菜の体育祭
陽:いてて……
体育祭を一週間後に控えたある日、陽菜は体育の授業中に足を捻ってしまった。
※:陽菜、大丈夫?
陽:ん~、たぶん……
親友に支えられながら保健室に向かう。
(ガララッ……)
潮:あら?陽菜ちゃん、どうしたの?
陽:足捻っちゃいました…(笑)
潮:あらら……
そう言って、陽菜を保健室内の椅子に誘導する。
※:それじゃ、私は行きますね?
陽:ありがとね!
潮:ちょっと、靴下失礼するね?
潮先生が陽菜の靴下を捲ると……、
潮:結構腫れちゃってるね…
陽菜は、湿布を貼ってもらいしばらく安静にすることに。
芽:……張り切り過ぎや…(笑)
保健室の机で勉強していた芽実が声をかけてきた。
陽:えへへ……(笑)
芽:体育祭は陽菜ちゃん、何の競技やるん?
陽:え~っと…、部活対抗リレーと大縄跳びと障害物リレーとクラス別対抗リレーです
芽:リレーばっかやん(笑)
陽:芽実さんは?
芽:私は出ぇへんよ?
陽:え~、出ればいいのに…
芽:やだよ~、責任押し付けられたないし……
それ以上言っても無駄だと思った陽菜は諦めた。
(コンコン)
先:佐々木~、怪我は大丈夫か?
すると、陽菜の体育の教科担任がやってきた。
陽:どうだと思います?
先:知らねぇよ(笑)潮先生どうなんですか?
潮:そうですね~…、今日一晩経って痛みがひかないようだったら、病院で詳しく診てもらうしか……っていう感じですかね
先:そうですか……
陽:…体育祭はどうなります?
先:…佐々木、体育祭に出たい気持ちは分かるが、まずは自分の体だ
陽:はい……
この日は久美たちに迎えに来てもらい、念のためその日のうちに整形外科に診てもらった。その結果、骨などに異常は無く数日後には元通り動けるようになった。
そして、体育祭当日、
陽:あ~、晴れて良かった~!
※:ほんと、暑すぎるくらいだよ(笑)
晴天の中、陽菜たちはグラウンドに集まっていた。
校長:ただいまより皇海学園中等部体育祭を開式いたします!
そして、体育祭が始まった。
陽:芽実さんどこにいるかな~
最初の出番まで時間があるので、陽菜は芽実を探していた。すると、クラス担任に出会った。
先:?どうしたんだ?応援しないのか?
陽:養護スペースってどこですか?
先:…あぁ~、松田のこと探してんのか?
陽:はい
先:松田なら体育館の軒下にいるぞ
陽:ありがとうございます
先:出番までには戻って来いよ?
陽:は~い!
そうして体育館の方へ向かうと、
芽:…陽菜ちゃん何でこっち来たん?
陽:芽実さんと一緒にいたいからです
芽:…何あほみたいなこと言ってるん……
陽:芽実さん、指スマやりません?
芽:はい⁉
マイペースすぎる陽菜に驚愕する芽実。しかし、
芽:…ええよ
まさかの了承。次第に陽菜の扱いにも慣れてきたようだ。
陽:いっせ~の、2
芽:いっせ~の、1
陽:いっせ~の、~~
しばらく指スマをやっていると、
司会:続いては部活対抗リレーです。選手はグラウンド中央に集まってください
陽菜の出場種目のアナウンスが流れた。
芽:いってらっしゃい
陽:いってきます!
陽菜は小走りで集合場所に向かっていった。
リレーも進み、次は陽菜たちの番になった。スタート位置に着くと、
芽:陽菜ちゃん、ファイト
芽実がコースの近くまで応援に来ていた。
陽:👍
バレー部のボールがやってきて、陽菜にパスされる。
陽:よし!
※:陽菜!行け!
ボールを落とさないように走り出す。ボールに集中しすぎてコースアウトしないように注意しながら走ってゆく。次の走者が目の前まで近づいた。
陽:はい!パス!
※:ナイス!
何とか順位をキープし次の走者に渡すことが出来た。最終的なバレー部の順位は4位となった。
陽:はぁ~、疲れた…
※:陽菜、次大縄だよ(笑)
陽:うわ~、そうじゃん…
すぐさま大縄のポジションにつく。
司会:よーい…、ドン!
※:せ~のっ!
全員:1!2!3!4!5!……
途中引っ掛かりながらも陽菜のクラスは回数を重ねていく。結果は……、
司会:1位……、2年2組、183回!
何と校内1位を獲得。陽菜はスキップで芽実のもとへ向かう。
陽:芽実さん!1位でしたよ!
芽:ふふっ、おめでとう。ちゃんと見てたで?
陽:あ~、落ち着いたらお腹減ってきました…
芽:そろそろお昼やない?
すると、お昼のアナウンスが流れた。
司会:ただいまよりお昼の休憩に入ります
陽:芽実さんはどこで食べるんですか?
芽:普通に保健室かな…
陽:じゃあお邪魔します
芽:潮先生にオッケーもらったらな?
陽:は~い
陽菜は教室に戻ってお弁当を取った後、保健室に向かおうとすると、
※:陽菜、どこに行くの?一緒にお昼食べようよ
陽:ゴメン、先約があるから!
親友からのお誘いがあったが、断って保健室に向かう。
(コンコン)
陽:失礼します
潮:いらっしゃい、芽実ちゃんから聞いてるよ
芽:結局許可なしで来たやん…(笑)
陽:まぁ、結果オーライってことで!いただきます!
芽:もう……(笑)いただきます
2人向かい合ってお弁当を食べる。
芽:……そういえば最近〇〇さん、どうなん?
陽:GWに帰ってきましたよ?
芽:そうなんや…、会いに行けばよかったなぁ……
陽:会いに行っちゃえばいいんじゃないんですか?
芽:それはさすがに迷惑過ぎて無理よ…、お金も無いし……
そんな話をしながらお昼を食べ終え、午後の部に移る。
司会:ただいまより障害物リレーを開始します
陽菜は第三走目の借り物競争に出場する。
司会:よーい、ドン!
第一走者の運命走の選手たちがスタート地点から左右に広がる。
司会:それでは先生方、旗をお上げ下さい!
右1左2となり、選手たちが左側に全力疾走してゆく。
※:佐々木!
陽:うん!
陽菜たちの番になり、第二走者のドリブル走の選手からバトンを受け取り、借り物の札が置かれている机へ向かう。
陽:お題は……、『同性の先輩・後輩』?
陽菜はノータイムであるところへ駆け出す。
陽:芽実さん!行きますよ!
芽:え?分かった
体育館のところにいる芽実の手を取り、グラウンドへ戻る。
※:佐々木~!早く~!
※:陽菜~!
グラウンドの外に行ったせいで、タイムロスになってしまっていたようだ。
芽:陽菜ちゃん、急ぐで!
そう言うと、芽実は逆に陽菜の手を引き走り出す。
陽:!!はい!
遅れた分を取り戻すかのようにものすごいスピードでトラックを走る2人。
※:…あの2人速くない?
※:あの人っていつも保健室にいる人だよね…
陽:※※、お待たせ!
※:問題ない!
いくらか順位を取り戻したところで次の走者へバトンを渡す。
芽:ふぅ~……
陽:……芽実さんって足速かったんですね…
芽:まぁね…
※:陽菜!すごかったじゃん!
※:さすがクラス一の俊足!
※:松田先輩もお疲れさまでした!
芽:うん…、ありがとう
芽実が役目を終え体育館に戻ろうとすると、クラスメイトが話しかけてきた。
※:松田!
芽:……何?
※:お願い!ラストのクラス別対抗リレーのアンカーやってもらえない?
どうやら障害物リレーの最中にアンカーの選手が怪我を負ってしまったようだ。
芽:……ごめんやけど私には無理…
※:そう……
芽実のクラスメイトが諦めようとしたその瞬間、陽菜が割り込んできた。
陽:…芽実さん、勝負しましょう!
芽:勝負?
陽:私、2組のアンカーなので、1組VS2組として!
芽:…だから言ったやろ、
陽:責任は感じなくていいんです!頼んできたのは向こうなんですから!
芽実がクラスメイトの方を向くと、クラスメイトは大きく首を縦に振った。
芽:……どんな結果になっても私は知らんからな?
※:!?ありがと!
そして、最後のクラス別対抗リレーが始まった。
司会:それでは、位置について…、よーい…、
(パーンッ)
第一走者が一斉に走り出す。
陽:…緊張しますね…
芽:勝負仕掛けてきたん陽菜ちゃんやからな?
第十二走目の2人は自分たちのクラスの順位動向を見ていた。
芽:…あんま芳しくないな……
陽:…ですね
現在1組と2組で最下位争いしている状態だ。
陽:そろそろ準備しますか
芽:せやな
そう言って、2人は最後に軽くストレッチをする。
係:アンカーの皆さんはラインに並んでください
係に誘導されてラインに並ぶ。現在の順位は、3組、7組、5組、9組、6組、8組、2組、1組、4組の順番だ。
3組から順にバトンがパスされていく。
※:佐々木!行け!
陽:うん!
※:松田!任せた!
芽:(コクッ)
2人にもバトンが渡り、勝負が始まる。
2人は周りの選手など眼中に無く次々に追い抜いていく。
※:あの2人、マジで速ェな……
※:…もうバケモンだろ……
他のクラスには陸上部の選手やサッカー部の選手がいるにもかかわらず、容赦なく追い抜いていく。
トラックも半周を過ぎたあたりで、ついに陽菜と芽実の一騎打ちに。
※:佐々木~!!行け~!!
※:松田先輩~!!抜かせ~!!
芽実が陽菜の後ろにぴったりつく。
※:松田~!!行けるぞ~!!
※:陽菜先輩~!!後ろ~!!
後半のカーブに入ったところで、芽実が外側から抜きにかかる。
※:松田!!行け!!
※:佐々木!!負けるな!!
他のクラスも2人の応援モードに。
※:2人~!!行けるぞ~!!
※:負けるな~!!
ラストのストレートで2人が並ぶ。
※:行けるぞ!!
※:最後行け~!!
※:松田~!!!
※:佐々木~!!!
(パーンッ)
ゴールテープが切られる。結果は……、
1組:っしゃああああぁぁぁぁ!!!!
芽実率いる1組の勝利となった。
陽:……(涙)
※:陽菜、お疲れ様
陽:ゔん……(涙)
※:佐々木のせいじゃないよ、むしろ七位からよく頑張ってくれたよ
陽:……ゔぅぅ……(涙)
陽菜は親友たちに慰められながら悔し涙を流す。
※:松田、お前すげぇな…
芽:…ありがと……
※:なんだよ、素直に喜べよ(笑)
芽:喜んでるよ
※:ならいいけど…
芽:…陽菜ちゃんとこ行ってくる
※:いってら~
芽実が陽菜のもとへ行くと、モーゼの十戒のごとく陽菜を囲んでいた人の波が分かれていく。
芽:陽菜ちゃん
陽:芽実ざん……(涙)
芽:もう(笑)せっかくの可愛い顔が台無しやで?
そう言って、自分の体操服の袖で陽菜の顔を拭う。
芽:陽菜ちゃん、お疲れ様
陽:…芽実ざんも、おづがれざまでず……(涙)
芽:ふふっ(笑)
芽実が陽菜の体を抱き寄せ、ゆっくりとハグをすると、陽菜もゆっくりと抱き返す。その周りには、1組と2組のメンバーが静かに2人を見守っていた。