鑑賞記001 ob個展「あわいにゆれる光たち」 KaikaiKiki Gallery
展評、というほど大したものではないのだが、アートの展覧会に行った感想を書くのは久しぶりだ。諸事情あってしばらく観ていなかったがまた観られるものは観ていきたいと思う。
前回obの個展を観たのはいつだったか。どうやら「乙女の祈り」っぽいのだが以前の感想を遡る前に今回の感想を(今この瞬間に持っている鑑賞体験の純粋性を大事にしたい)。
ポイントはグラデーションの具合とキャラクター、モチーフの密度と輪郭、などだろうか。グラデーションはobにとって基礎的な技術として絵を支える力(印象としての「良さ」)を生み出している。濃淡、色彩も含めた微妙な変化、メリハリのついた変化。良い感触を得た変化のヴァリエーションを使いこなし、空、土、水、髪、肌、瞳、緑、などに強度を纏わせる。
モチーフの密度。空間としては割合が多い割にモチーフの少ない絵もあるが、空、水、地面だけでもグラデーションで支え切れるマチエール。草や花などが増え、道や川、水面に反射する景色などの存在は、どちらかというと画面構成以上に意味論的な必然性に感じる。
輪郭。途切れ途切れになるのが「惜しい!」と思わせられるが、印象として(階調同様)「良い」ラインが全体的にある(「良さ」を途切れさせず滑らかに繋げられたら、というのは過剰な要求だろうか?)。
キャラクター。正面向きが多いが、横顔、斜め向きもある。鼻そのものを描かずに陰影のラインで凹凸を表すやり方は僕には新鮮でよかった。横顔はどう見ても頭が大きいがそれで良い(前頭部、頭頂部から後頭部にかけてのラインが良く、頭部全体が円形に近くなっている)。斜め向きも、うーん、悪くはない、というところ。複数人や猫を抱いたモチーフは、関係性、集団の営みが感じられる(これも意味的な狙いか)。
どの作品も、タイトル、構図、色使いなど、全体として統一的な意図を強く感じるものに仕上がっていて、とても好感が持てる(以前にはそこまでの印象はなかった{と思う}のだが)。
「作家からのメッセージ」には「異質なものの狭間を乗り越え、どこにも属さず何にでも変化できる」という部分がある。はたして乗り越えた向こう、変化した先は、あなたに好ましいものなのだろうか……、?
天井、床、左右、正面の5面を使った制作中の絵画「こんどうまれてくるときは」、インスタレーション「追憶」(女の子が可愛い)なども堪能したい。
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