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感想「咲 -saki- 21巻」

先月22日、「咲」の最新刊が発売されました。シリーズ一気に7冊も。

同時刊行は、

・「咲 阿知賀編」7巻

・「シノハユ」13巻

・「怜 toki」7巻

・「染谷まこの雀荘メシ」1巻

・「咲 re」1巻

・「咲 -saki- 画集」

これはさすがに圧巻ですね。基本的に本編は一年に一回しか刊行されませんが、その一回でこれだけ大量に出して下さるなら、お釣りがくるというものです。

とりあえず本編について語ります。

・漫画紹介

紹介記事をリンクします。

以下、最新刊のネタバレ注意!

・ラス親続行

決勝先鋒戦、照の異常性が頭をもたげてきました。

元々照の活躍が最初に描かれたのは、阿知賀編の準決勝からでした。あの時は実力者である花田先輩に加えて未来視を行う怜、ドラ独占の玄を相手にほとんどの局を和了し、花田先輩の採算度外視の献身、怜の生命賭けの能力行使、玄ご法度のドラ切りまでやってようやく二度の親を流し、それでもトータル+96000点というバケモノっぷりを見せた照。

しかし決勝卓では引き続きドラ使用不可に加えて調整に調整を重ねた完全体の優希に、元全国三位の辻垣内さんという面子により、場は荒らされまくります。特に天和二回という大暴挙は、あからさまに異常事態である事が表されています。絶対こんな卓に入りたくないですね……

そんな決勝卓ですが、再び照が悪夢を展開します。

まずは西単騎の初手和了。ポンが入ったとはいえ、現象で言えばほとんど人和みたいなものです。これで8000点なんて、泣きたくなりますね。作中でも優希が「事故みたいなもの」と言ってますし。まあ天和二回の方がよほど事故みたいなものですが。

次は多分、五巡目での七対子ですね。単純に早くて困ります。

そしてラス親続行からの、四暗刻単騎を崩しての嶺上開花。

……

いや、これはヤバいですね。ネリーといい、主人公のお株を奪う美麗な和了、素敵です。こんなんで責任払いさせられる優希が可哀想でなりません。っていうか咲との闘牌がいつもこんなんだと思うと、清澄勢が可哀想でなりません。ぶっちゃけ一人だけツモとロンのルールが違うみたいなもんですからね、これ。

そして和了のために、四暗刻単騎を崩すのもなかなか技術点高いです。まして辻垣内さんがミラーで四暗刻単騎を張っていた事を考えると、もう本当にお手上げです。辻垣内さんも嫌になりますよ、こんなん。

・5本場

お次は玄の視点。阿知賀編の頃からそうでしたが、玄はドラ爆で強いのに一人称視点だとひたすら弱気ですね。もちろん状況が状況という事もあるでしょうが、優希や辻垣内さんが勇猛果敢なだけに、逃げの姿勢が強く描写されている印象です。

先程の初手振り込みに委縮して安牌切りを繰り返した挙句、安牌が切れたところで振り込む辺り、典型的などつぼちゃんです。まあドラ抱えが強すぎる能力ですし、そのくらいが丁度良いのかもしれませんが。

結局照は、玄の三萬で和了。東・發・混一色一盃口で跳満……すこやんの言う通り六萬なら一盃口が付かないから満貫止まり、連続和了の法則に反してしまうわけですね。ちなみに四萬と五萬なら三暗刻がついてやっぱり跳満になるから、最適解は六萬しか無かったようです。こんなん分かるか。

・6本場

……

かっこよ!

やっぱ照のトルネードツモは最高ですね。見開きによく映えます。

そのツモの様子を、咲が驚いた様子で見ていたのが気になります。単に勢いにびっくりしただけならそれでいいのですが……

ここでの照の和了は、立直・一発・ツモ・タンヤオ・平和・三色で倍満ですね。辻垣内さんの言う通り、そろそろ限界が来てます。ドラ無しで三倍満となると、流石に相当な無理ですからね。っていうかこの時点でも相当な無理ですが。

・7本場

まずは部長と咲を交えた作戦会議の様子。もはや照対策はわけわかんない領域に突入してますね。ルールの穴を見つけて何とか足掻いてみようという感じ、すごくデジタル的なゲームっぽいです。全部ツモなら阻止できないけど、ロンが混ざってるなら(過去のデータ上)阻止出来るという、何の保証もない、現象のみを見ただけの攻略法が鍵となるほど切羽詰まった状況と考えると、やっぱとんでもないですね。

まずは優希、なんとか照のツモを減らそうと果敢にポン。そして辻垣内さんの、元相棒ゆえに理解している照の性質を考えた立ち回り、極めつけは次の局が役満以外ありえないという状況だからこそ出来た、玄の二度目のドラ捨て。

三人が同時に照の親を蹴ろうと足掻いた結果の、辻垣内さんの和了。照以外の地力勝負となったら、ある意味必然ですね。

どうでもいいですが、辻垣内さんの手牌は汚いですね。準決勝の時からですが、彼女は全然理牌をしません。でもそういうところがキャラ毎に一貫しているこの漫画、本当に登場人物の個性というものを重要視していて大好きです。

混一色・一気通貫・一盃口・ツモ・平和で倍満ですね。直前まで自分での和了を諦めていたとは思えない高得点、最後まで素敵でした。

結果的に照の一人浮きとはいえ、思いのほか点が平らになったものです。しかし天和二回和了して最下位とは、主人公校苦しい展開です。

・幕間

次鋒戦前に、各々の控室の様子が描写されます。

優希と玄が泣いているのはいつもの事なのでともかくとして、臨海側がちょっと気になります。

沈んでしまった辻垣内さんに対して、去年はここまで差がついていなかったと訊く監督。確かに点差としては70000点と圧倒的ですが、それはあくまで個人戦での話でしょう。100000点持ちの団体と25000持ちの個人戦とは比べるべきではないでしょう。25000点持ちで70000点差があったらえらいことですよ。そういう話ではなく、比率の問題かもしれませんが。この辺はちょっと気になりますが、個人戦二位の荒川さんの闘牌傾向がちょっと分かりそうな気がします。

・負傷

……

…………

……………………

えっ?

いや、順番に見て生きましょう。

まずは龍門淵の部屋から。相変わらずやべー恰好している国広くんはこの際放っておくとして、久しぶりのハギヨシの登場ですね。この人の無駄過ぎる瞬間移動能力、大好きです。

彼によると和のエトペンが壊れかけているようです。よくテレビの映像で気がついたとか、超人の彼に突っ込んではいけないのでしょうね。

変わって清澄控室。ハギヨシで気が付いたレベルのほつれに、肉眼とはいえいちはやく気が付く部長、さすがに目ざといです。やっぱこの人、抜群に面倒見が良いですね。清澄は上下関係の概念が薄い一方で、先輩側がしっかり後輩を見ている描写がすごく多くて、なんというかすごく安心感があります。

エトペンの負傷は……まあしゃーないですね。個人的に一番ダメージを与えたのは絹江さんだと思いますが……そこは気にしても仕方が無いところ。

そしてソーイングセットを買いに行こうとする超絶方向音痴の咲と、それを止める京太郎。

……

京太郎!?

やっぱ彼がいると、控室って感じがしますね。基本的に男性キャラが登場しないこの漫画における、日常的象徴。バトル漫画における、無能力者の幼馴染みたいなポジション、好きです。いや、ある意味完全に文字通りのポジションなのですが。

で、ソーイングセットを取りに行く部長は、マスコミ野郎にぶつかって階段を落下しそうになる掃除の人を庇って……

負傷。

……

えっ?

麻雀漫画らしからぬこの展開に、戸惑いを隠せない読者がいます。

いや、でも麻雀において体調不良は思考の乱れを生み出します。鷲巣麻雀がそれを物語っています。

それ以前に、怪我は思ったより深刻なようです。卓で倒れた怜ですら翌日の5決には出場できましたが……これは当日の問題になります。補欠部員のいない清澄で部長が抜けるのは致命的ですし、何より決勝卓に上がりたかったのは部長自身。

かくして怪我を負ったまま試合に臨むわけですが……

部長のメンタルが危ういのは、優希も知るところです。部長に対して非常に強い想いを持つキャプテンもいますし、このまま誤魔化し続けるのは難しい気がします。何より部長に対して理解が深い咲が、このまま黙っているとは思えません。迷子覚悟で探しに行きそうで……若干怖いです。

……っていうか一つ気が付いたのですが。

部長はどうして鎮痛剤なんて持っていたんです?

これまでそんな描写は無かったように感じますが……でも部長の家庭環境や周囲に空元気を見せてしまう性格を考えると……もう一波乱ありそうで怖いです。

・次鋒戦

地獄のようなインフレ合戦だった先鋒戦と違い、次鋒戦は静かなスタートを切りました。

一局目は染谷先輩。事前の部長の分析で既に宥の性質を丸裸にしていた先輩は、強気にリーチ。満貫ツモ。

そして二局目も親での満貫ツモ。

準決勝の慎重な麻雀から、リーチ等での大胆な打ち回しに変わったようです。菫も宥もその変化っぷりに驚いています。

そう、元々染谷先輩は相手を見て打ち方を変える人です。準決勝では中国麻将の打ち方が理解出来ずに打ち負けてしまいましたが、データが揃った状態ならば、照を抑えて全国トップの速度を誇るエイスリンさえも封殺出来る強力な打ち手なのです。

その性質上、県大会個人戦では成績が振るいませんでしたが、相手を知れば知るほど強くなる染谷先輩にとって、部長というブレーンがバックに付いた団体戦は最高の舞台に違いないでしょう。

その仕込みはどうやら、県大会突破前からやっていたようです。龍門淵を前に決勝突破は絶望的だと言われていた状態からここまでを予想していた部長の準備の良さはとんでもないです。優希にしろ、そのくらいのスパンから調整していたのでしょう。頼もしすぎて泣けます。これは咲も懐きますわ。

さて、今巻はここまで。

総評

照といい染谷先輩といい、闘牌描写が滅茶苦茶かっこいいです。それでいて相手が能力を持っている事前提の分析麻雀、細かくて面白かったです。

続きが気になります。

21巻の満足度:94/100

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