青い恋も色移る
「付き合うには遅すぎたね」
今はもう無い、渋谷の公園通りを上がった先にあるカフェで氷が異様に大きいアイスカフェオレを飲んだ後、そのまま道なりに進んだ代々木公園でゆりなは涙を浮かべながら言った。
1年半前のこと、二人が知り合ってから3年近くが過ぎようとしてた。
ゆりなとは高校2年生の時に知り合ってから、2ヶ月に一度ぐらい夕食を共にするようになった。
僕に恋人がいない時にゆりなには恋人がいた。
ゆりなに恋人がいない時には僕に恋人がいた。
春もまだ日が落ちれば、日中は影に潜んでいた冬の吐息が帰って来る。
「彼氏と別れたの」
缶チューハイの缶を少し強めに押し、その手元を眺めながら言った。
カフェを出てから口数が減っていた理由がわかった。
「そっか」
「うん」
互いに抱きしめることも肩を寄せることも触れることも叶わない関係は
二人の間に言葉しか残してくれなかった。
「付き合うには遅すぎたね」
「仲良くなりすぎたよ」
少し手を握れば伝わるようなこともひとつひとつ音に乗せて届けなければ伝わらない。その一音一音が二人に分かり切ってることを何度も自覚させようとする。
「タイミングが悪いんだよね」
「二人とも相手がいなければね」
人に不幸をもたらしてまで叶えるほど青い恋ではなくなっていたのはいつからだろう。
不幸なのは二人の間だけでいい。