電脳虚構#17| 人生テトリス
この世の中、みんなそれぞれテトリスのブロックになり、自分の場所へとはまっていく。
向きを変え、スキマをさがし、上手に積み上がったブロックの中に溶け込んでいく。
時にスキマが生まれても、すぐ次のブロックがフォローして隙間を埋めてくれる。そういうチームワーク、助け合いがあるのが素晴らしきこの世界だ。
僕は・・でも僕は。
いつも自分の番が回ってきても、スキマなんかない。
どんなに向きを変えても、自分のというブロックがピタっとハマる場所が見つけられない。
タイムアップがきて、どうにかブロックを落としても、必ずスキマが生まれてしまう。
いつも周りのブロックから「なにやてんだよ・・コイツ」という無言の圧を受けている。
たえがたい違和感と疎外感。
僕はこの世界にスキマを作ってしまうお邪魔ブロッグだ。
「もうこんな世界にはいたくない。
自分の必要とされる世界はきっとここじゃないんだ!」
そうやって別の世界に思いを馳せることで、逃避するようになった。
自分というブロックの存在の意味。
それを誰か教えてほしいとただ願った。
「人生のテトリス」から逃げだした。
そして誰とも、どのブロックとも交わらない世界を求め、僕は旅立った。
何日も歩いた先、荒野の果て。
さびれた街の入口で、とてもきれいなテトリス棒のお姉さんに会った。
「珍しいわね、こんなところに。
あんたもどこからか逃げてきたクチかい?
あたしは見てのとおり”テトリス棒”
”切り札”みたいに社会のパズルに利用される、そんな日々に嫌気がさしたのさ」
長いパイプを吹かして、気だるそうに語り始めた。
「あんた。さしずめ”自分探し”の旅ってとこだね。
自分っていう存在がまるで見えてないようだ。
この街にはそーいう流れ者ばかりさ。」
一瞬で全てを見透かされたようだった。
僕はため込んでいた、心の中のものを全て吐き出してしまった。
「なるほどね・・・。
どこのブロックにもはまらないってそりゃそーだ。
あんた、自分が何者なのか・・まったく見えてないんだね。
鏡で自分って言う存在をよーーく見たことがあるのかい?
きっとないだろう。ますはそれからだ。
あんたがいるべき世界。
必要とされる世界はこんなとこじゃないんだよ。
もっと世界は広いんだ。
それ知らないことには始まらないのさ。」
僕のいるべき世界・・・もっと広い世界。
新しい世界ってどんなとこなんだろう、とワクワクした。
「そうだ、あんたにこのバスのチケットをやるよ。
この街の外れから、出てるバスさ。
そこで自分という者をもう一度、試してみるんだね。」
こんな今までどこにもはまらない、スキマだらけのおちこぼれのブロックの僕。新しい世界でもやっていけるのだろうか。
期待と不安を抱え、バスに乗り込んだ。
そのとき、お姉さんから言われた言葉を思い出した。
「鏡で自分って言う存在をよーーく見たことがあるのかい?」
僕はバスの窓に映る自分とまっすぐ向き合って、存在をゆっくり確かめた。
今まで劣等感ばかりで、ずっと目をそむけていた自分自身。
こんなにじっくり向き合ったのは、生まれて初めてだった。
すると答えはすぐ目の前にあった。
僕は自分のことが見えてなかったんだ。
最初から「スキマだらけのおちこぼれのブロック」なんかじゃなかったんだ。
人生のテトリス。もうこの世界からはおさらばだ。
チケットを握りしめ、バスの行先を確かめた。
この世界ならきっとやっていける!そう確信した。
そこには「ぷよぷよ 行き」と書いてあった。
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