【坂神蟬丸インタビュー】フィクサーから見た ” #蟹亀 ”の話・EPの話聞いてきました。
初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。日向キタローです。
インタビュー企画第13弾は坂神蟬丸(さかがみせみまる)さんです。色々なところで裏方・フィクサーとしても活動している坂神さんに3月13日に配信開始されたClub Turtle(クラブタートル)通称”蟹亀”のEP第2弾『one's living』の話をメインに坂神蟬丸という人物のことを聞いてきました。お楽しみに。
・プロデュースとかじゃなくて「こういう曲作ったら?」みたいなディレクションの相談にのることが多いかな。
ー まず早速ですが、自己紹介を兼ねまして普段どういった活動をなさっているのかお聞かせください。
フィクサーと称していろんな人の裏方やってます、坂神蟬丸でーす。
ほぼほぼオープンにはしてるけど、まあわかりやすくは「Club Turtle」と「 #アソブカイ 」もといBOOGEY VOXX(ブギーボックス)のちょいちょい関係が1番目立つところでやっていると思います。あとは、Club Turtleの面々…咲乃木(さきのき)ロクとか曇莉とか直接楽曲の相談のっているのはそこくらいかな…?最近だと、覆面忍者とItsuki Miyamuraのユニット「Men who unexpected」の相談にものったりしてます。プロデュースとかじゃなくて「こういう曲作ったら?」みたいなディレクションの相談にのることが多いかな。
ー そういったディレクションなどもしつつ、ご自身も配信者として活動していますが、Vtuberを知ったきっかけなどは覚えていますか?
知ったきっかけはそもそも創世記…げんげんとかくらいからはちょっと知っててぽつぽつ見てたんですけど、がっつり見始めたのはにじさんじSEEDs(シーズ)が出てきてからかな。わりと初期にSEEDs24時間耐久配信みたいなんで、SEEDsがリレーしながら24時間配信するっていう企画があって「あー、あったかいな」と思って「こういう関係性っていいな」って感じてました。それを今ではClub Turtleで表現できてるんじゃないかなって思ってます。あれがよかったからそれをやってる、みたいな。
ー 加えて配信活動を始めたきっかけはどんなものでしょうか。こちらは色々な場所でおっしゃっているイメージはありますが。
んー、ノリ (笑) お嬢(木風公子 きかぜきみこ)に誘われて、というかお嬢がしゃべる相手がいなかったので「しゃべる相手くらいやるよ」という感じで始めて、BOOGEY VOXXデビューのお手伝いをしたりして地盤を固めてましたね。
・1枚目はホントにその場のノリで作って、今回の2枚目は作ろうと思って作りました。
ー そこからClub Turtle…蟹亀を作ったと思うのですが、いつ頃作ったのかとかは覚えていますか?
ホンマに1年前くらいじゃないですかね。ノリで集めた感じで。
ー 以前にインタビューさせていただいた大崎さんからもうかがってますが、蟹亀を作るのも、最初のEPを出すのもだいたい”ノリ”で作ってますよね。
(EP1枚目配信時のインタビューはこちらから)
まあもともと「こういうものを作ろう」と思って作った場所ではなかったので。あれもノリですね。1枚目はホントにその場のノリで作って、今回の2枚目は作ろうと思って作りました。
ー 「作ろう」と思ったタイミングっていつ頃だったんでしょうか。
「動かな!」ってなったのは” #音楽を止めるな2 ”ですね。蟹亀で1枚目だしました、っていうのをありがたいことにTAKUYA the bringer(タクヤザブリンガー)さんやツラニミズさんがすごい見聞きして「すごい音楽やってる」って褒めてくれて、色々見ていたら「#音楽を止めるな2 やるっぽいな」っていうのを知ったので、「これは応募しよう」ってなりました。で、どうせ応募するなら企画をやりますって発表されてから「1曲作りまーす」ってやった方がおもしろくない?ってなったんです。なのでその時作った『Toon World』と『white rabbit』をプレミア公開はしたんですけど、その時のサムネを「 #音楽を止めるな2 で流れるまで動画の告知は禁止してください」とリスナーに共有して、プレミア公開に来た人たちだけが知っている状態にしてました。#音楽を止めるな2 で流れて初めて「公開しました」って形にしようと。
『white rabbit』は蟹亀の中で特にピックアップしたい若手3人、氷雨悠冰(ひさめゆうひ)・ハスミアキ・曇莉(くもり)に曲作ってもらって「これからこの子たちが売れていけばいいね」というニュアンスで作ろう、というコンセプトで作りました。そうなった時に「コンセプトはこれをリード曲というか先行配信としてリリースした後にアルバムを作る方がよくない?」と(BOOGEY VOXXの)Fraさんに言われて「じゃあアルバム作る方向で考えますか」というのをみなさんにお願いしました。
”#音楽を止めるな2 が告知されました。それまでに1曲作ればアツくない?面白くない? そしてその動画の最後に意味深な数字をのっけることによって「え?まだ何かあるやん」とみんなに思わせることができる”それって面白くない?っていうのが最初のフラッシュアイデアで出たので、全乗せして僕たちはその日までに全部作り上げました、って感じですね。
突貫工事が得意なんですよ、うちは(笑)
ー 1枚目の時も2週間くらいで制作したと聞きましたしね…。制作スピードが異常と言いますか…。
はい、異常です(笑)
これは自分のツイキャスでも言ったんですが、このインタビューを受けている段階で #音楽を止めるな3 が発表されていて、アルバム出すにあたって3個動画を切ろうという話は出ていたんです。『ないしょのはなし』『monkey dream』『Honey Dipper』の3つですね。おそらくゴールデンウイークくらいに #音楽を止めるな3 をやるんじゃないかな?と漠然と思っていたので「それまでに他にもMV作れたらいいね」って話をしていたら、ある日ツラニミズさんが「(3月の)19,20,21でやろうかなって考えてます」ってツイートをしていたんですよね。「あ、すぐやん。リリースの翌週やん」となっていたら、サキュバスのリヤと金子開発が「やる」と言ってくれて『Reunion』と『ウラノメトリア』を4日とかかな…それくらいで完成させてくれました。それで無事2ndEPの中から『white rabbit』合わせて6個、MVが出せた形ですね。はい、突貫工事ですね(笑)
突貫工事が好きというか、気合入れてその速度で作るみたいな。『ないしょのはなし』でも言ってるんですが、”休むよりも走る方が楽しい”んですよ。
・楽曲を作りましょう、となった時に新しく入ってやる気が特にある小宵と(サキュバスの)リヤと(隣町)本舗の行先だけは漠然と考えてました。
ー 先ほどにもあがった坂神さんのツイキャスでも言っていましたが、改めて各楽曲のメンバーの割り振りや軽いオーダーなどもお聞きしたいです。
『one's living/Club Turtle』
トラックリスト(敬称略)
1.white rabbit (feat. 氷雨悠冰, ハスミアキ & 曇莉)
作曲:THAIBEATS 作詞:氷雨悠冰,Fra,曇莉
2.ないしょのはなし (feat. 咲乃木ロク, 隣町本舗 & 神ぴゃっそ)
作曲:隣町本舗 作詞:咲乃木ロク,隣町本舗
3.coco (feat. 椎名かいね, 木風公子, 日辻シラム & 野上リスケ)
作曲:IURA TOI 作詞:椎名かいね, 木風公子, 日辻シラム & 野上リスケ
4.Humpty Dumpty (feat. 山露そちゃ & 小宵)
作曲:KYOTOU-O 作詞:小宵,山露そちゃ
5.Reunion (feat. ぷりやまぷりを, サキュバスのリヤ & 朧家ブランコ)
作曲:朧家ブランコ 作詞:朧家ブランコ,ぷりやまぷりを,サキュバス のリヤ
6.Honey Dipper (feat. 坂神蟬丸, IURA TOI & 空色ヒカリ)
作曲:IURA TOI 作詞:IURA TOI,坂神蟬丸
7.ウラノメトリア (feat. nyankobrq, 春野もみじ & ヌコメソーセキ)
作曲:nyankobrq 作詞:nyankobrq,ヌコメソーセキ
8.monkey dream (feat. BOOGEY VOXX & 地獄川震)
作曲:バーチャルねこ 作詞:地獄川震,Ci,Fra
2枚目作る前の段階で、1枚目を出した時にいなかった友達を呼んでいるんです。1枚目の時にはいなかったのが隣町本舗・小宵・日辻(ひつじ)シラム・サキュバスのリヤ・VJよし・神宮司の5人ですね。VJよしと神宮司は映像チームなので楽曲に関してはMV方面で頑張ってくれました。楽曲を作りましょう、となった時に新しく入ってやる気が特にある小宵と(サキュバスの)リヤと(隣町)本舗の行先だけは漠然と考えてました。どうやってこのやる気を消化させてあげようと。
最初期の段階で、隣町本舗と咲乃木(さきのき)ロクの2人は組ませたい・サキュバスのリヤと朧家(おぼろげ)ブランコはやらせたいなと思っていたので、ここは確定事項で。『white rabbit』で氷雨悠冰・ハスミアキ・曇莉はもう組ませているのでここは除外して、残ったメンツでどうやって組んでいこうとなりました。オーダーも一緒に。
まず、咲乃木ロクと隣町本舗。ディレクションなので「どういう曲を作って欲しい」っていうリファレンスを出すんですが、ここには『琥珀色の街、上海蟹の朝/くるり』っぽい曲をという感じでした。となると女性コーラスが必要だなとなったので「神ぴゃっそ一緒に入ってあげて」というのが『ないしょのはなし』で最初に決まったことですね。
次に、さっき言った通りサキュバスのリヤと朧家ブランコを組ませたいなと思っていました。リヤがポエトリーリーディングチックな朗読チックなラップっぽいことができて、ブランコががっつりHIPHOPのラップができるので、HIPHOPの”悪い音楽”ができる人をうちから選ぶとなるとぷりやまぷりをかな、と。ここには少しHIGH&LOW的なヤンキーとかそういうニュアンスのある曲を作ってくださいとオーダーを出しました。
この2つが初期から俺の頭の中で決まっていたことかな。
自分からのオーダーのほかにも、各メンバーからのオーダーもあって、霊界ラジオの朧家ブランコ・地獄川震(じごくがわぶるー)・KYOTOU-Oはできれば散り散りがいい、BOOGEY VOXXはできれば一緒がいいと。で、この時点でブランコの行先は決まったわけですね。
小宵も誰と組ませようか悩んでたんですけど、本人に聞いたら「KYOTOU-Oさんとやりたい」と。メンバー内で「2020年、21年はミクスチャーっぽい音楽…ラップ乗っているようなバンドサウンドが流行りそう」という話をしていて、KYOTOU-Oがそういう音楽を作るのが得意だと。じゃあ、ラップはドラムっぽい「ダカダカダカ」って聞こえるようなラップの方が調子よさそう、誰がいける?ってなった時に山露そちゃだなとピースを埋めるような感じで決まりました。
この時点で残ったメンツを見てぱっと、木風公子・日辻シラム・椎名かいねの3人はセットにしたいなー、僕はIURA TOI(イウイラトイ)さんとやりたいな、nyankobrq(ニャンコビーアールキュー)と春野もみじ組ませたいなっていうのが浮かびました。
うちの人らみんなラップ上手いんですけど、中でも単純に”ラップが上手い”ランキングをたてたときにそこでも結構上位の方に野上リスケが来るんですよ。総合的に曲のバランスを取ってもらうために野上リスケに木風公子・日辻シラム・椎名かいねの3人のところに入ってもらいました。『Reunion』のチーム、最初のテーマは「オタクとギャル」だったんですけど、お嬢がリーダーシップ発揮してくれて「不満をぶつけるような曲にしたい」と言ってくれたのでそこは完全に任せました。出来上がってものの”恨み節”みたいなものを聞くのが楽しかったですね。結果的に、単純なオタクとギャルみたいなトピックじゃなくてよかったと思います。
僕はIURAさんとやりたかった…というのも、長いことIURAさんと遊んできた中で、曲作りで『今夜はブギーバック』とか『DA.YO.NE』みたいな”中身のない楽しい曲”作りたいよねっていうのを結構言ってきてたんですよね。なので「IURAさんここしかないんじゃないです?」「ガミちゃんここやな」って感じで進めていきました。そしてIURAさんは女性のボーカルの曲を作るのが得意で女性で誰入ってもらおうかなって思った時に、僕の中では「Club Turtleの中で女性でボーカル、これ歌ってくれるのであれば空色ヒカリしかいない」と思って呼びました。
これもさっき言ったんですけど、nyankobrqと春野もみじ。nyankobrqの作る音に春野もみじは合うなと漠然と思っていたんですよ。こんだけラッパーがいるなかで、歌ものだけじゃ味気ないなと思って、ここもバランス考えて総合的にラップが上手い男を入れたいと思ったのでヌコメソーセキを入れました。ここには(咲乃木)ロクかヌコメソーセキかなと思ったんですけど、もうロクは行先決まってるのでっていうのでヌコメソーセキになりました。
という感じで振り分けていって、全部ピースはパチッとハマった。ハマるけど1枚だけ余るやつがおる!と、ここで地獄川震が余ってしまったんですよ。『Reunion』と『ないしょのはなし』のメンツを決めた段階で、BOOGEY VOXXはセットがいいとオーダー受けていて、ただその時に「どう頑張っても曲の振り分けはできないと思うから、最終余ったやつはBOOGEY VOXXが引き受ける!」とFraさんが言ってくれてたんですね。で、ぱーっと決めて言っていたら案外うまいことハマっていったんですよね、でも唯一あぶれてしまったので「地獄川震が余ってしまったのでBOOGEY VOXXとやってください」みたいな(笑) これは本当に偶然余ってしまった形にはなるんですけど、ブルー(地獄震)がここに入ったことによって、BOOGEY VOXXが普段みんなにわかりやすくやっているラップよりも1個次元の高い本来のHIPHOP、日本語ラップに近いちょっと小難しいことがFraさんできるようになったよねっていうのがあると思うんですよ。なので今回『monky dream』に関してはブルーがめちゃくちゃいい仕事をしていると思います。もちろんみなさんご存じだとは思いますが、BOOGEY VOXXの2人もいい仕事してます。
あそこで1番強いのは地獄川震で、ここは”地獄川震”じゃなきゃ成し得なかったと思うんです。1枚目の『Toon World』の時もそうなんですけど、Fraさんの提出したラップに僕もブランコもつられちゃうんですよ。なので”自分で思った”っていうよりも”熱意をもらって”作っちゃう。ただリリックの我が地獄川震は強いので、多分今回Fraさんが地獄川震に引っ張られている気がするんですよね。だから『monky dream』は地獄川震ありきでできていると僕は感じています。
ー 組み合わせやオーダーなども知ってから改めて曲を聞いたりすると見えて来るものが増えてきそうですよね。
そうですね。『coco』『Humpty Dumpty』『ウラノメトリア』とかはディレクション一切してないんですよ。中で決まったこと好きにやってみたいな。『ないしょのはなし』だけは、最初本舗が普段やってる『52Hzの鯨』『青い亡霊』みたいなのを提出してきたので「違う、Club Turtleで仲良く遊んでる本舗を表現して欲しい」ともう1度オーダーしました。そしたら今公開されているものが出来上がってきて、提出されたときに僕はもうめちゃくちゃ褒めました。「そう!これClub Turtleの隣町本舗やと思う!」って。『Honey Dipper』はもう最初からIURAさんと”こういうのやろうよ”っていうのは決まっていたので形にできたかなとは思います。
振り分けとかに関してはこんな感じですかね。
・”Club Turtleとしての1本筋だけはきちんと通しきれてるな”という自負はありました。
ー 振り分けのお話を聞いたうえでお聞きしたいんですが、出来上がった後に聞いた時「1つの”盤”」としてどう感じましたか?
1枚目の時はバーチャルねこさんのフリートラックを全部使ったんです。なので「流れも曲順もそのままにしよう、それがリスペクトなんじゃない?バーチャルねこさんもこの並びがいいと思って並べてるんやろうから」という風に1枚目は作ったんですけど、2枚目は全部自分たちでやってるんですよ。バーチャルねこさんにトラック協力もしてもらってるんですけど。
自分たちで1から構成考えようってなった時に、各チームの進行とか曲を聞けるのって僕だけだったんです。あとはサポートしてくれてる氷雨悠冰とCiちゃんが全部聞けるかな?ってくらいで。そのほかのメンバーは自分たちのチーム以外の曲は聞けない状態だったんです。で、各々の曲が出そろった時に”通しで聞く”っていうのの前に”並びどうしよう??”っていうのが来ちゃうんですよ。
ー どういう順番で展開を作っていくか、っていう…。
そうそう。で、すごい悩んで。一応チームの振り分けした時に番号は振ってあったんですよ”チーム01””チーム02”みたいな。ただ、やっぱりその振り分けも曲順は関係ないので、(氷雨)悠冰に「どうする?01,02,03で並べる?」ってリストぱっと見せてもらったときに「これ独断で決めていい?」って今の並びで決めました。そしてその順番で並べて、共有して通しで聞こうって同時視聴したんです「バーチャルねこさんにマスタリング頼んで返ってきました、何月何日に同時視聴しましょう」って、他のチームの曲は知らないから。で、同時視聴の時も”音楽を聞く”のが目的なので、悠冰がDiscordで画面共有して全員マイクミュート、”同時視聴”っていうテキストチャンネルにYoutubeにコメント書く感じで感想を書いていくって方法を取ってました。もう聞こえる音声は曲だけ。テキストチャンネルには「うおおおお!」とか「88888」とかを書いていく。
ー 感覚としてはクロスフェードのお披露目会みたいな感じですね。
そうそう、そんな感じ。同時視聴の時に初めて自分も通しで聞いたんですけど、その時に「全員バラバラで作ったのにすごいちゃんと流れが作れたな」っていうのと、「1枚目の時と違っていろんな色があってもダレることなかったな」って感じて”1枚丸々ちゃんと楽しい盤が作れたな”って感じがしました。ジャンルがバラバラだなって思っているからこそ、”Club Turtleとしての1本筋だけはきちんと通しきれてるな”という自負はありました。「俺らは仲がいい、仲がいいからこそ誰にも負けない」っていうのが共通認識であるなっていうのがすごく感じていて。全員がそれをいろんなもので表現しきったなっていうのはあると思います。
1枚目も2枚目も共有されているテーマがあったんですよ。1枚目が”夢路ねね”で、2枚目が俺らは仲いいよっていうのを表現しようっていう。なので2枚目は上手いことそれが表現できてるんじゃないかな?と。
・この中から1個っていうのは選べないわけですよ。トップは選べない。
ー 1本芯が通っているのでとてもキレイに聞こえるんだと、聞かせていただいた身としても思います。坂神さん個人の話になるんですが、ご自身の”お気に入り”ってなんでしょうか。ご自身のものは当然は特別思い入れがあるとは思うのでご自身の曲を除いて、になりますが。
これねえ…普通あるんですよ、お気に入りって。Club TurtleのEPを作るに至るまでに、配信者になるまでにもアルバム作ったりしていて、いろんなアルバムを聞いて「これがいっちゃん好きやな」っていうのがとかあるんですけど、Club Turtle作ってから選べないんですよね。ホンマに選べない…!冗談抜きで。「言うてもこれが好き」っていうのは今までいつもあったんです。でも、(Club Turtleのは)全部に対して思い入れがある、全部に対して食らってるっていうのがあって、”唯一1個はこれ”っていうのが選べない。
ー 坂神さん自身としては珍しい、と。
珍しいんですよ。自分は結構そういうところはっきりものを言うタイプなので、あったら「これがいっちゃん好き」って言うんですけどね。それこそ『white rabbit』を最初聞いた時「曇莉こんなにラップ上手くなったんや」「アキこんなにラップできるんや」「悠冰はやっぱ天才的なメロセンス持ってる」「俺らこれ越えなあかんのかーー!」っていうプレッシャーがあったんですよ。自分がアルバム作るうえで1曲作る時に。それでチーム振り分けて『ないしょのはなし』が出来上がった時に「こんなにいい曲作れるってことは俺らホンマに最強やし、これ多分他のチームやつちょっとずつ聞いてるけどその中で1番やわ」って本舗に言ったんです、その時は。
でも、各々の曲が1個1個完成していく段階の中で『coco』めっちゃやばい、かいねちゃんやっぱり歌上手いし、お嬢もラップ上手くなってる。(日辻)シラムが入ってくれたおかげでエッセンス利いてるし、このネガティブな思考は俺らにとってはポジティブになる。しかも(野上)リスケがラッパーとして〆るべき〆方でバースを落としてることを感動していて。
『Humpty Dumpty』もまさかこの盤でギターソロ入ってるなんて誰が想像した?っていう音作りしてるし、小宵も普段見せてないパワフルな歌い方を見せてくれてる、しかもそちゃさんがオーダー以上のラップをしてくれてるんですよ。そちゃさんは普段から”韻”って言ってるんですけど、その”韻”の1つ上の次元に”ライム”っていうのがあると僕は思っていて、それは「文を通して意味が成立する韻」…”えんぴつとペンシル”みたいに韻踏んでるけど意味も通じるみたいな。そういうのを完成させた状態で提出してるんですそちゃさんは。1年くらい付き合いあるんですけど、「今回覚醒してるやんそちゃさん!」って食らったり…。
ぷりやまぷりをとかも7年付き合いあるんですけど、今回の『Reunion』を初めて聞いた時にぷりちゃんが今まで聞いてきた中でもやばいことやってる。同じくらい付き合いある連中に早く聞かせたいってくらいにはやばいし、サキュバスのリヤも「こういうのやってくれるやろうな」って思っていた以上のエッセンスを落とし込んで曲にしてくれてる。ブランコもまず曲がいいし、かつClub Turtleの中でああいう”エロいこと”をできるのはブランコしかいないと思ってたことをまんまとやってのけるところがかなりポイント高い。
まあ手前味噌なので自分たちのは飛ばしまして『ウラノメトリア』も製作段階で時間ないってなったりもしてたんですけど、もみじとヌコメが全部提出した後にnyankoが”それに合わせてトラックを作る”っていうめちゃくちゃやばいことをしたんです。春野もみじは新進気鋭でめちゃくちゃ歌が上手いし、この子をどうにかして活かしてあげないとっていう裏方根性も出る。ヌコメソーセキは元々ラップは上手かったけど今回また一段と技術的にやばいことをしてる。そしてやっぱりnyankobrqはClub Turtleの中で1番天才やなって実感できる曲になっていたので、ここは手間がかかった分愛情が深くなっちゃうんですよ。
『monky dream』のさっき言った(地獄川)ブルーの詩的表現…これ日本語ラップを聞いてきた人には刺さるっていうラップしてるんですけど、そういうのを10年近くやってきているのでもちろん自分には刺さるんですよ。僕にいつもでっかい背中見せてくれてるBOOGEY VOXX、もう聞いた時に思ったんですよ。Ciちゃんがとんでもないサビを作ってるっていうのもあるんですけど、Fraさんが完全に”Club Turtleのこと”を歌っていて、かつ『リンゴ持ってきたやつ』っていうのは僕のことやって気付いてしまったんですよ。Fraさんは、僕が声をかけて欲しい時に必ずラップで声をかけてくれるんですよ。それをこの節目の中でやってくれて、愛着があるんですよね。
まあ、だからそんなわけでこの中から1個っていうのは選べないわけですよ。トップは選べない。
ー 本当にすべての曲に感情が乗っかっている状態なわけですね。
そう、思い入れがある。
『coco』もネガティブな感情を持っているやつらがそういうものを発散できる場所でありたいって思ってたので、それをこういう風に曲に落とし込んでいたのがすごくうれしかったです。人間味が1番この曲が強いなって感じてますね。やっぱり全部が全部思い入れが強いし、みんな言われたいことを言ってくれてるかなって。
いや、やっぱり選べないわ…(笑) 1週間ずっと聞いてるけど選べない。無理。
・時間が経ってから再評価されるような曲であって欲しいと思っているんですよね。
ー では逆にご自身たちの曲はどうですか?
やっぱりね、僕はこれがめちゃくちゃやりたかったんですよ、こういう曲が。もう”人生単位”で作りたかったっていう意味で。それがやっと出来たなって思います。しかも自分がやりたかった理想の形で理想のメンバーで。これ以上のものを他の人とももうできないんですよ。というのも、自分が今までずっとやってた中で、本当に最適解のことをやってくれる2人と一緒に作れたっていうのが自分の中で1番デカかった。この曲って多分すぐ評価されないと思ってるんです、自分では。今も聞いてくれる人は「いいな」ってなってくれるとは思うんですよ。5年とか10年後とかにもっかい火が付くような曲であって欲しいというか、時間が経ってから再評価されるような曲であって欲しいと思っているんですよね。
この曲、リファレンスが『今夜はブギーバック』なので、ゆるく楽しい感じを意識してたんですが、リリック段階でIURAさんが僕の名前を呼んで掛け合いの形にしてくれてたのが本当に嬉しかった。リファレンス通りでもあるし、やっぱ好きな人に名前呼んでもらえてんのがね(笑) 普段"ガミさん"呼びなのに、ここじゃ"ガミちゃん"呼びだったのが、尚更(笑) 僕の方も小難しいこと言わずに単純にクラブ楽しそう!と思えるように書いたのと、今回大崎は別のことをやってくれていてここにはガッツリ参加が出来なかったのでキチンと名前を呼んであげたかった。どうせ、今後彼は酒で潰されるだろうし逃げ場断つ意味で(笑) 最初からですけど、オレが誰よりもアイツに意地悪だと思う。
Club Turtleの中で1番ナンパしたい女は空色ヒカリだっていう話をしていて、これをそういう曲にしようと思っていたところで、空色をちゃんと輝ける場所にしてあげられたなとも思います。空色をヒロインにしてあげたかったっていうのもあったのはあったんですよ、ずっと。彼女、歌衣メイカさんところで裏方やったりとか活動長くて、すごい頑張ってきたのにどっかしらか評価されてなくて…絵が上手いし歌もちゃんと歌える子なのに、彼女自身1歩引ちゃうところがあったんです。FraさんとかともClub Turtleでくらいガラスの靴はかせてあげたいってずっと言ってたんです。なのでここでそういうことをしてあげられたのもうれしかったですね。人生単位でやりたかったことと、恩返しができたのでやっぱりこれもお気に入り(笑)
ー 結局は「この”盤”が大好き」ということですね。
そうですね(笑) やっぱりClub Turtleのみんなのことが大好きやし、出来上がったこの子たちも大好きですね。
・「このMV頼みたいんやけど」って聞いてすぐに「わかりました!」ってカメラ持って外に出ていったんですよ。
ー 曲に関しての話もかなりお聞きしましたが、MVの方も結構出たと思いますが……。
出ましたね。あれやばいと思いますよ、リリースした曲の半分以上MVが見れるっていう(笑)
ー 一般的にはリード曲だけとかだと思うんですよね…。
らしいですね、世間では。まあ、そういう物差しを僕らにあてられてもって感じなので(笑) 僕らは”遊びたい”っていうので遊んでいるので。そういうのをもったいないとも思いませんしね。
ー MVに関して、最初あがってきたものを見たときはどういう感想でしたか?
最初にあがってきたのは(神)ぴゃっそやったかな…。それを見たときは「なんかとんでもないことが起きてない??」と思って。このあたりは映像技術に関して知識の外なのでわからないんですけど、他のみんなと同じ感想だと思いますよ。専門的なことは何もわからないけど、とりあえずなんかとんでもないことが起きてるっていう(笑) しかもMV公開の順番的にこれが1番最初にすることは決まっていたので、これが最初にあがるの意味わからなすぎるって思ってました。
実質的なMVの1発目は『white rabbit』なんですけど、これも面白いことがあって。神宮司がClub Turtleに入ってきて「このMV頼みたいんやけど」って聞いてすぐに「わかりました!」ってカメラ持って外に出ていったんですよ。
ー その日に…?
そう、『white rabbit』を作ろうってなった時…『white rabbit』っていう名前が付く前ですね。あれはType Beat(タイプビート)を使ってインターネットで拾ってきたトラック使っていて、これでって曇莉が提出してきたやつを聞いて「これで作ろうか」ってなって、すぐに神宮司が「ちょっと外出てきます」ってカメラ持って外出ていって…っていうところからスタートしてるんですよね(笑) もうこの時点でスピード感が尋常ないですね。それで風景を撮ってきたので、ここに金子開発の絵で全員がいる絵にしたい、動画は神宮司が作るっていう風にまとまりました。曲作りと並行でしたね。金子開発が絵を描いて「こういう風にここに配置しましょう」って神宮司と話し合って、1枚目の時に使った影を散り散りにしよう、リリックをこういう風にここに配置しようとかを、歌詞が出来ると同時に作ってました。あれが1番タイトでしたね、まあ音楽を止めるな2に間に合わせようってやってたので当然といえば当然なんですが。
今回一貫して「わかりやすく目立つところに金子開発の絵を置きたい」っていう話があったんですよ、多分金子開発も知らないんですけど。というのもClub Turtle・蟹亀のロゴも作ってくれてたんですが、金子開発がある時に「絵を描きたいな」ってぽつりと言ってたんですよね。それ聞いた時に「あ、じゃあここまでやってくれてるし、次はお絵描きメインでやってもらう」って思ったんですよ。やっぱり動画でどうしても頼り切っちゃうので、みんなのことを好きなようにお絵描きしてもらおう、と。BOOGEY VOXXも地獄川震も描いてもらおうって『monky dream』の分を描いてもらって、この曲もテーマがしっかりしてるのでああいう風に表現してくれて、3人の色味もバランスよくて見やすいしよかったなって。全員エッチでしたね(笑)
『Honey Dipper』は曲もさっき言った感じで曲を作ったので「”再放送”の感じにしよう!」ってなりましたね。
ー 公開されたときにMVの縦横の比率が3:4だったのとても好きでした。
なので空色にも”そういうタッチ”で描いてくれって頼んで、よしさんも「こここういうカットでいいですか?」って。空色ヒカリには「悪いけど描いてもらったやつ表現の為に画質落とすわ」ってやりとりもあって。それで出来上がったのがもう”THE”って感じで、あのMVもめちゃくちゃお気に入りですね。Vtuberっていうオタク文化に寄り添っているのに、あの表現してるものって自分の見てる中ではなかったので、懐かしい感じの曲で懐かしい感じのMVが作れたのはとてもよかったと思います。
さっき言った「#音楽を止めるな3 があるから作るか!」ってダッシュで走ってくれた『Reunion』も「ヤンキーの感じやろう!」と思って、そもそも自分があの3人の単純なオタクでもあるので、ファンコンテンツとして「3人のその衣装好きすぎるわ!」ってなったんですよ最初。ブランコが「これいずれ恩返しみたいな感じで、ツラニミズさんとかがいる場所でライブすることがあるかもしれない。その時にお客さんとかにも楽しんでもらえるようにサビのところだけスマホにしてもらえないですか?」ってリヤに頼んでいたんです。そうすることでMV見てる人らはクラブでこれが流れたときにスマホをかざしてくれると思うんです、って。「なるほど!」って思ったし、今後”そういうもの”になると思いましたね。MVからちゃんと聞いてもらって、見せるもの…視覚的にちゃんと活きるものとしてなっているのはMVとして効果があるなって思ってます。あとはリヤが美男美女を表現してくれていてよかったなって。
『ウラノメトリア』は金子開発が絵を描いてくれて、映像も作ってくれていて。ちゃんと主題というか、曲のコンセプト通りの映像を作っているのでやっぱり本職やからすごいなって。すごく絵本っぽく仕上げてくれているし、”大人”と”子供”の対比をしっかり表現してくれているし、”友達と遊ぶけど1人になることもある”っていうのをすごい映像で表現してくれていて。”見てわかる”っていうのはやっぱり大事だと思うし、ここらへんの表現は金子開発が1番だと思いますね。金子開発自体も『ウラノメトリア』が1番表現しやすかったんじゃないかなって個人的には思ってます。彼女のやれる1番得意そうなことが1番表現出来てるのはこれじゃないかなって、”動画師”としての金子開発として。これ綺麗ですからね…。結果的に金子開発に甘え切っちゃったけど、やっぱりそこらへん表現しきってくれるから任せてよかったなって思ってます。
ここらへんも突貫でやってる分「俺らやったったな」って言うのがでかいですね。
『ないしょのはなし』に関してなんですけど、映像もめっちゃいいんですけど、個人的にもあって。みんな「こういう風にあげます」っていう感じで概要欄とかも共有してくれるんですよ。全曲、1番上にリリックとか…『Honey Dipper』なら「テキーラ飲みましょ、テキーラ!」がきてるはずで、『ないしょのはなし』も僕がもらった時は「蟹と亀ならどっちが勝つかな?」だったんですよ。いざ曲があがったら概要欄が「蟹亀誘ってくれてありがとう」に変わっていて、「泣かせに来てるやんお前ら…」ってなっちゃって。「こんなん俺にしか言うてないやん」って(笑)
・「坂神蟬丸が噛んでる曲ってめちゃくちゃいいな」っていうところを目指したい
ー ここまで出した作品について触れてきたんですが、これからどうしていくかということもあればお聞きしたいです。Club Turtleとしても、坂神さん個人としても。
Club Turtleも色々やることもあるので「まだまだ動いていきます、みなさんお楽しみに」っていうのは言っておきます。僕個人としても明確なビジネスとかじゃなくて”俺らが遊んでいるのを見て、お前らも楽しめよ”くらいの感じで動いていくと思うんですが、こういう風に作品を出しましたとか、例えば”Club Turtleを作ったこと”が僕の功績になるのが嫌なんですよ。みんながたまたま協力してくれたからこれだけいいものが出来ただけなので。
BOOGEY VOXXもこれだけ伸びてるけど、”最初に声かけたの俺”っていう功績にはしたくなくて、そりゃもうそういう人らが必要としてくれているのであれば応えるけど、「俺、この人らとマブやけど?」ってアピールするのもダサいじゃないですか。虎の威を借る…みたいになるのも嫌だし、だったら「この楽曲こういう風に作るのに相談のってました」とか「ディレクションしてます」とかやっていって、そういうのをいっぱい増えていったときに「ホンマにぽつぽつ名前見る人や」みたいなのになりたいなって。そういう風に色んな楽曲とかに1枚噛んでいって「坂神蟬丸が噛んでる曲ってめちゃくちゃいいな」っていうところを目指したいので、ちょっとClub Turtleを離れてやることが増えていくかなって感じですね。自分が依存したくないっていうのもありますが。
まあみなさんが単純に聞きたい”ClubTurtleの話”だと、まだまだ爆弾はあるので覚悟しておいてくださいよって感じですかね。ちゃんと言ってますからね「”ひとまず”終わりました」って(笑) なのでまだしっかりやります。
ー 僕個人としても、これから先も何かがあるというのはうれしく思うのですが、今までのスピード感のせいでいつ来るのかわからなくて身構えられないっていうのが…。
それはね、あのスピード感でやっているからこそ自分たちもわからないっていう。「今こういう草案はあるけど、ホンマに形になるのか?」って不安に思っていたものが、明日形になるっていう場所なのでClub Turtleは。そういうものがいっぱいありますよっていうことだけは言っておきます。基本的には”エンタメ”っていうことをちゃんとやるっていう。
ー 客観的に見ていて、”面白いことを全力でやる”というイメージがあります。
そういうこと!曲に限らず配信もそう!面白かったらだいたいなんでもやる。
・「ああ、いい曲やな。こういう色んな色味の曲を作ってる人たちは普段何してるんやろう」って思ったら、今後配信が増えていくと思うのでそういったものも見ていってくれると。
ー 改めてClub Turtleについてと、あとは”この人ら見てたら今後おもろいかもよ”っていう方がいたりすればそれもお聞きしたいです。
話にもあがったEP2枚目が配信されているのでそれを聞いてもらえるといいかな、と。
わかりやすく僕らがどういう集団かは音楽にフォーカスされがちなので、曲を聞いて「ああ、いい曲やな。こういう色んな色味の曲を作ってる人たちは普段何してるんやろう」って思ったら、今後配信が増えていくと思うのでそういったものも見ていってくれると。
自分個人では、携わっていることはたくさんありますが、自分自身がなにも出してないのでありません!携わっているものは今後たくさん出てくるので僕のTwitterとかチェックしていてもらえればって感じです。
”こいつ見てたらおもろいぞ”っていうのであれば、目にかけているという意味ではItsuki Miyamuraと覆面忍者の”Men whu unexpected”(通称 mwue)が今後伸ばして行きたいな~って思ってます。
あとは、自分はいっこも噛んでないんですがfh(ふー)と鎌木リカの”オカルトフリーク”(通称 オカフリ)とかもいいんじゃないかな?って。
今後で言えばくさぽえ(93poetry)さんとかも1枚噛んでいるので注目しておいてもらえると。
坂神蟬丸(さかがみせみまる)
Twitter:@skgm_s3o
Club Turtle(通称:#蟹亀 )2ndEP『one's living』
各種配信サイトは「こちら」
日向キタロー
アニメとゲームと特撮とバーチャルが好きなオタク。
Twitter:@HinataHuto
取材・文:日向キタロー
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