見出し画像

19-○○の引っ越し

〇〇の部屋では引っ越しの準備が行われていた。遡ること数か月前、
――――――――――――――――――――――――――
出したばかりの炬燵で〇〇たちはくつろいでいた。

美:〇〇とひなのは志望校決めたの?

〇:う~ん

本当は県外の志望校に進学したいが、裕福な家ではないため悩んでいるのだ。

久:う~んって、ひなのは?

ひなの:私は久美お姉ちゃんたちと同じ日向大学かなぁ

久:〇〇は何に迷ってるの?

〇:…ん~……

愛:…県外の大学?

〇:……まぁ…

菜:良いんじゃないの?

〇:……。

久:金銭面なら気にしなくていいよ、それなりに蓄えはあるから

〇:…全部お見通しなんだね(笑)

菜:まぁ、家族ですから(笑)

史:〇〇とひなのはそろそろバイトもセーブして受験に本腰入れないとね

ひなの:それはさすがに…

〇:そうだよ、たった今お金がかかるって話をしたばかりでしょ

美:せっかくの弟妹の頭脳を埋もれさせるような真似するわけないでしょ

久:多数決で史帆の案が可決ね

年長組の反応の見るに、久美の意見に異議を唱える人はいない。

〇:はいはい、俺たちの負けです

ひなの:(苦笑)
――――――――――――――――――――――――――
ということで、志望校のけやき大学を受験し、無事に合格したのだ。

〇〇が段ボールに荷物を詰めていると、陽菜とひよりが部屋にやってきた。

(コンコン)

陽:お兄ちゃん…

〇:どうした?

陽:…寂しい……

ひより:…行かないで

2人は〇〇に抱き着く形で座り込む。

〇:…ごめんね

陽:……お兄ちゃんの馬鹿

ひより:県内の大学に行くって言った癖に
   ※5話参照

〇:…よく覚えてるな(笑)

陽:…明日行っちゃうの?

〇:明日引っ越しのトラックに荷物を積み込んだらそのまま…

陽:ゔぅ~(涙)

ひより:やだ~(涙)

そのまま2人は〇〇の胸で泣いてしまった。

愛:…陽菜、ひより、大丈夫だよ

久:今生の別れじゃないんだから

2人の泣き声を聞きつけて愛萌と久美も集まってきた。

陽:でも~(涙)

ひより:離れだぐないの~(涙)

一方そのころリビングでは…

芽:ゔぅ~(涙)

史:芽依…寂しいのは分かる、お姉ちゃんも〇〇と離れるのは寂しいから

芽:ん~(涙)

史:でもね、お姉ちゃんは〇〇のやりたいことを応援することにしたの

史帆が泣きじゃくる芽依を宥めていた。

美玖の部屋でも…

美:菜緒もひなのも応援するって言ったじゃん…

菜:…応援はするけど寂しいの(涙)

ひなの:お兄ちゃんと離れるなんて考えたくない(涙)

美:……泣かないって決めてたのに(涙)

美玖を巻き込みながら菜緒とひなのが涙を流していた。
――――――――――――――――――――――――――
一晩が明け、引っ越し当日、

業者:荷物は以上ですかね

〇:はい、よろしくお願いします

トラックに荷物を運び、トラックが出発する。

史:…ついに出発か

〇:うん

菜:たまにはこっちに帰ってきなさいよ?

〇:分かってるよ

ひより:絶対分かってない

〇:分かってるよ(笑)

愛:…そっち行ったときは、ちゃんと観光案内してね?

〇:分かった、その時までに地理を把握しておくよ

すると、松田姉妹がやってきた。

好:先輩、大学合格おめでとうございます

〇:ありがとう

芽実:…私も〇〇さんみたいになれるように頑張りますね

〇:頑張ってね

久:じゃあ、出発する?

〇:そうだね

引っ越し先で荷解きの手伝いをするために、久美も同行する。

美:〇〇、元気でね

〇:みんなも元気でね

〇〇たちを乗せたタクシーが発進する。

陽:お兄ちゃ~ん!バイバ~イ!(涙)

バックミラー越しに陽菜たちが泣きながら大きく手を振る姿が見える。

〇:…くっ……(涙)

〇〇も堪えきれずに涙を流す。

久:…よく妹たちの前で涙を我慢できたね、もう我慢しなくていいよ

久美がそっと〇〇の頭を撫でる。

〇:うっゔぅ……(涙)

タクシーの車内には〇〇の嗚咽だけが響いていた。
――――――――――――――――――――――――――
引っ越し先に着き、荷解きを始める。

久:この段ボールはどこに置く?

〇:学習机を組み立てるからその近くに置いといて

久:組み立て手伝う?

〇:お願い

すると、スマホに彩花からメッセージが届く。

彩[もう引っ越し先には着いたの?]

〇[着いたよ、今荷解きしてるところ]

彩[Fight!]

〇[ありがと]

スマホを閉じて作業に戻る。
――――――――――――――――――――――――――
そして引っ越し作業がおわり、久美も飛行機の時間が近づいてきた。

久:そろそろ出ないと…

〇:姉ちゃん、手伝いありがとね

久:…元気にやるんだよ

〇:姉ちゃんもね

久:…ちゃんとご飯食べて

〇:うん

久:……しっかり運動して

〇:うん

久:……いつでも帰ってきていいんだからね?(涙)

〇:……うん(涙)

しばらく2人で泣いた後、〇〇は久美をアパートの入り口まで見送った。

アパートに戻った〇〇がスマホを開くと、

久[Good luck!!]

メッセージが表示されたスマホの画面にはキャンプで撮影した笑顔の佐々木家が映っていた。

いいなと思ったら応援しよう!