昭和の宴会を再現できる外国人
夫は日本在住イギリス人である。
石をなげれば外国人にあたるというくらい、この辺りでは在住外国人がうじゃうじゃいる。そして西洋的なものへあこがれる日本人たちは、そっちの人たち(西洋文化)に合わせるし、そもそも昭和の習慣的なものも知らないので、その外国人が日本の文化の洗礼を浴びる機会も少なくなったと推測できる。
夫は1991年に日本へやってきた。政府機関のご招待だが、都会?田舎?の二択を迫られ田舎を選んだ人である。そして配属されたのは東北エリアの村。住所には字がつく場所である。そのあたり唯一の外国人で、当時は村のご老人たちや子供たちから宇宙人扱いを受けるレベルだった。
村人たちは宇宙人に親切で、たくさんのおもてなしを受けたと聞く。又、夫も日本の文化的なものはあまり知らない状態できたので、そこで習ったことは今でも身についていることもある。
その一つが宴会における行動だ。平成最初の頃とはいえ、おそらく村での宴会だから昭和感満載だったと思われる。今も夫の乾杯の音頭は、最初の能書きはぼそぼそとした感じて、最後の乾杯っ!というところだけ大きな声でやたら力が入っている。昭和の宴会(特に仕事関係の)ってこんな感じだったよな、となつかしむのである。
又人のグラスに注ぐときは、
「まあまあまあまあ~」
と言いながらする。これもあったよね。”とりあえずビール”も知っている。今やったらパワハラ、セクハラだよ、という行為も知っている。
夫の場合は確信犯で、知っていて昭和系の人にしかやらない。今の子にやったところでウケないのもわかっている。
宴会から学んだこともたくさんあったということだし、酒を酌み交わすという重要性も、西洋のイエーイとは違った、何か真面目さみたいなものを感じ取ったに違いない。
その後、母国でも日本でも会社員の世界に飛び込み、日本での会社員生活ももはや15年を超え、この数十年の世界的な急激な生活様式の変化の中で、現在の”日本的”なものの中で生きている。
面倒くさいのは、外で飲もうとすると、飲み物がきたのでそのまま飲もうとすると、あっ、乾杯は?といわれ、小さく乾杯をさせられることが多々あることだ。”うぇーイ”も良いけれど、あえての”乾杯”もいいじゃない。
このエリアに特に多いのだと思われるのだが、日本の文化が好きで来たというよりは、母国的なものがウケるとわかっていて、このあたりで飲食店や語学教師をやる外国人が多い。しかもいかにも地元になじんでいる風だけれど、そもそもその日本の人たちもよそのエリアから西洋的かっちょ良さを求めてきた人たちなので、それを地元というのはちょっと違和感がある。
だからこそ、ディープな日本を知っている夫はすごいと思う。
急を要する決議を今日からではなく、数日後という例を昨今たくさん見ていて、なんで今日からじゃないんだろう、という私に、
「日本だよ。たくさんの人がたくさんのハンコを押さなければならないんだからしょうがないよ。」
と稟議書的なところから突いてくるのだから。
※しばらく放置していたら応募期間が過ぎていた・・・