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【後編】恋した学校での1ヶ月。私の2つの影の話。

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それから、金曜日、土曜日、日曜日、月曜日と、気にしないようにしながら過ごしていた日々は、楽しい気持ちもありながら、心のどこかで悲しんでいる自分がいて、ふと3日間のたった1分のことを思い出しただけで涙が出そうになる日々だった。

新しい影

ITブートキャンプ最終日の火曜日。
それぞれスカラーシップパートナー(以下、SP)の4人で一つのグループを作り、「課題決定」「それを解決するアイデアの発案」「プロトタイプ作り」「プレゼン資料作成」「プレゼン」これらをたったの4時間で行った。

お昼ご飯中も、食べながらプロトタイプ作りをしたり、移動は胃もたれしそうになりながら全力で走って準備をした。
けれど、やっぱり時間が足りなくて、満足のいくプレゼンを作ることができなかったから、他のグループのプレゼンを見たり、評価を聞くたびに悔しい気持ちが残った。会議の進行と同様に、タイムマネジメントの重要さを改めて感じた。

そんな怒涛の1日の夜ご飯は、SPの担当の先生(以下、ソルティー)に誘われて、チームメンバーで食べることになった。

「再来週あたりに、ソフトバンクの方々とミーティングをしようと思っている。1人3分で自己紹介と起こしたいコト・つくりたいモノ・お手伝いして欲しいコトをプレゼンしてほしい。それで、入学式でプレゼンしたことなんだっけ?」
私以外の3人が順々に答えていって、ソルティーから少しずつアドバイスをもらっていた。

「最後、ひな子は?」
ついに私が伝える順番が回ってきた。

自分の意見を大企業の方々に伝えられるなんて嬉しくて、でも大きい不安があった。
「自分のワクワクを伝えられるモノを作って、世界にワクワクを届けたいです。だけど、これは入学式の時に急ピッチで決めたことで、本当にやりたいことはこれから5年間考えていきたいと思っています。
正直、やりたいことは5年間で見つけていこうと思っていたから、まさかこんな早い段階で自分の意見を伝えなければならないことに、大きな不安を抱いていた。

そしたらソルティーは、はっきりと言った。
「ひなこが一番ふわふわしている。入学式でも一番ふわふわしていた。」
わかっていたけれど、グサッとくる、悔しくてたまらない一言だった。

入試で提出したつくりたいモノは?と聞かれたけれど、あれはあの時作りたかったモノで、今それを100%ワクワクして伝えられるかと聞かれると、答えはノーだ。自分の気持ちに嘘をついてプレゼンをしたくないという頑固な私の思いがあったから、これをプレゼンするつもりは全くなかった。

しばらくソルティーと話したけれど、このまま話していても前に進めなそうだったから、「金曜日までにアイデアを出して伝えます」と伝えてその日の話し合いは終わった。

ソルティーに言われた一言が、すごくグサッときていて、悔しくてたまらなかった。”こうなったら絶対やってやる”と思って考えたけれど、あんまり良い案やこれから深く考えていった時に納得のいきそうな案は浮かばなくて、自分の無力さ・弱さを突きつけられた感じがして落ち込んだ。

進行のことでもまだ完全には復活していなかったのに、また新しく試練がやってきて、心が悲鳴を上げていた。その時はすごく、すごく、焦りや不安にほとんど潰されかけていたように思う。自分1人じゃ抱えきれなくなって、図書室で一緒にいたSPメンバーの1人である友達を誘って散歩に出かけた。

その子には、今悩んでいることをすべて打ち明けた。
進行でうまくいかなかったこと。それをまだ引きずっていること。SPのメンバーの中で一番遅れをとっていること。みんなの視線が怖いこと。どうしようもないくらいに落ち込んでいること。
他にもたくさん、悩んでいた全てのことを話した。誰かに今の自分の悩みを全て打ち明けるのは、その時が初めてだったから、吐き出せただけでも、少し雲が晴れたような気がした。

「他の3人は、入試の時に出した作りたいモノをプレゼンしてる。あれは1ヶ月かけて考えたモノ。でもひな子はまた0から考えてる。1ヶ月のクオリティのモノとそりゃ違うよ。だから焦らなくて大丈夫。」
この時、確かに焦っている自分がいたことに、その子の言葉で気づいた。みんなは作りたいモノがはっきりしているのに、自分だけはっきりしていなくて、ふわふわしていたから、言葉には表せないくらいずっと焦っていたのだ。自分のペースで、自分が持っていける最大限のところを目指して最後まで頑張ろうと思えた。

その子は、私がまだ悩んでいたことも、みんなで集まった時に泣きそうになっていたことも、入学式の頃の私と変化していることも、全て気付いてくれていた。私の気持ちを理解しながら、言って欲しい言葉も、自分の意見も伝えてくれたから、すごく気持ちが救われた。
散歩中、ずっと励ましてくれたり、一緒にアイデアを考えてくれて、すごく嬉しかったし、その子のおかげで前を向くことができた。

散歩から帰ってきて、一つアイデアが浮かんで、スケッチブックを取り出して、一心不乱に手を動かした。
ターゲットを私のように「やりたいことがみつからない人」に設定したからこそ、自分が今一番欲しいものを考えながら、納得できるモノを考えることが出来た。

約束の金曜日。ソルティーとSPメンバーでご飯を食べながら、作りたいモノのプレゼンをした。
私が一番大切にしている「ワクワク」という感情を100%持ってプレゼンをすることができて、すごく安心したし、少しだけ復活したように思う。

それから、一度だけそのアイデアに自信がなくなってしまって、また1からになってしまいそうになったこともあったけれど、それはアイデアにまだフワフワしている部分があったことが原因だったから、詰め直してその時の自分が納得いくアイデアに出来た。

でも、もちろんそれでも他のSPメンバーの、1ヶ月間で考え尽くされたアイデアまでは届かないのはわかっていた。(今思えば、まだ詰められるところがいくつもあった。)勝ち負けじゃないのはわかっていたけれど、全て負けっぱなしはやっぱり悔しい気持ちがあったから、「アイデアで勝てないならプレゼンで勝とう。」と考えて、プレゼン本番の深夜2時まで試行錯誤しながらスライド作りや練習をした。

当日も、暇さえあればいろんな人たちに声をかけてプレゼンを聞いてもらってフィードバックをもらった。放課後から本番までの1時間で修正しながら、最後まで走り切ることができた。

結果、納得のいくプレゼンをすることができて、努力が報われた気がして、すごく嬉しかった。
この時に、プレゼンするってこんなに楽しいんだって、久しぶりに感じて、もっと極めたいと思うようになった。それが今では、「トッププレゼンターになる!」という夢にまで大きくなった。

きっと、このプレゼンは、私が久しぶりに心からワクワクしたことだったのだ。だから、このワクワクと、この成功体験があったから、自分の自信に大きくつながって、復活できたように思う。

二つの影と向き合い続けた1ヶ月は、ワクワクよりも辛い気持ちが大きかった。
正直、この影は、今でも会議室にみんなで集まることがあれば、泣きそうになったり、震えてしまうくらいのトラウマだ。時々思い出して、またその深い闇に飲まれそうになる。
でも、私には、最高の仲間がいる。私の影を気にかけてくれて、力を貸してくれたたくさんの仲間と、スタッフの皆さんがいる。

だから私は、闇と諦めずに向き合って、少しだけ成長して、ワクワクいっぱいの今を生きられるのだ。

一番最初に挑戦をして、失敗をして、深い、深い闇に飲まれた私だから、誰かの闇に寄り添うこともできるし、またもう一度違うことで失敗しても、向き合う方法を知っているから、向き合い続けることができる。

神山まるごと高専に入ったことは、間違いじゃなかった。
この学校でしか学べないことが、ここにはある。
「この学校に来てよかった。」と、まだ1ヶ月しか過ごしていないけれど、心の底から感じるのだ。

神山での生活は、1日1日が濃くて、もう半年過ごしたような濃度だ。でも、まだ1ヶ月しか経っていない。これからあと4年と11ヶ月の最高の日々が待っている。つくっていける。
毎日を無駄にしないように、時間と、大好きで大切な仲間を大切にしながら、これからもワクワクして生きていきたい。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ずっと、もがきながら、怖さに揉まれながら、書いていたnoteが、やっと完成して、世界に届けることができることがとても嬉しいです。

本当は、もっとたくさんの仲間の言葉や暖かさに救われました。このnoteにそれを綴り切ることができないのがすごく悔しいけれど、ひとまず、世界に伝えたいことは、綴ることができたと思っています。

2023.5.13 ひな子


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