朝露
まだ白くモヤがかかった公園で
「さすがに薄手のコート1枚だけじゃもう寒いわね」
と言いながら僕のコートのポケットの中に手を忍ばせる。
僕が手を握ることはしない
彼女も僕の手を握ることはない
一週間後にはイチョウも散り足元が幾分柔らかくなった。
彼女はいつも僕のポケットに手を忍ばせる。
皮膚が触れるか触れないのかの距離で、彼女の体温だけが伝わって来る。
僕は最初から知っていた、彼女は僕の体温を感じたいわけではない
僕に触れたいわけでもない。
ただ誰かの存在を感じたいだけなのだ。
きっと君は白いモヤが晴れれば
「この季節に君は暑すぎるわ」と言って何処かに行ってしまう。