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感想「からかい上手の高木さん 14巻」
ラブコメ漫画「からかい上手の高木さん」の最新刊が発売されました。累計870万部、スピンオフ2冊といつのまにかモンスターコンテンツと化しているこの漫画も、いよいよもって14巻を迎えました。
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よくネタが尽きないものだと感心するばかりです。
この漫画の何がすごいって、話の縦軸が全く無いというところです。
ラブコメというのはつまり恋愛模様を描いた作品であり、大なり小なりそこに「進展」や「発展」が求められるものです。
しかるにこの漫画、一切それがありません。14巻が経過した今も、メイン二人の仲は初期状態からほとんど変わっていないと言っても過言ではありません。同作者の「それでも歩は寄せてくる」は緩やかに仲が進行していっているにも拘わらず。
日常系のようなものですよね、こうなると。ワンパターンになりがちなこの類の漫画でしかし、もう14巻まで出ているわけです。引き出しの多さがとてつもないです。
さて、そんな「からかい上手の高木さん」最新刊、感想を語って行きましょう。
・漫画紹介
紹介記事をリンクします。
以下、最新巻のネタバレ注意!
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いや、ネタバレもなにもないのですが……一応。
一話完結型の漫画なので、気になった回だけピックアップします。
・寄り道①
通常の回ですね。
勝負に夢中でいろいろな事がおろそかな西片。いつものように高木さんに振り回されて面白いです。
しかし今回に関しては、一度読んで話の全体像を把握してから、改めて高木さんに注視して読むと面白いです。
西片は勝負に夢中で、階段を登り切った後にある場所の噂を知りません。
対して高木さんはその噂を知っています。しかしその噂を西片が知らない事に関しては、当初の時点ではまだ知りません。
さてそんな高木さんが西片に「寄り道しよう」なんて言われた先で着いたのがこの場所。
……高木さんの心情を推し量ると、非常に興味深いです。
高木さんは西片に対して明白に好意を抱いており、それをポーカーフェイスで意地でも表に出さないスタイルを徹底しています。そんな彼女なので作中では実に澄ました様子でしたが、彼女の動揺がコマ間から読み取れて面白いです。
けれど高木さんが本当に動揺していたのは、おそらく最初の数コマだけでしょう。いつになく饒舌な西片を見て早い段階で西片の無知を予想し、「緊張してた」と仄めかす事で西片の反応を窺う知将っぷり。西片が噂を知った上で高木さんを誘ったなら、ここで必ず動揺が走るわけですからね。にも拘らず西片はとぼけたような顔をしていたので、ここで高木さんは確信を得たのでしょう。
と、種明かしされた後でもう一度読むと思いのほか味わい深い回である事に気づけるという仕組みは、古典的ながら非常に楽しいです。
・寄り道②
雰囲気だけ大人っぽい北条さんと……
もう一人の人、誰だっけ……?
西片の友達という事は分かるのですが、いかんせん影が薄い……
正直この人(浜口くんというようです)が北条さんと仲が良いという事自体、すっかり忘れていました。西片の友達は木村くんと高尾くんが良くも悪くも濃いので、比較的整った容姿であるこの人が埋もれがちなのは、まあ致し方ないところでしょう。
しかし北条さん、可愛いですね。ポーカーフェイスの高木さんや、好意を隠そうとしない真野ちゃんと違って正しくツンデレっぽいのが新鮮です。
こっちは西片と高木さんのような関係とは違い、きちんと正統派なラブコメしているので、普通の面白さがありました。この二人はこの漫画におけるラブコメ担当なのでしょうか。主役二人とは違う正統派の味があります。
・寄り道③
真野ちゃんと中井くんの回ですね。
メイン二人を除くサブキャラの中では最も影が濃いこの二人は、公式カップルなので前2組とはまた別の趣があります。恋愛に必死で中井くんが大好きな真野ちゃんと、高木さんとは違った意味でのポーカーフェイス(マイペースとも取れますが)な中井くんは凸凹コンビといった感じで、ラブコメ的には美味しいポジションにいます。
中井くんはいつも能天気な感じで真野ちゃんを振り回しますが、肝心なところではきっちり仕事をこなす男前。絶対にあり得ない事ですが、もしもこの漫画がバトル漫画にシフトした際には、絶対に強キャラになる事間違い無しの、良いポジションのキャラだと言えましょう。
今回に至っては、初めから仕事してますからね。置き仕事ですよ、これはもう。これには真野ちゃんも大喜び。敢えて二人でいかず一人でやっていたのも、マイペースな中井くんの隠れた感情表現と思うと真野ちゃんの喜びもひとしおでしょう。
似たテーマで3組、全く異なる展開をするのは面白い試みでした。
・告白
浜口くん、へたれ。
それはそうと、今回は一話完結型が中心のこの漫画において、かなり踏み込んだ回でしたね。
いつにも増してサトリっぷりが板についている高木さんは、もはや笑いどころなのでしょうか。完全に心が読めていないとこんな言動は出来ないでしょう。西片が扱いやすいのか、高木さんが鋭いのか。
そして西片、ここに来て高木さんへの好意を自覚しつつありました。
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今更では?
直前まで「好きじゃない」とか言ってましたけど、じゃあ今まで散々赤面してきたのは一体なんだったんです? 本当に単に恥ずかしがっていただけだとすると、それはそれでまた話が変わって来ませんか?
どこまでも不器用な西片の生き方が浮き彫りになった回でした。
・相談
これは……今までにないパターンです。
・北条さん
北条さんから相談を受ける西片。何気にこの漫画において、西片が高木さん以外の女子と二人きりで絡むシーンは初だと思います。そもそも高木さん以外の女子とまともに話をする事自体が稀ですし。わずかに真野ちゃんと話した事があるくらいですか。そういう意味だと初っ端から異質な回です。
さて北条さん、どうやら浜口くんに誕生日プレゼントを渡され、そのお返しを考えているようです。
ほほう。
先程はへたれなどといって申し訳ない事をしました。舞台の裏では浜口くんなりに尽力しているようで何よりです。メイン二人より積極的にラブコメしているようで感心です。
しかし北条さん、可愛いですね(2回目)。わざわざ欲しいものをリサーチして渡そうとするとは、必要以上に献身的で素敵です。そして今回のはしゃぎっぷり、思った以上に浜口くん相手に気がある様子が見て取れて面白いです。もはやツンデレにもなっていないようなあからさまな態度に、西片すら呆れています。
もしかして、西片&高木さんペアも傍から見たらこんな感じなのでしょうか。そりゃ付き合ってるなどという噂も流れるというものです。
どうでもいいですが、北条さんは不器用ですね。西片との会話を切り出すにも初めから既に言葉足らずですし、高木さんや中井くんに比べるとポーカーフェイスも下手です。だからこそ魅力的なのですが。
さて北条さん、ここで西片に釘を刺します。誰にもこの事を言わないように、と。照れ隠しの一種ですね。
・その後
「そういえば西片、今日北条さんとしゃべってなかった?」
ヒェッ……
「そういえば」でこんな事言われたら、戦慄します。その後ぐいぐい追及してくるのも、「そういえば」のレベルではないのが見て取れて怖いです。
喋っていただけでこんな追及が来るとは、高木さんもなかなかやるものです。
そしてやっぱりサトリっぷりがすごいです。
ただこの場合、高木さんが何をどこまで把握していたかによって、意味合いがいろいろ変わって来そうです。さすがの高木さんも「プレゼント選び」という具体的な答えを、ノーヒントで手にしたとは思えません。もしかするとほとんど確信的な情報を得ていて、わざと西片に詰め寄った可能性もあるでしょう。
しかし思いのほか口が重い西片につい意地悪を……と想像すると面白いです。
もっともこの部分は物語にはあまり関係の無いところなので、掘り下げられる事は無いでしょうが。
高木さんの嫉妬心が見られる、珍しい回でした。
総評
こうしてみると、結構パターンがあるものです。手を変え品を変え、山本先生の引き出しがどんどん開放されていっているという事でしょう。その手腕に脱帽します。
14巻の満足度:80/100