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【集中講義Ⅴ】ミステリ的観点から見るうみねこ(碑文の謎編)
はじめに
「うみねこのなく頃に」を考察していきます。
今回の議題は、うみねこをミステリ的観点から見る事です。
まず、うみねこはミステリ(推理モノ)ではありません。
しかし作中におけるゲーム盤での謎……少なくともEP1だけを切り取ってみれば、純粋なミステリとして解釈する事は十分に可能です。
というか、EP4くらいまでは普通にミステリなので、だからこそEP8にて最終的に明確な解答が提示されなかった事について物議を醸したのでしょう。
また、その解答についてもミステリ的観点から見ると理不尽という事で、世論曰く「うみねこの謎はアンフェアである」とも言われてきました。
……
果たして本当にそうなのでしょうか。
という事で、今回はうみねこに登場する謎を一つ一つ吟味し、ミステリ的観点から見て本当にアンフェアであるか否かというのを考察していきたいと思います。
その中でも今回は最難関と言われている魔女の碑文についての考察をします。
当然ですがえげつないくらいのネタバレ記事になるので、うみねこ未プレイヤーの方は激しく閲覧注意です。
・碑文の謎
全EP共通で存在する、魔女の碑文の謎です。
出題
懐かしき、故郷を貫く鮎の川。
黄金郷を目指す者よ、これを下りて鍵を探せ。
川を下ればやがて里あり。
その里にて二人が口にし岸を探れ。
そこに黄金郷への鍵が眠る。
鍵を手にせし者は、以下に従いて黄金郷へ旅立つべし。
第一の晩に、鍵の選びし六人を生贄に捧げよ。
第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け。
第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ。
第四の晩に、頭を抉りて殺せ。
第五の晩に、胸を抉りて殺せ。
第六の晩に、腹を抉りて殺せ。
第七の晩に、膝を抉りて殺せ。
第八の晩に、足を抉りて殺せ。
第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない。
第十の晩に、旅は終わり、黄金の卿に至るだろう。
魔女は賢者を讃え、四つの宝を授けるだろう。
一つは、黄金郷の全ての黄金。
一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。
一つは、失った愛すらも蘇らせる。
一つは、魔女を永遠の眠りにつかせよう。
安らかに眠れ、我が最愛の魔女ベアトリーチェ。
解答
①故郷→金蔵の故郷は台湾。
②鮎の川→川は物流、鉄道の路線を表す。鮎の川(淡水)は淡水線(路線の名前)。
③やがて里あり→淡水線にある石碑駅(旧名は唭里岸駅)
④二人が口にし岸を探れ→石碑駅のある地名「キリガン」は漢字で書くと「唭哩岸」(口が二つ、岸の字あり)
⑤黄金郷への鍵→唭哩岸の英語読み「Qilian」
⑥第十の晩に、旅は終わり、黄金の卿に至るだろう→黄金の「卿」を「京」と読み替え、「第十」の晩という記述から1京の1/10である千兆を連想、「千兆」の英語は「Quadrillion」、「Quadrillion」が記されているのは六軒島の中では礼拝堂のアーチの文字のみ。
⑦第一の晩に、鍵の選びし六人を生贄に捧げよ→アーチの文字「Quadrillion」から「Qilian」を抜いて「udrlo」にする。
⑧第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け→「udrlo」の中で隣り合ったdとrを離す。
⑨第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ→「udrlo」を誉れ高き我が名(lord u(右代宮))に並び替える。
⑩第四の晩~第八の晩→残った五文字の該当する位置(例:腹なら真ん中あたり)を抉り回転させる
⑪第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない→⑩で回転させた文字は外れるので、全て外す
⑫ライオンの像が動き、その視線の先に隠し階段が現れる
考察
……
いや、難しいわ。
これはさすがに解けません。盤上世界で戦人が一切碑文の謎に取り組もうとしなかったのも頷けます。
まず①に辿り着くところから難しいです。「故郷」が台湾である事が分からないと、おそらく淡水線に辿り着くのも不可能でしょう。っていうか金蔵は日本人なんですから、普通日本だと思うじゃないですか。小田原ではないとは思ってましたけど、海外だとは夢にも思いませんでした。
ただ、一応それを匂わせる描写は作中であった(金蔵が好むビンロウは台湾ではメジャーな嗜好品である)ようなので、唐突な設定というわけではなく、推理不可能ではないという意味ではミステリとしてアンフェアというわけではありません。ビンロウから台湾に辿り着けるかどうかはともかくとして。
また、⑥も相当に理不尽だと思います。
"「卿」を「京」と読み替える"、"1京の1/10である千兆を連想する"という辺りが実質的にノーヒントであるため、そういう意味ではフェアとは言えないかもしれません。ただし「Qilian」まで辿り着ければ、そのままダイレクトに「Quadrillion」へ行きつく事は比較的容易でしょう。礼拝堂の文字が英語で記されているのは作中で語られていますし、何より「Quadrillion」は11文字なのでかなり直接的です。そういう辿り方が可能ならば、アンフェアとは言い切れないかもしれませんね。
まとめ
一応高難易度かつある程度の理不尽要素を内包しながらも推理可能という事で、とりあえず碑文の謎に関してはアンフェアとは言えないという結論にさせていただきたいと思います。
解けるかと言われると、解けませんでしたけど。
とはいえ作中の人物は「金蔵が台湾を故郷としているのを知っている」「礼拝堂の文字を見慣れている」という点において、上に二つ挙げた難解な点を比較的突破しやすいという意味では、やはりプレイヤーへの謎というよりも作中人物への謎と捉えた方がよいかもしれませんね。