私はなかなか言葉を発さない。
私はなかなか言葉を発さない。
一度これだと決めたら長々と、朗朗と語り始めるのだが、自分がそれがぴったりの言葉だと確信を持てるまでは、なかなか口にして人に伝えない。
そもそも私にとってものすごく言葉は大切だ。
なぜなら私にとっての現実世界は、ぼやぼやとして形のないものだからだ。特に人との会話がそうだ。現実世界で人と実際に話している最中というのは、音過敏や光過敏の影響を受けたりして、よく意味が取れない。相手の言葉がよく聞こえていなかったり、聞こえていてもよく意味が分からなかったりする。光にも過敏だから、それぞれの色が溶けだしていって、相手の輪郭がぼやけていってしまう。現実での人との会話は、意味情報が不足していて、まだ実態がなくて、不完全な状態だ。後から自分が体験したことを追体験的に何度も振り返って、相手が言ったことをより多くの言葉で補えば、相手との会話は完全なものになってくる。
自分の中でもまだ不完全な現実世界を、他者にきやすく言葉にできない。
だから言葉を作りこんでいく。細部まで現実を作りこんでいたら、言葉を実際に発するのが遅くなってしまう。いつも置いてけぼりになってしまう。自分にとっての完璧な現実を作りこんでいたら、結局現実社会で他者と交流することが出来ないのだ。
自分の言葉、自分の現実は、自分自身の手で守っていきたい。
しかしこれからは、自分が実際に言葉を発して、現実社会で他者と関わる速度を、少しずつ上げていきたいと思う。
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