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憎しみを隠していれば…

陽子:〇〇くん、おはよう

〇〇:おはよ〜…

陽子:また夜更かししてたの?

〇〇:別にいいだろ…(苦笑)

朝、大学の講義室に行くと彼氏の〇〇くんが机に突っ伏していた。

陽子:今日の夜はどうする?一緒に食べる?

〇〇:ん〜、一緒に食べよっかな〜

陽子:分かった、用意しとくね

〇〇:サンキュー



そして大学終わり、私はスーパーで食材を購入し家に帰った。

陽子:バイトが終わるのが19時だから…今から作っちゃっていいか…!

陽子:ふんふ〜ん🎶

そうしてご飯を作っていると、

〇〇:ただいま〜

〇〇くんが帰ってきた。

陽子:あらま、ずいぶん早かったんじゃない?

〇〇:人足りてるから帰っていい、って…

陽子:そう、じゃあご飯できるまでゆっくりしてて?

〇〇:んっ

しばらくしてご飯が出来上がり、テーブルに運ぶ。

〇〇:おぉ〜、美味そう〜!

〇〇:いただきま〜す

陽子:いただきます

〇〇:んっ、さすが陽子だわ

陽子:でしょ〜(笑)

私はふとカレンダーを見る。

陽子:…もうすぐご両親とお姉さんの命日じゃない?

〇〇:あぁ、そうだな

〇〇くんのご両親とお姉さんは〇〇くんが幼い頃に亡くなったらしいが、詳しい理由は頑なに話してくれない。

陽子:…私も一緒にお墓参り行ってもいい?

〇〇:……いいよ、

そうしてご飯を食べ終わると、〇〇くんは『レポートがあるから』と帰っていった。

そしてその日のお風呂上がり、スキンケアをしていると母親が電話がかかってきた。

陽子:はい、もしもし?

母親📞:あんた、たまには家帰ってきたら?お盆も帰ってこなかったし…、

陽子:はいはい…、

母親📞:彼氏出来たって言って全然会わせてくれないし…、

陽子:そんな簡単に兵庫まで連れて帰れるわけ無いでしょ、少し待ってなよ(苦笑)

私は少し強引に母親との会話を終わらせた。



陽子:…でも意外だったわ、〇〇くん兵庫出身だったんだね

〇〇:まぁ東京の親戚に引き取られたからな…、

この日、私たちは新幹線に乗って〇〇くんのご両親とお姉さんのお墓参りに向かっていた。

陽子:それになんかお母さんのわがままに付き合わせるようでごめんね?

〇〇:いいよ別に、いつか挨拶しなきゃいけなかったし(笑)

そのついでにうちの両親に〇〇くんを会わせることに。



兵庫に到着し、お花を買ってタクシーでお墓に向かう。

陽子:…ご両親とお姉さんってどんな方やったん?

〇〇:…すごい優しい両親だったよ、仕事で忙しいのに休みの度に色んなとこ連れてってくれたり……、

〇〇:お姉ちゃんも帰りの遅い両親の代わりにご飯作ってくれたり、宿題手伝ってくれたり…

陽子:そっか…、愛されて育ったんやな…

〇〇:…あぁ……

そしてお墓に到着すると、お花を供えて手を合わせる。

〇〇:ボソボソボソボソ……

陽子:……?

〇〇くんが何かを言っていたが、聞き取れなかったのでスルーすることに。

〇〇:よっこいしょ、…ここから陽子の実家までどのくらい?

陽子:30分くらいかな…?

私たちはタクシーに戻り、私の実家を目指す。



陽子:…緊張する?(笑)

〇〇:そりゃあな…、

実家に到着し、私は玄関の引き戸を開ける。

陽子:ただいま〜

陽子母:おかえり、〇〇さんもいらっしゃい

〇〇:初めまして、お嬢さんにはいつもお世話になってます

陽子母:どうぞ上がって?

〇〇:失礼します

陽子:ごめん、お手洗い行くから荷物お願いできる?

〇〇:分かった

そしてトイレで用を足し、リビングに向かうと…、

陽子:……えっ、何してるの…?

〇〇:あっ、おかえり…(笑)

陽子母:陽ちゃん!逃げて!

陽子父:早く…!

両手を縛られて床に転がる両親と包丁を持って佇む〇〇がいた。

〇〇:ごめんね?陽子のこと利用して…

陽子:…なんで?パパとママと何かあったの…?

〇〇:それは、この二人が一番分かってるんじゃないかな…?

陽子父:お前と面識なんか…!

〇〇:小坂〇〇、俺の旧姓だよ

陽子父母:っ…!

陽子:…二人とも何か知ってるの…?

〇〇:……13年前、俺の家に強盗として押し入り、両親と姉をを殺したのはこの二人だよ

陽子:…はっ……?

陽子:パパとママがそんなことするわけ…!

その瞬間、〇〇が包丁を私の眼前に突きつける。

〇〇:…幸い俺はクローゼットの中に匿われていたから生き残ったが、俺の目の前で三人は殺された

〇〇:…分かるか?目の前で大切な人が殺されていくのに何も出来ない無力さが……、

〇〇:……何も知らずにのうのうと生きてるお前が目障りなんだよ……!

陽子:っ……!

陽子母:止めて!殺すなら私たちにして!

〇〇:…陽子に選択肢をやる

〇〇:一つ、陽子が警察を呼びに行く間に俺が二人を殺す

〇〇:二つ、陽子が自分の手で二人を殺す

〇〇:三つ、二人の目の前で陽子を殺す

〇〇:…好きなの選んでいいよ

陽子:な、なんで……、

〇〇:10,9,8,7,6,5,4…

陽子:待って…!

〇〇:待たない

陽子:じゃ、じゃあ私を殺して!

〇〇:…分かった、

(グサッ…!)

陽子父:ぐふっ…!

〇〇くんは父に包丁を突き刺した。

陽子:なんで!?私を殺してって…、

〇〇:…目の前で自分の家族が殺されるのに自分は何も出来ないんだ、死ぬより辛いだろ?

〇〇:俺と同じ目に遭わせてやるよ…、

陽子:っ……、

(グサッ!)(グサッ!)(グサッ!)

〇〇くんが両親に包丁を何度も突き刺し、リビングの床に血溜まりが広がっていく。

私は〇〇くんの言う通り、何も出来ずにただ立ち尽くすことしか出来なかった。

〇〇:……陽子、何も出来なかっただろ…?

気がつくと、生気を失い白くなった両親と全身に返り血を浴びて真っ赤になった〇〇くんが立っていた。

陽子:……。

すると、〇〇くんが持っていた包丁を私に握らせる。

〇〇:…俺のこと、殺したいほど憎いか?

陽子:……。

陽子:……私、〇〇くんのこと好きだったのにな…(涙)

目から一筋の涙がこぼれ落ちる。

陽子:…〇〇くんのこと、殺してもいい?(涙)

〇〇:もちろん…(笑)

(…グサッ……!!)

私は〇〇くんの胸に深々と包丁を突き刺す。

〇〇:……最後に一つだけ…利用したなんて言ったけど……陽子のことを大切に思ってたのは本当だよ……?

〇〇:…俺が死んだら……ジャケットの…右ポケットを見てほしい……

陽子:…私は〇〇くんと…幸せになりたかった……(涙)

〇〇:…俺が…憎しみを隠していれば…ゴボッ……俺たち幸せになれた…のか…な……(笑)

そのまま〇〇くんは膝から崩れ落ち、優しい笑顔でその呼吸を止めた。

陽子:…〇〇くん……(涙)

〇〇:……。

私は〇〇くんのジャケットの右ポケットを探る。

陽子:これって……、

ポケットから出てきたのは、箱に入った二つのシルバーリングだった。

陽子:っ……!(涙)

陽子:なんで……(涙)

私は自分と冷たくなった〇〇くんの薬指に指輪をはめて、唇に長い長い口付けをする。

陽子:……私も、大好きな三人に会えるかな……?(涙)

〇〇くんの胸に刺さった包丁を抜いて、自分の首元に当てる。

陽子:…今…そっちに行くね……?(涙)


Fin.

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