小説「Desert Drive」番外編 - 永遠の家賃 -
このお話は小説「Desert Drive - デザートドライブ -」の2章-3章間の番外編です。
「Desert Drive - デザートドライブ -」本編は下記にて無料で読むことが出来ます。
結局。
皇志真は羽鳥歩という金持ちのお嬢様と同居することになってしまった。
互いに利害が一致しているとはいえ、果たしてこの選択でよかったのかは未だに考えるところだ。
もっと利のある方法はなかっただろうか。そしてくだした決断が、志真のこれからの人生を更にややこしくしてしまうことにはならないだろうか。
どれだけ考えてもいい策や案は思いつかないが、とりあえず、先のことを考えずにはいられない。
なぜかというと――
「あのさ羽鳥。うち、お前を泊める部屋がないんだけど」
純粋にまず、そこが問題なのだから。
志真の発言に羽鳥はパチパチと数回瞬きをして、さも当然かのように言う。
「だから、客間でいいって言ってるでしょ。あんたにはあんたの部屋があるわけだし」
簡単に言ってくれるではないか。
なので現実をわからせる必要がある。
「ないんだよ。……そうか。お前にはそこから説明しなきゃいけないのか」
ユウキが落車して皇家に突っ込んできたとき、羽鳥はいない。
ジェットコースターのように一瞬で過ぎてしまった嘉の一件について、どうも登場人物を雑に覚えてしまっていたようだ。
ならば、見てもらった方が早い。現場は今も片付いていないのだから、すぐに説明は出来る。
羽鳥を二階の廊下へ案内すると、羽鳥はあたりを軽く見渡したのち、眉間にしわを寄せた。
「相変わらず汚い廊下ね。いい加減片づけて。怪我しそうだわ」
上からだらりとたれているブルーシートをうざったそうに避けつつ、羽鳥は言う。
雨対策としてブルーシートをかけたはいいが、それ以上の家の修理は未だできていなかった。
家の瓦礫が転がっているのも、砂や埃で廊下が汚れているのも、羽鳥が前に来たときと全く変わっていない。
志真が自分以外の物事全てを後回しにした結果ではあるのだが、羽鳥に改めて指摘されれば、確かにいい加減片づけるべきだ、とは、思う。
「前に僕の家に来たときは何にも思ってなかったんだろうけどさ。よく見て。この汚い廊下に落ちてる――”汚い瓦礫”が、どこから来ているのか」
ここから先は
¥ 100
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは、クリエイターとしての活動費に使わせていただきます!