憧れの先輩……だった
2020年、私は日向坂46というグループに配属された。
美玲:陽世ちゃんは可愛いねぇ〜
陽世:やめてくださいよ〜(笑)
茉莉:愛萌さん、明日の夜ご飯行きませんか?
愛萌:いいよ?お店予約しておくね?
ひなの:菜緒さん、青春の馬のここの振りって…、
菜緒:あぁ、ここは〜〜〜〜、
配属からしばらく経つと、ひなのちゃんはもちろん茉莉ちゃんと陽世ちゃんも上手く先輩方との関係性を築けていた。
未来虹:……。
〇〇:未来虹ちゃん、魂が抜けたような顔してっけど大丈夫?(笑)
私が部屋の端っこでボーッとしていると、先輩の藤宮〇〇さんに声をかけられた。
未来虹:大丈夫です(笑)
〇〇:よっこいしょ…、
〇〇:…どう?日向坂の雰囲気には少し慣れた?
未来虹:少しだけ…(笑)
〇〇:(笑)…別に繕わなくてええよ?輪に馴染めなくて困ってるんやろ…?
未来虹:……お見通しなんですね…(苦笑)
〇〇:そらそやろ?色んな人間見てきてんねん、嫌でも分かるわ(笑)
すると、
MG:フロント三人、ちょっと来て?
〇〇さんたちが呼ばれて、行ってしまった。
未来虹:……。
◇
そしてその日のレッスン終わり、私が一人で帰ろうとしていると、
〇〇:未来虹ちゃん、一緒に帰ろ?
〇〇さんに呼び止められた。
好花:ここら辺のメンバー、みんな同じ方向なんだよ
未来虹:そうなんですね…、
私は〇〇さん、好花さん、菜緒さん、陽菜さん、ひよりさんと一緒に帰ることに。
ひより:あ、コンビニ寄っていい?払込忘れてた…!(笑)
〇〇:(苦笑)…早よ行ってこい!(笑)
ひより:行ってくる〜!
陽菜:陽菜たちもコンビニで何か買う?
菜緒:うん、…未来虹ちゃん何か食べる?
未来虹:いえ、私は大丈夫です
〇〇:遠慮しないの、何でも買ってあげるから(笑)
私は先輩方に手を引かれて、レッスン場近くのコンビニにやってきた。
好花:何買う〜?
〇〇:何でも好きなの持ってきな?
未来虹:はい…、
そして〇〇さんたちに飲み物を奢ってもらい、駅に向かう。
未来虹:……。
好花:ひよたん、ホントそのゲーム好きね(笑)
ひより:好ちゃんもやってみれば?ハマるよ?(笑)
陽菜:💤💤
菜緒:……。
〇〇……そういえば、お母さんに帰るって連絡したの?
未来虹:あ、忘れてた…、
〇〇:(笑)
私は急いで母親にL〇NEを送る。
未来虹:…なんで気付いたんですか?
〇〇:だっていつもレッスン終わり連絡してるのに、今日は連絡してなかったやろ?
未来虹:え、なんでいつも連絡してること知ってるんですか?
好花:未来虹ちゃん、〇〇の観察眼舐めたらダメよ?(笑)
菜緒:この人ホンマに何でも気付くから、
ひより:メンバーの体調不良に一番に気が付くの大概〇〇だから(笑)
〇〇:いぇ〜い(笑)
◇
それから数日後、大規模な感染症の拡大により私たちは外出自粛を余儀なくされた。
未来虹:…暇だな〜……、
ゲームにも飽き、勉強する気も起きないのでベッドに寝転がる。
(ピロンッ)
未来虹:んっ?
すると、スマホにメッセージが届いた。
〇〇:[フレンド招待するからみんなであつ森やろ]
未来虹:…あつ森か〜……、
買ったは良いものの、すぐに飽きてほとんど手をつけていなかった。
〇〇さんからフレンド申請が来て、私はそれを承諾する。
〇〇:[そっちの島に行くからID教えて?]
未来虹:[全然発展してないですよ?]
〇〇:[知ってる(笑)]
〇〇:[だから手伝おうと思って]
私が島のIDを教えて数分後、キャラクターが次々とやってきた。
〇〇:[芽実さんと史帆さんと京子さんと美玖と明里と美穂連れてきた(笑)]
未来虹:[連れて来すぎです(笑)]
〇〇:[ボイチャ繋ぐからD〇scordのIDプリーズ]
未来虹:D〇scord……、
私はオンラインでゲームをすることがないので、アプリを入れていなかった。
未来虹:[今アプリ入れるので待っててください]
〇〇:[ちょい待ち]
〇〇:[じゃあL〇NEのグルチャ作るから、そこでやろう]
すぐに招待が来て、私たちはボイチャを始める。
未来虹:…おはようございます、
明里📞:おはよ~!
美穂📞:まだテントってどういうこと!?(笑)
未来虹:友達に勧められて買ったんですけど、すぐに飽きてしまって…(苦笑)
京子📞:じゃあ私たち海の幸捕まえてベルにしとくから、未来虹ちゃんは好きに開拓してな?
未来虹:はい…(笑)
私が果物や雑草を売りつけて開拓を進めている間、先輩方は素潜りでお金を稼ぎ、道端にばらまいていた。
未来虹:…皆さんは自分の島の開拓進めなくていいんですか?
美玖📞:大丈夫、ここの人たち全員メインストーリークリアしてるから(笑)
未来虹:すごっ…!
そして夕方になる頃には……、
未来虹:あの…見たことない数字になってるんですが……(苦笑)
受け取ったベルの額がとんでもない事になっていた。
芽実📞:それ全部あげるから、次やる時までにストーリークリア頑張ってね
未来虹:ありがとうございます…!
〇〇📞:バイバ~イ
そうして先輩方は帰っていった。
未来虹:…まさか芽実さんと話すとは思わなかった…、
ちなみに、この後すぐ芽実さんからL〇NEの友達追加が来た。
◇
それから数ヶ月後、1stアルバム『ひなたざか』の制作が始まった。
未来虹:ん〜……、
〇〇:どうした?
未来虹:ここの1サビ後半の振りなんですけど…、
〇〇:あぁ、跳び箱の前の振りね?
未来虹:移動しきれずに先輩方蹴っちゃいそうで…、
〇〇:(苦笑)まぁあれよね、拍をつかめるようになるとスムーズに移動出来るから練習あるのみやな(笑)
未来虹:コツとかあります~…?
〇〇:コツか~…、メトロノームでも置いてみれば?
未来虹:効果あります?
〇〇:さぁ…?(笑)
〇〇さんはそれだけ言って自分のフォーメーションに戻ってしまった。
未来虹:……(苦笑)
ひより:…メトロノーム使ってみれば?
未来虹:えっ…?
ひより:あぁ言ってるけど、〇〇もたまに使ってる方法だから、
未来虹:え、そうなんですか?
ひより:まぁあの人が適当なアドバイスする時なんかしょうもないこと言ってる時だけだから…(笑)
未来虹:……。
実際にメトロノームを使ってみると、今まで以上に移動がやりやすくなった。
◇
そしてアザトカワイイのヒット祈願で、三浦海岸にアマダイ釣りに行った時のこと。
私たちはBチームの船に乗り込み、アマダイ釣りに出航する。
未来虹:……。
〇〇:……。
二時間ほど経っても、私も〇〇さんも一向に釣れる気配がない。
〇〇:…暑っつい……、
未来虹:ホントにそれです…、
8月の真夏日に照りつける太陽の下で釣りをしているため、船上は尋常じゃなく暑い。
スタッフ:みんな服の中に冷却剤貼りな?
四人:ありがとうございます
スタッフさんから冷却剤をもらい、背中に貼ろうとするが…、
未来虹:くっ、届かない…、
肩関節が硬く、背中に貼れない。
〇〇:もう(苦笑)貸してみ?
〇〇さんに冷却剤を渡すと、フィッシングウェアを捲って背中に貼ってもらう。
未来虹:冷た~(笑)
〇〇:はい、次バトンタッチ
今度は私が〇〇さんの背中に冷却剤を貼る。
〇〇:サンキュー
未来虹:…冷たがらないんですか?
〇〇:……性格悪いな(笑)
未来虹:〇〇さんに言われたくないです(笑)
そして私は一匹も釣れることなく、一日目を終えた。
そして二日目、一日目に目標のアマダイ八匹を釣れなかったので予備日に再チャレンジすることに。
〇〇:眠っ……、
未来虹:ふぁ~……、
朝五時から船に乗り込む私たち。
眩しい朝日に目を細めながら、針に魚が掛かるのを待つ。
〇〇:お?かかった?
未来虹:かもしれないです、
竿がしなり、私はリールを巻く。
未来虹:おぉ…やった~…、
今回初の釣果に私は気の抜けた感嘆の声をあげた。
〇〇:あと…二匹?
未来虹:私はもうちっちゃいの釣れればいいので…(苦笑)
〇〇:諦めるの早すぎだろ…(笑)
そして鈴花さんが八匹目のアマダイを釣り、私たちは港に帰港する。
〇〇:大丈夫?降りれる?
未来虹:ありがとうございます
〇〇さんの手を借りて船から降りる。
◇
そしてその年の〇〇さんの誕生日。
メンバー:HappyBirthday🎶藤さん🎶
〇〇:ありがとう~(笑)
レッスン終わりに〇〇さんの誕生日を祝い、ケーキのロウソクを吹き消してもらう。
MG:はい、写真撮るよ~
(パシャッ)
記念写真の後は、ケーキを切り分けてみんなで食べる。
スタッフ:あんまり固まって食べるなよ~
菜緒:…今年は生クリーム入りなんやな(笑)
〇〇:入りというか全面に使われてるだろ(笑)
未来虹:生クリーム苦手なんですか?
菜緒:そうなの、この子好き嫌い激しいから(笑)
〇〇:鏡持ってきてやろうか?(笑)
美玲:中学生のときから変わらないよね~
〇〇:人間、三年やそこらでは変わりません(笑)
確かにメンバーと話してばかりで〇〇さんのケーキは全然減っていなかった。
そして解散後、私は一緒に帰ることに。
陽菜:〇〇、プレゼントまた今度でいい?
〇〇:何?家に忘れたの?
陽菜:ううん、レッスンの日だと持って帰るの大変だろうなぁ、って
ひより:何プレゼントするつもりなの?(笑)
未来虹:…みなさんはもうプレゼントあげたんですか?
菜緒:あげたよ?
ひより:昨日のリハ終わりの移動車の中で、
移動車は期別ごとに分かれるため、私は気が付かなかった。
すると、菜緒さんがこそっと耳打ちしてきた。
菜緒:…駅でひなひよコンビ連れ出すから〇〇にプレゼント渡しなよ(コソッ
未来虹:ありがとうございます(コソッ
そして駅に到着し、三人がお手洗いに向かった。
未来虹:…〇〇さん、これ…
〇〇:ありがとう、今開けた方がいい?
未来虹:どちらでも…///
〇〇:じゃあ失礼して…、
〇〇さんがプレゼントの包装を剥がして中の箱を開ける。
〇〇:…おっ、ブレスレットじゃん
〇〇:しかも未来虹とお揃いじゃない?
未来虹:はい…///前に褒めてくださったので…///
〇〇:え~嬉しい~、もう着けちゃお🎶
それと同時、三人が帰ってきた。
ひより:どう?プレゼントは渡せた?(笑)
未来虹:渡せました…///
陽菜:じゃあ帰ろ~
そうして私たちはそれぞれ帰路に着いた。
◇
そして翌年の四月ごろから菜緒さんに異変が…。
ひなの:今日のレッスン終わり、みんなでご飯食べ行かない?
未来虹:いいね、菜緒さんと〇〇さんも行きます?
〇〇:俺と菜緒はいいかな~、同期四人ででも行ってくれば?
ひなの:そうしよっか、陽世ちゃ~ん!
未来虹:……。
菜緒さんが〇〇さんに甘えて抱き着くのはいつものことだが、そのときの菜緒さんにはどこか違和感があった。
その数日後のこと、
〇〇:おはようございま~す
スタッフ:はい、おはよう
普段菜緒さんと二人でレッスンに来ている〇〇さんが一人でやってきた。
未来虹:菜緒さんはどうしたんですか?
〇〇:ん?あぁ、ヒノマルソウルの番宣だよ
未来虹:あぁ、なるほど
どうやら体調不良ではないようで安心した。
しかし、その数日後のこと、
茂木:みんなちょっと集まってほしい
茂木:菜緒のことなんだけど、体調不良がずっと続いてて、やれる範囲でやってきたんだけど、ここにきて限界が来てしまって、これ以上は無理させられない、ってことで、もちろん休養という形をとります
チーフマネージャーの茂木さんから菜緒さんの休養が言い渡された。
未来虹:……。
言葉を失い、うつむいていると、
(ポンポンッ……)
〇〇:……。
いつの間にか〇〇さんが隣にやってきて、背中をさすってくれていた。
未来虹:……(涙)
私よりも辛いはずの〇〇さんに心配をかけてしまった不甲斐無さから涙がこぼれてしまった。
◇
それからの〇〇さんはこれまで以上に仕事に没頭し始めた。
これまで菜緒さんがセンターを務めていた楽曲はほとんど〇〇さんが代理センターを務め、さらに自身のセンター楽曲もこなすハードワーク。副キャプテンとしての仕事にも一切抜かりはなかった。
美穂:適度に力は抜きなよ?
〇〇:分かってるって、そんなヘマするかよ(笑)
愛萌:するでしょ、〇〇だもん、何年一緒にいると思ってんのよ
美玲:そろそろW-KEYAKI FESもあるんだから過労で倒れないでよ?
〇〇:大丈夫ですって(笑)
◇
そうして迎えたW-KEYAKI FES当日。この日は日中気温35℃を超える猛暑日だった。
未来虹:暑っつ~…!
茉莉:バテそう~…!
スタッフ:ちゃんとみんな水分摂って?
メンバー:はい!
リハの合間に水分をしっかり摂り、本番に向けて磨き上げる。
明里:〇〇、水飲んで
〇〇:ういっ
休憩中、一人振り確認をする〇〇さんに丹生さんがペットボトルを押し付ける。
陽菜:また共和国みたいになるよ?(笑)
〇〇:懐かし~(笑)
美玖:懐かしがってる場合じゃないから(苦笑)
体調不良者を出しながらもリハを終えた私たちは本番に備える。
久美:三期生四人ちょっと集合
四人:はい
本番前、久美さんと〇〇さんに呼ばれる。
久美:本番中、もし体調が悪くなったら無理してパフォーマンス続けずに裏に下がって?
〇〇:お客さんの前で倒れるのが一番最悪だから…、
四人:はい……!
そして終演後の私たちを待っていたのはスタッフさんからの叱責だった。
未来虹:……。
〇〇:大丈夫大丈夫、気にすんな…、
着替えを終えてホテルに向かうバスの車内は重たい空気が流れていた。
未来虹:…早く菜緒さんに帰ってきてほしいです……、
〇〇:…そうだな~……、
◇
そしてW-KEYAKI FESが終わると、次は全国ツアーに向けて動き出す。
ダンス:1,2,3,4,5,6,7,8…、
ある日のダンスリハの最中、
スタッフ:〇〇
〇〇:はい
〇〇さんは11月公開の映画の番宣のため、リハを抜けてしまう。
未来虹:……なんかハードスケジュール過ぎません?
久美:うん…、倒れないといいけど……、
鈴花:…菜緒の代わりの存在がいれば多少は違うんだろうけどねぇ……、
未来虹:……。
好花:〇〇の中で菜緒の存在が大きすぎるのよ…、
◇
そして全国ツアーが始まると、私たちもほとんど休みなしで動き続けていた。
未来虹:きっつ~……!
〇〇:ほいっ、ちゃんと糖分摂れよ~
未来虹:ありがとうございます
レッスン室の廊下で〇〇さんから清涼飲料の差し入れをもらい、一気に半分ほど飲み干す。
〇〇:ちゃんと学校行けてる?
未来虹:なんとか二日に一回ペースで…、
〇〇:そっか、それならよかった…、
そう言う〇〇さんはどこか寂しそうにしていた。
未来虹:…何かあったんですか?
〇〇:ううん、何も無いよ?(笑)
それだけ言って〇〇さんはレッスン室に戻ってしまった。
その翌日、東京公演初日にも関わらず、〇〇さんは朝から来ていなかった。
未来虹:※※さん、〇〇さんて今日休みですか?
スタッフ:…ううん、映画の番宣で夕方にこっち帰ってくるはず
未来虹:そうですか…、
ライブ本番の日でも番宣をしている〇〇さんが少し奇妙に感じていた。
そして夕方には〇〇さんが帰ってきてリハに少しだけ参加する。
美玖:ツアー期間と映画の番宣期間が被ると大変だね~(笑)
〇〇:他人事みたいに言いやがって…(笑)
◇
そして東京公演終了後、メンバーで乾杯するはずが〇〇さんの姿が見当たらなかった。
愛萌:…ちょっと探してくる…!
未来虹:私も行きます…!
メンバー何人かで手分けして〇〇さんを探す。すると、
〇〇:…ゔっゔぅ……(涙)
メンバー控え室でうずくまって泣いている〇〇さんがいた。
愛萌:大丈夫?
久美:何があったの?
紗理奈:藤さん……、
すると、マネージャーさんから衝撃の事実が伝えられる。
MG:……メンバーには黙ってて、って言われたんだけど……、
MG:…一昨日、〇〇の幼馴染が交通事故で亡くなったんだ…、
メンバー:…えっ…………、
スタッフ:…代理センターが穴を空けるわけにいかないから、メンバーには黙っててほしいと……、
美玖:〇〇……、
美穂:馬鹿じゃないの!?(涙)そんなに辛いのに無理しないでよ…(涙)
久美:そうだよ、代理センターくらい私たちで何とかするんだから……、
京子:…藤さん今すぐ瑞桜ちゃんのとこ行ってあげて?愛知公演は私たちで何とかするから…、
未来虹:…ちゃんとお別れしてきてください……、
私にはこう言うことしかできなかった…。
◇
それから数週間後のこと、
茂木:みんなちょっと集まって?
ダンスレッスンをしていると、茂木さんに集合をかけられた。
茂木:え~っとね……、
茂木:……今日のお昼に、〇〇が、学校のトイレでリストカットをしたと、連絡が入りました……、
メンバー:えっ……、
その瞬間、私の頭は真っ白になった。
ひなの:……にちゃん、未来虹ちゃん
未来虹:……っ…!
好花:…一旦向こうで休もう?
私はひなのと好花さんに支えられて、レッスン室の端に座らされる。
未来虹:……くうっううっうっうっ…(涙)
衝撃を受け止めきれず、頬を涙が伝う。
好花:…好きなだけ泣いていいよ……(涙)
未来虹:ゔっゔっ…わぁぁぁぁ……!(涙)
未来虹:あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"……!(涙)
好花さんに抱きしめられて、私は人目も憚らず慟哭した。
◇
その日から、菜緒さんと〇〇さんの両翼がいない状態での活動を余儀なくされた。
ダンス:はいみんな集合!
ダンス:…全然そろってないよ?二人がいなくたってみんなは日向坂なんだからしっかりしてよ?
メンバー:はい…!
ダンス:はいもう一回!
菜緒さんに加えて〇〇さんが休養したことでグループのまとめ役が足らず、まとまりの無いことが常態化し始めていた。
久美:はぁ……、
未来虹:久美さん……
久美:みくにん…、
久美:私じゃ役不足なのかな~……
未来虹:…久美さん一人で背負わないでください…、
未来虹:三期生は私がまとめますから
久美:……うん…、
とは言っても、今まで〇〇さんたちがやってきたことを私たちがいきなりできるわけもなく…、
未来虹:…ほんとに〇〇さんたちってすごすぎる……、
茉莉:100年経ってもマネできる気がしないもん…(苦笑)
優佳:ふぅ~……、
優佳:…二期生はある意味まとまってるからいいよね…、
陽世:お二人の休養でこれまで以上の結束になるのは何とも皮肉ですけど……、
ひなの:早く帰ってきてほしいです……、
優佳:それはここにいる全員が思っていることだよ
◇
そして年が明けて一月某日、
菜緒:またみんなに迷惑をかけてしまうこともあると思うんですけど、頑張ります、またよろしくお願いします
菜緒さんが戻ってきた。
未来虹:菜緒さ~ん
菜緒:未来虹、ただいま
未来虹:ずっと待ってましたよ~
菜緒:(笑)
菜緒さんにハグをすると、背中を撫でてくれた。
未来虹:…あとは〇〇さんだけですね
菜緒:だね、
菜緒:…でも〇〇はまだかかりそうかな、
未来虹:……そうですか…、
◇
それから数か月後のこと。
東京ドームライブを一週間後に控えた私たちはこの日、通しリハをしていた。
ダンス:はい、どんどん捌けるよ~!
そして通しリハを終えて水を飲もうとしたとき、
ひより:〇〇っ…!!
ひよりさんの声に全員が振り向く。
今野:みんな一旦ストップ
今野:藤宮の方からみなさんにお話があるので…、
〇〇:はい、…私事ではございますが、31日の東京ドーム千穐楽をもって日向坂を卒業いたします
〇〇:急な発表になってしまい申し訳ありません…、
メンバー:……。
四か月ぶりに会った〇〇さんは別人のようにやつれており、誰一人として言葉を発することが出来なかった。
◇
そして東京ドーム千穐楽、〇〇さんはアンコールでステージの上に上がり、卒業の挨拶をする。
未来虹:……。
メンバー:……。
スタッフ:……。
全員が無言で〇〇さんの最後のステージを見届ける。
〇〇さんの挨拶が終わると、会場内は割れんばかりの拍手で包まれる。
スタッフ:はい、みんな上がって
私たちもステージ上に上がり、横一列に並ぶ。
🎶〜🎶〜🎶〜🎶〜
メンバー:どんな悲しみだって そっと包み込んでしまうよ🎶
メンバー:理由(わけ)なんか言わなくても すべてをわかってくれる🎶
メンバー:頬に落ちる涙は 温もりに乾かされるのだろう🎶
メンバー:僕も笑顔になれたら今より強くなれるね🎶
涙で誰一人まともに歌えないながらも最後までJOYFUL LOVEを歌い切り、東京ドームライブは閉幕した。
ステージ下に下がると、一人ずつ〇〇さんに花束を渡す。
未来虹:…〇〇さん、ご卒業おめでとうございます(涙)
未来虹:〇〇さんには加入当初から本当によくしてもらって(涙)
未来虹:全然グループに馴染めなかった時に、必ず気付いて輪の中に入れてくださって(涙)
未来虹:おかげで色んな先輩方と仲良くなれて、今こうやって〇〇さんを見送ることが出来ています(涙)
未来虹:もっともっと〇〇さんと一緒に活動したかったですけど(涙)
未来虹:これからも私たちの活動を見守って下さるとありがたいです(涙)
未来虹:ご卒業おめでとうございます…(涙)
〇〇:ありがとう(涙)
〇〇さんに花束を渡し、ハグをする。
細くなった〇〇さんの胸はとても広かった。
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